有言実行
「宮野、あんま気にしなくていいから」
テスト当日の朝、ホームで宮野に会い、そのまま一緒に登校している。
自分たちが言い出したものの、関係のない宮野を巻き込んでしまったことを申し訳なく思う。
「心配すんな。俺が絶対一位だから」
あまりにもはっきりした物言いに、心配した自分が恥ずかしいというか、自信ありすぎてウザいというか、なんだか口をムッと膨らませたくなった。
宮野がかっこいいのは知ってる。
頼りになるのも、有言実行するのも、全部知ってるし疑っていない。ただ、他人に持ってもらうにはいささか重すぎるものだったようにも感じて。宮野に精神的な負担をかけてるんじゃないか、これもあの手紙を書いて来るような子達と同じことなんじゃないかという不安に駆られる。
「じゃあ間宮が二位な」
「それは無理」
一応、宮野に全任せというのも悪いので、いつも以上に勉強した。数学はいつも宮野に頼っていたけれど、今回はそういうわけにはいかないので、陽葵を頼った。陽葵も数学は得意でないらしく、陽葵の伝手で上森に教えてもらうことになった。上森は理系らしく、数学は得意だった。宮島と陽葵と上森との四人で何回か勉強会をした。
驚いたのは、陽葵が自ら上森を頼ったことだった。本人から上森について聞いたことはほとんどないが、勉強会の様子を見るに、普通に仲のいい友達だった。
「でも、今までで一番頑張ったから……いい結果残せるようにする」
張り切った羽唯を見て、宮野はそっと羽唯の頭に手を重ねた。
「じゃあ俺が一位だったらなんかご褒美頂戴?俺も間宮が今までの最高順位だったらなんでもしてあげるから」
それは、宮野自らの提案だったが、羽唯はそれに物足りなさを感じる。
「私が宮野にあげれるものなんかないよ。私は宮野にもらってばっかだから」
それに、羽唯が自身の中で最高順位だったとしても、宮野に何かをもらうことはできない。すでに彼には図々しくお願いをしているわけだし。
「だから、それは俺が決める。俺が欲しいって言ってるんだからそれは間宮があげれるものなんだよ」
最後まで羽唯は納得がいかなかったが、ここは宮野の言う通りにしようと思った。
* * * *
テスト返却日。そして、結果が張り出される日。
学年掲示板の前に多くの人が集まっていた。そこには、今回の発端である吉田の姿もある。
羽唯は宮野と陽葵と一緒に見に来ていた。
一番上を恐る恐る見た。
「あ……」
確かに結果を確認して、隣にいる宮野に視線をやる。
「ほら、心配すんなって」
いつものように、そっと頭に手を置かれる。
さっきまでの緊張も解けて安心してるのに、まだ胸がドキドキする。
「……うん、ありがとう。」
力を抜いて、体を宮野に預ける。宮野の腕に頭をくっつけて、下を見た。
ポタ、と雫が垂れるのが見えた。
「なに、嬉し泣き?」
「…うるさい」
「可愛いとこあんじゃん」
俺が動いたらお前廊下に顔ぶつけるよ?とか起こりもしないことを言われたので足を蹴ってあげた。
陽葵も嬉しそうにしていて、今日は幸せな日だった。
1位 宮野 伊吹 1100点
「つか間宮は?」
「29位」
学年掲示板に張り出されるのは100位までで、羽唯は真ん中より上に乗っていた。
「最高じゃね?それ」
「うん。宮野、なんでもしてくれるんだ?」
「いいよ。なにして欲しい?」
無事に羽唯も歴代最高順位をとれたわけだが、何をしてもらうとか考えていなかったので今言われても咄嗟に出てこない。
「まあ今すぐじゃなくてもいいよ。どうせ今年はずっと一緒にいる」
「忘れないでよ?」
「忘れねーよ。記憶力舐めんな」
「学年一位だもんね?」
「お前もどうせ高得点なの暗記科目だろ」
「正解。世界史と公共と生物、地学は満点。あと家庭と保健」
「数学は?」
「62」
「やっぱ俺が教えねーとダメだな」
「じゃあ今度は数学で80点取らせて」
「そこは100じゃねーのかよ」
「100は無理」
「吉田〜今回テストどうだったん?」
「あ?うっせえ黙れよ。今機嫌わりぃーの見てわかんだろ」
三位 吉田 晴翔 1028点
「よかった。宮野のやつがミスったら俺が止めなきゃって思ってたけど……やるじゃん。」
「ねーちゃんはほんと、情報が遅いんだから……」
「もっと前からわかってたら、俺が一位とってあげたんだよ、羽唯ちゃん」
二位 田代 峰 1083点




