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第8話 オークション

 ああ⋯⋯なんということなの。


「まだ見つからないのかしら?」


「はい。申し訳ありません。現在ケンが全力で捜索中ですので、もうしばらくお待ちを⋯⋯」


「そう⋯⋯そうね。あの子を信じましょう」


 私たちは、馬車を預け屋に預けた後教会に行こうとしたけれど、そこからの移動中にいつの間にかヴァイスが迷子になってしまった。

 見た目はエルフだから問題ないだろうけれど⋯⋯。


「いえっ!問題大ありじゃないの!」


 そう、そうよ。

 見た目がエルフだからこそ、気を付けないと。

 ヴァイスには一切の魔力がないのだ。だから、魔法を使えない。例え、どれだけ魔法を理解していようが関係ない。


「ど、どうかされましたか?」


「どうもこうも、あの子は魔法を……!」


 フレイアは本気で言ってるの?

 あの子が魔法を使えないことは知っているでしょうに……!

 どうしてそんなにも落ち着いていられるのか。やっぱり自分の子ではないから、それほど本気にはなれないのだろうか?


 その時、ジジジ、と着信音が聞こえた。

 魔力波を飛ばし、それをやり取りすることで声を乗せることができる優れもの。

 魔国にしかないものだからおおっぴらには使えないのだけど、今は宿屋にいる。何も問題はないのだ。


「ケン、見つかりましたか?」


『いえ、まだ見つかっておりませんが……目撃情報が手に入りました。ヴァイス様は恐らく人攫いに遭ったものだと考えられます』


 人攫いですって!?

 大変じゃない!はやく、はやく助けないと……!

 魔力は誰しもが持っている。なのに、あの子だけは持っていない。

 魔法師の魔力が1というのは、あれはただの例えでしかない。

 たったの1で魔法が発動できるならば、私も苦労していない。


「ヴァイス……!すぐに助けてあげるからね……!」


 私は宿を飛び出した。


「【ウィング!】」


 風魔法の初級であるウィング。

 これを使うことによって、風の加護を得て、はやく動ける。

 魔力消費はそこそこなのでそれほど持続しないが……。


「ヴァイス……」


 愛しの息子を呼び、走りながらも思考する。


 人攫い……それは、珍しい人種なんかを捕らえて、オークションに売り出す、許せない奴らだ。

 特にエルフ、それも子どもとなれば、相当な高値でやり取りされることは必至。

 エルフは基本的に魔力量が多く、自然に愛されているため回復力も高い。つまり、労働力としてこれ以上のものはないのである。

 そうはいっても、ヴァイスは特殊すぎるけれど。

 まず、魔力そのものがからっきしだ。

 次に自然に愛されているかと言えば、むしろ嫌われている。当然だ。魔王の血筋なのだから。


「おい、そんなに急いでどこに行くんだい?」


 声をかけられたために急停止し、そちらを見る。

 そこには老婆が1人いた。


「今は急いでいます。何かお手伝いであれば、他の方へお願いします」


 そう言って、また走り出そうとした私に向かって、老婆がポツリと零す。


「ああ、そういえば今日のオークションにハーフエルフが出品されたようだね。いやぁ、実に楽しみじゃわい」


 刹那、私は老婆の胸ぐらを掴んでいた。


「おお、こわいこわい。こら、年寄りを乱暴に扱うでないわ。離してくれんかのう?」


「あっ、は、はい……申し訳ありません」


「その様子じゃと、どうやらお主の子のようじゃな」


 ビクッと体が震える。

 だけど、老婆は気にしたそぶりも見せない。


「さぁて、わしはそろそろ行くとするかの」


 そう言った老婆に、気がつけば返事していた。


「どこへ?」


「決まっておるじゃろう。ハーフエルフのところさ」


「是非、私も連れて行ってください!」


「ああ、わかったよ。じゃあついて来な」


「はい!」


 私は老婆の背中を見つめ、何者なんだと思いながらも後をついていった。


 そして、到着したところには、1つの大きな一軒家。


「ここじゃよ」


「ここが……」


「ああ。今日の会場じゃな」


 扉を開け、中に入ると、そこには受付がある。


「すまぬの、入りたいんじゃがの」


「わかりました。ではこちらにお名前の方お願いします。こちら手番号となります。競りになった時に使うので、失くさないようお気をつけください」


 老婆に丁寧な対応をすると、私の方に向く。その時、鼻で笑った。

 実に気持ち悪い人だ。


「あなたもですか?」


「はい」


「ではこちらにお名前をお願いします」


 対応はいたって普通だった。最初を除けば。

 中に入り、周囲を見る。老婆は結構前の席を陣取っているようだ。

 私も、この手の競りには出たことがある。王族なのだから裏の世界を見ておきなさい、という教育の一環であるが。


 正面にある大きなスクリーンにはこれまで出てきた人たちと、その金額が記されている。

 だけども、そこにヴァイスはいないようだった。

 ひとまず、まだ誰かに取られたというわけではなちようなので、パデリックには言わなくても良いだろう。

 言うと、まず間違いなく、この国が滅んでしまう。


「さぁ!お次は今回の目玉商品……なんと!世にも珍しいハーフエルフの子どもでぇぇぇすッ!!しかも、なんと3歳の男児です!これから調教も鍛えることも可能ですし、多種多様なお使い方法がありましょう!!では、初競りは2000ニートからとなります!!」


 同時に、檻に入れられたハーフエルフの子が、ヴァイスが出てきた。

 私は、ここにいる人たちを許さない。絶対に。


 かと言って、全員殺してしまうと、後々の魔国の印象が悪くなってしまうため、やはり正攻法しかないかな、と思う私だった。

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