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鳥になった俺は、ある女の子に恋をした。  作者: あまね


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すべてがその日から始まった。

『記憶喪失少女は、それでも生きていく』番外編。


★☆本編も読んでいただくと、より楽しめます☆★


● 本編はこちら●

https://ncode.syosetu.com/n0106ke/

俺はカイテル・メイソン。


メイソン伯爵家の長男であり、跡継ぎであり、デリュキュース国の騎士である。


何よりも愛する女性がいる。


――ようやく再会できた、たった一人の女性だ。


……幸せだ。

この幸せを手に入れるまで、三年かかった。


あのときの俺なら、こんな日が来るなんて想像もできなかった。

もう二度と会えないと思っていた。

ずっと、忘れられなかった。


俺は隣を歩くその女性を見つめた。

「リーマ、愛している」


その女性は恥ずかしそうに、はにかんだ。

愛おしくてたまらない。


俺は彼女の柔らかな唇に長い口づけをした。




――三年前のある日。


すべてがその日から始まった。


俺、ジル、マーティスを含む十名の騎士は、騎士団長のクラウド団長の執務室に立たされた。


クラウド団長は机の向こうに座り、エミール副団長はその隣に立っていた。

二人の顔は真剣そのもので、重い雰囲気だった。


「おまえたちには、『百年の門』の任務を命じる」


そうして、聞いたこともない任務を言い渡された。

集められた騎士の中には、隊長や副隊長レベルの騎士、長年騎士を務めている者もいた。

若手騎士は俺、ジルとマーティスだけだった。


……隊長や副隊長が何人もいる時点で、重要任務なのは明らかだった。

しかし、そんな隊長や副隊長も、俺のような若手騎士も、首を傾げた。


……百年の門?


聞いたこともない名前だった。

だが、クラウド団長とエミール副団長の表情が、それが冗談ではないことを物語っていた。


「……百年の門の任務?その任務はどんな任務でしょうか?」


三番隊のイリアス隊長は口を開いた。

その場の騎士たちは顔を見合わせた。

誰も、その任務を聞いたことがなかった。


クラウド団長は説明を始めた。


『百年の門』は、この世界と異界をつなぐ門だという。

その門が現れる場所は本来未確定だが、五年前に大賢者様が予知された。


今回の出現の場所は——トレストの辺境。


この任務は百年に一度の国家機密の重大任務。

門のことは王族、大賢者様、団長、副団長、この任務に選ばれた騎士。

そして、十大大臣のうち、限られた数名のみが知っている。


門は普段、決して通ることができない。


……しかし。

その名の通り、百年に一度だけ、門が開く。

その時に限り、二つの世界が繋がり、行き来が可能になる。


――だが、それは“可能になるだけ”だ。

原則として、渡ることは固く禁じられている。


この世界の者が異界に行くことも、

異界の者がこの世界に来ることも、許されない。

そんなことが起これば、二つの世界の秩序が乱れてしまう。


――ただし。

例外がある。


百年の門の監視を任された騎士に限り、特別に異界への立ち入りが許される。

門は両側から監視しなければ意味がない。


誰かが誤って門を渡らないように、

十人の騎士は、門のこちら側と向こう側、その両方を見張らなければならない。


「……異界?」

俺は呟いた。


ジルも、マーティスも、他の騎士たちも、眉をひそめた。

どうやら、他の騎士たちも初耳らしい。


「……異界とは、何でしょうか?」

マーティスは尋ねた。


「異界とは、この世界によく似た場所だ。

その世界にも人間が生きているそうだ。

国も、自然も、動物も——

この世界とはほとんど変わらないらしい。

……まあ、俺も行ったことがないから、今からおまえたちに話すことは、全て文献の受け売りだがな」

クラウド団長は苦笑した。


「百年の門に関する文献は、王族と大賢者様のみ閲覧できる。

百年の門が開く時期に限り、異界へ向かう者だけが、その文献を読むことが許される」

エミール副団長は続けた。


クラウド団長はその場にいる騎士を見回した。

「任務は一ヶ月後。

それまでに、異界に関する情報を十分に頭に叩き込んでおけ。

どんな場所なのか、実際にその目で見た者は、百年前に任務を行った者たちだけだ。

今、おまえたちに直接教えられる者はいない。

だからこそ、文献に残された向こうの情報が絶対に必要になる」


「承知いたしました」

その場の騎士たちは、真剣な表情で頷いた。


「この世界側で見張る隊は三名。

トーマス、ヘルト、ラウル。おまえたちに任命する」


「承知いたしました」

三人は静かに頷いた。


「異界側は七名だ。

イリアス、ジョエル、エルク、レオン、マーティス、ジル、カイテル。

おまえたちは異界側を担当する」


「承知いたしました」


「これまでこの体制で任務は遂行されてきた。今回も同様に進める予定だ」

クラウド団長は続けた。


「団長。こちら側は三名なのに、異界では七名もですか?

そんなに危険な場所ですか、異界というところは?」

四番隊のトーマス副隊長は真剣な顔で尋ねた。


全員の視線は団長に集まった。


「異界では、おまえたちは人間の姿では任務を遂行できないそうだ。

向こうの人間は魔法が使えない。

我々のように、使役獣を扱うこともできない。

したがって、異界へ使役獣を連れて行くこともできない。

何より、人間の姿で動けば、異界の者に接触する危険が高い。

だから、おまえたちには人間の姿ではなく、鳥の姿で任務を遂行してもらう」


「……なるほど。魔力はかなり制限されるということですね?」

俺は口を挟んだ。


「そういうことだ。魔力が制限され、魔法も十分に使えない。だから、人数を増やして補う」

その場の騎士たちは頷いた。


「……鳥の姿なんて、結構不便ですね」

四番隊のジョエル隊長は言った。


「あぁ。しかし、異界の人間の目を欺くためには、かなり有効だそうだ。

自由に飛べ、お互いに連絡し合っても、向こうの人間に知られることはないそうだ」

クラウド団長は小さく口角を上げた。


「向こうの人間には、我々のように動物を使役する概念もない。

鳥であれば、異界の人間に警戒されることはほとんどないそうだ」

エミール副団長は続けた。


その場の騎士たちは静かに頷いた。


「しかし、門を通る者には、悪影響が出るそうだ。

その影響を防ぐため、門を通る前に、護身魔法をおまえたちに施す」


「どんな悪影響でしょうか」

イリアス隊長は尋ねた。


「門を通った者は、自分自身に関する記憶をすべて失い、二度と思い出すことができないそうだ」


「……記憶を、すべて失う」


イリアス隊長は呟いた。


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