第6話
機動力が欠ける軍隊とはいえ、それこそ大量の鉄砲を装備しており、質的には当時の世界では超一流と言える存在だ、量的にも十万人以上の兵を揃えられるではないか、何故に織田・豊臣政権の朝鮮から中国、明本土への侵攻作戦が失敗するとまで言えるのか。
と叩かれそうですが、史実で豊臣政権が朝鮮出兵を行なった際に起きたのが、大失敗の現実です。
そして、その大失敗の原因を、様々に考える程に、織田・豊臣政権が、朝鮮から中国本土、明への侵出に成功するとは、私には考えにくい話なのです。
結局のところ、確かに鉄砲等の火力について、織田・豊臣政権の軍隊は、明や朝鮮の軍隊に優越していますが、騎兵を縦横に活用して、後方襲撃等が行われた場合、それに対処できるでしょうか。
中国の諸王朝が、北方遊牧民族への対処に苦悩し続けた最大の理由が、軍隊の機動力欠如です。
そうしたことから類推すれば、織田・豊臣政権の軍隊で、朝鮮や明、中国本土までも征服できる、というのは、余りにも楽観的過ぎる、不可能に近いことでは、と私は考えるのです。
それならば、小説等の仮想史モノで良くあるように、朝鮮、中国本土へ手を出さなければ良い、東南アジア方面へと積極的に侵出して、史実で日本人町が成立したように、交易拠点を積極的に建設して、庇護することで、織田・豊臣政権が多大な利益を上げて、永続した日本政府を築くことになり、又、近現代において産業革命を果たす等、明るい未来が築けた可能性がある、いや、それなりに高いのではないか、と私は言われそうですが。
その点についても、それこそ未来知識が無ければ、不可能に近い話の気が、私はしてなりません。
何故、そう私が考えるのか、というと、それこそ織田・豊臣政権以前に、日本及びその周辺で、そう言った形で国力を増大させた例が、私の調査が誤っているかもしれませんが、見受けられないからです。
勿論、世界史を調べれば、古代ギリシャのアテネや中世イタリアのヴェネツィア等、各地に交易拠点を築いて、それによって多大な利益を上げて、強国、大国と呼ばれた国家はそれなりにあります。
ですが、そういった国家の知識を、織田・豊臣政権の最上層部の面々は持っていたでしょうか。
私が調べる限り、そういった国家を知らなかったのでは、と考えられてなりません。
更に言えば、日本統一に至るまで、織田・豊臣政権は、それこそ敵を征服して、それによって領地を獲得することで、国力を増大させるという成功体験を、上から下まで積み重ねてきた面々から構成されれているのが、現実では無いでしょうか。
そういった面々が、日本を統一したという多大な成功体験を得た後で、この際に外国の領土を征服していこう、それによって更なる利益を得よう、という考えに至るのは、半ば必然では無いでしょうか。
実際に皮肉なことに、自国や周辺諸国の歴史を調べる程に、そういった成功例が、織田・豊臣政権の上層部の面々には、目に入ってくるのです。
モンゴル、元がやったように、朝鮮や中国本土を征服することで、手っ取り早く領土を獲得して、自分達の領土を拡張していくべきだ。
それによって、勢力を拡大していくべきではないか。
そう織田・豊臣政権の上層部の面々が考えて、更にその部下の面々も賛同するのが、これまでの成功体験から当然になるのでは、と私には考えられてならないのです。
史実の徳川幕府は、そのような方向に奔らなかったではないか、織田・豊臣政権を悪く見過ぎ、と叩かれそうですが。
徳川幕府が止めたのは、朝鮮出兵で大失敗した後です。
そういった失敗経験皆無なのに、失敗するだろうから止めよう、と誰が積極的に言い出せるでしょうか?
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