非力
しかしジョニーはすぐに独り立ちはできない。
何せイミテーション・ニードルマウスが戦闘体制に入ってハリネズミに擬態できるのは成体になってから。
子供のうちは闘う力がない。ただのハムスターだ。
この世界。
普通の動物と魔物の区分は見た目では分かりにくい。
魔物は心臓部から魔石が出るし、尻の穴もしくは尻尾の付け根から瘴石が出る。
(この瘴石が尻の穴から出た場合には「尻子玉」と呼ばれている)
ハムスター型魔物の子供などハリネズミに擬態もできないし、弱っちいくせに魔石と瘴石は採れるしで、弱小冒険者からすれば「楽に狩れるカモ」だ。
ハリネズミに擬態できるようになって独りで生き抜く力を持つまではダンとジンの世話になるしかない…。
(まぁ、俺って喋れないし。…俺だとバレない限りは餌も貰えるだろうし、今はこのまま飼われておくしかないか…)
生後2週間のジョニーは自分で餌を調達する事さえできないのだった…。
********************
イミニマの子供として2週間ほど生きてきた記憶があるが、ジョニーはイミニマ以外の魔物の生態に詳しいとは言えなかった。
(アムロのクソ馬鹿のせいで死にかけたけど、お陰でイミニマの成体がどうやって闘うのかというお手本は見られた。俺も半年も経てば成体だ。その時にちゃんと戦えるようにコッソリ訓練しておいた方が良さそうだ)
改めて「戦闘」を念頭に置いた物の見方で人外境の魔物達を観察する事にした。
ジンの薬草用ウエストポーチの中から安全に観察できるので気付く事も多い。
(ゴブリンが多いんだな…)
と思いながらダンとジンの戦闘を見つめた。
この世界のゴブリンは棒を振り回して闘う。
剣とかの武器を使うゴブリンは上位種に該当。
イケメン兄弟が危なげなくゴブリン3匹をサクッと狩る様は贔屓目抜きでカッコイイ。
(マジで息子らイケメンだなぁ。なのに「結婚しない」とか思ってるなんて勿体無いなぁ)
ジョニーの前世の生き方のせいでもあるのだが、ジョニーからすればひたすら勿体無い。
(俺がコイツらみたいなイケメンに生まれたら女取っ替え引っ換えにできただろうにな)
と懲りずに色気狂いの発想に走る。
それにしてもーー
(不思議だよな。俺の方が早く死んだ筈なのに…)
ダンとジンは二十歳前後くらいの年齢。
ジョニーは生後2週間。
(俺、死んでから転生するまでの間何してたんだ?)
と記憶を辿ろうとする…
すると何故か暗い水のような、血のような、不吉なイメージが浮かび身体が震える。
(………。まさかと思うが「生まれる前に死ぬ」とか「生まれてはすぐ死ぬ」とかを延々繰り返してたんじゃ…)
と思い至る。
水子とか
夭折者とか
自我がハッキリする前の状態でひたすら短時間の生と死を繰り返した場合、記憶に残りにくいのだろう。
短期間の生と死をヘビーローテーションで数十年繰り返していたのだと自覚できた。
(そういや、前世のスピリチュアルとかで「次の転生までだいぶ時間が空く」とか言ってたけど、アレ嘘だな。短期間の生と死をヘビーローテーションで繰り返しても記憶には残らないが、そういうのも一応転生に数えるなら転生は死んで直ぐに起きてる…)
地球世界での人生は今更ながら
「嘘まみれだった」
気がしてくるから不思議だ。
(なんで俺、あんなに狂ってたんだろうな…)
と、つくづく秀二だった当時の自分自身が分からないジョニーなのだった…。




