ペット?
ジャバァーッと何かがイミニマに降りかかった。
ポーションである。
イミニマがポーションを降りかけてもらえるまでの間、実は冒険者二人組の間で以下のやり取りがあった。
「…ダン君!なんかハムスターみたいなのがピクピクしてる!死にかけてるんじゃない?!」
「…ん?そうだなぁ。死にかけてるな。しょうがないんじゃないのか?弱い生き物はすぐ死ぬんだ。いちいちかまけてる余裕はないぞ。俺達もいつ魔物に襲われてそんな風に死にかける羽目になるか分からないんだからな」
「うん。でも、コイツ可哀想。ポーション使ったらダメ?」
「ダメだ。ここはまだ人外境の真っ只中だ。いつ魔物が襲ってくるか分からない。俺達に必要になる可能性があるのに、死にかけの小動物のために使えない」
「えぇ〜…。それじゃさぁ、俺がコイツをポケットに入れて運ぶ。それで無事に人外境を抜けて町に戻ったら、コイツにポーションを使ってやっても良いだろ?」
「…俺達が無事に町に着いて、ソイツが町に戻るまで生きてたらな」
「うん!きっと生き延びるさ!コイツ!なんか変だし!きっとしぶといよ!」
「そう思いたいなら、サッサと引き上げるぞ。あと、ちゃんとゴブリンの魔石と尻子玉を抜いておくんだぞ」
「了解!」
冒険者達は討伐証明部位を回収するものだ。
基本的に魔物の討伐証明部位は「瘴石」が指定される。
猿型魔物や二足歩行魔物の場合、「瘴石」が尻から採れるので「尻子玉」と呼ばれている。
「それにしても、不思議だねぇ〜。尻子玉って生きてる間は無いのに、死んだら急に尻の穴にできるんだろ?なんでなんだろうね…。死後に心臓部に出現する魔石もそうだけどさぁ」
「…ジン。お前、魔法の勉強の時いつも寝てただろ?」
「うん」
「…宿に戻ったら魔法教本を読んでおさらいしておけ」
そんな会話が交わされた後は、冒険者二人は辺りの気配を察知しながら魔物との遭遇を避けて人外境を抜け出た。
魔力濃度の高い人外境。
魔物達が生息している土地。
危険な場所だが、採取できる資源も多い。
冒険者の二人組。
ダンとジンの二人も人外境から資源を採取して生計を立てている。
二人は兄弟。
父親とそりが合わなくて、早々に冒険者登録して家を出た。
因みに弟のジンは兄のダンを「兄さん」とは呼ばず「ダン君」と呼ぶ。
今は亡き母親がダンを「ダン君」ジンを「ジン君」と呼んでいたので、ジンはそれを無意識に真似て兄を君付けで呼んでいるし、自分自身も「ジン君」と呼ばれたがる。
母親が魔法の素質のある人だったので、二人もちょっとした魔法が使える。
身体強化と火種。
お陰で何とか稼げている。
そんなイケメン冒険者達。
人間不信を拗らせているのでお互いしか信用していないが、弟のジンは小動物が好きで、ウサギ型魔物やネズミ型魔物を殺すのを躊躇う。
ジンの小動物好きが幸いして中身オッサンのイミニマは助かったのである…。
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中身オッサンのイミニマ…。
山本秀二だったモノが入ってる生き物…。
それがノソノソと起き上がった。
(…?あれ?…生きてる。というか、怪我が治ってる。…もしかして死にかけてたのって実は夢だったのか?)
イミニマはキツネに包まれたような気分だ。
「あっ!イミニマが起きたよ!」
とイケメンが顔を間近に寄せていたのだから驚く。
(うわっ!人間だ!イケメンだ!なんだコイツ!)
イミニマが後ずさりすると
「やっぱり可愛いなぁ。飼いたい!飼って良いだろ?ダン君」
とイケメンが甘えた声を出した。
「宿屋の大将から許可をもらえるならとりあえずは飼っても良いけど、俺達は自分の家を持たないんだ。拠点を他の町に移す時にはまた宿屋の許可をもらい直しになるんだぞ?そういうの分かってるんだよな?」
「うん。分かってる、分かってる」
「なら良いけど…。名前はどうするんだ?」
「名前…。どうしよう?」
「…ジョニーにするか」
「えぇ〜…。って男みたいな名前じゃんか」
「オスだろ?ソイツ」
「え?メスだよね?なんでオスだと思ったの?」
「え?」
「え?」
「お前、魔物の性別の見分け方知ってるか?」
「…知らないかな?虫だとメスがデカい。鳥だとオスの色が派手。というのは知ってるけど、小動物系魔物の場合、どうなんだろ?」
「だよな?なら面構えで判断するしかないんじゃないのか?」
「面構え?」
「そうだ。コイツはなかなか凛々しい顔をしてる。面構えから判断するならオスだ」
「そうなのかなぁ…」
「そうなのだよ」
「…なら、ジョニーで良いよ」
そんなやり取りがあって、中身オッサンのイミニマは「ジョニー」と名付けられたのであった…。




