「ちゃんと向き合う」
(「家族とちゃんと向き合う」って事ができてなかった、って事なんだろうな…)
と自分なりに答えを出してみるが、後悔してももう遅い。
テレビを見ても
ネットを見ても
「明るく楽しい世の中」
の空気が演出されていた。
そういうものを目にし続けると錯覚してしまうのだ。
「他の人達に与えられているものが自分にも与えられる筈だ」と。
だが「他の人達に与えられているもの」の相場自体が不透明。
ドラマやアニメの中では「普通の中流家庭」は「持ち家に住んで子供達は大学まで進学できる金のある家庭」だが…
本当に皆が皆、そんなに金があったのか?
謎である。
子供を高校へ通わせてやるだけで精一杯という稼ぎしかない夫婦も秀二の周りには多かったし、秀二もそうだった。
勿論、持ち家に住んで子供を大学へ進学させてやった人達も知人の中にいたが、皆が皆そうだった訳じゃない。
「本当の現実」
「本当の平均」
など割り出そうとするだけ無駄だ。
いつしか人は分からないものについては考える事自体やめてしまう。
そうしてテレビやネットの中の「作られた世界」の中でも「人気のある動画」が「本当の現実」「本当の平均」のように脳内で位置付けられていく。
炎上商法で図太く再生回数を稼ぐクズが湧き続ければ
「ああ、あんなので通用するのか」
と人生上で必要な人倫や協調性のレベルを大きく勘違いしてしまう。
実際にはコネの有る無しで
「炎上=ネット生命終了」
(酷い場合は社会的生命終了)
(更に酷い場合は物理的生命終了)
「炎上=目立つ=炎上商法成立」
と篩い分けされていたのだが…
コネの有無という点に着目できないコネ無しの悪びれた人達は
「楽して得してるヤツらを真似すれば自分も楽して得できる筈だ」
という虚しい夢を捨てられない。
秀二もその類の人間だった。
「悪どいことをして良い思いをしてるヤツらもいるんだ。俺も真似して何が悪い」
といった性根でちょいワルなイケオジを気取っていた。
(実際には貧乏で嫌われ者の病んだオッサンでしかなかったのだが…)
「悪どいことをして良い思いをしてるヤツら」
に憧れて自分もそうなりたいと思えば思う程、人生は地獄へ変わる。
何故なら
「炎上商法」
一つ取っても、背後に血生臭い闇がある。
世の中には
「炎上商法なんて通用させてたまるか」
と思うような嫉妬深い人間も多い。
なのに、そういった嫉妬深い人達の勢力が強制的に削がれるから炎上商法は炎上商法として通用するのである。
つまりは炎上商法に横槍を入れる人達のうち影響力のありそうな、それでいてどこのコネとも繋がっていない足場の弱い人間は
「炎上商法を邪魔した=ネット生命終了」
(酷い場合は社会的生命終了)
(更に酷い場合は物理的生命終了)
という状態にされていたのである。
実際に
「影響力の大きかったネット上の知人が急に消えた」
ような現実を体験した人は少なくなかった。
実は公安警察案件もしくは自衛隊特殊部隊案件であり
民間人には手に負えない状況だったのだ。
そういった闇の中で起きてる胸糞悪くなるような現実を推測できない人達が
「悪どいことをして良い思いをしてるヤツら」
に憧れて真似しようなどと思ってしまえるのである。
秀二という人間は
(当人は自覚できていなかったが)
相当な世間知らずで、世間というものを大きく勘違いしたまま大人になり、そのまま中年まで生きてしまった人間だったのだ。
ただ、そういう人間は秀二に限ったものではない。
だが秀二のような
「世間を知ってるつもりの世間知らず」
が生み出される一番の原因は
「妄想の活用法」
が認識されていない社会環境にあったとも言える。
ドラマやアニメなどは他人の考えた妄想の産物。
自分自身の妄想も小説やマンガとして書ける世の中。
社会には妄想が溢れていたが…
「妄想を『自分が決してやらない事だから』楽しむ」
スタイルの者達と
「妄想を『自分がやる事のシミュレーション』に見立てる」
スタイルの者達とで正気と狂気とに分かれていた。
「家族とちゃんと向き合う」
という事でさえ
「妄想を『自分が決してやらない事だから』楽しむ」
という位置付けで上手に受け流して
「正気を保っている」
のでなければできない事だ。
妄想を受け流せず、世の中を大きく勘違いしたまま、ちょいワルなイケオジを気取って、ネット通販の買い物依存で必死に自分を飾り立てても…
「貧乏で嫌われ者の病んだオッサン」
という惨めな現実に打ちのめされるのは時間の問題でしかなかった。