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【 2日目の朝② 】
マブチがホールで座り込んで30分程すると、髪に寝癖をつけたままのキョーコがふらふらとした足取りでホールの方へと歩いてやってきた。
「あ、マブチさん……。おはようございます」
「おはよう、キョーコさん。寝起きかもしれないんだけど、1つ頼まれてくれないかい?」
「はい、何でしょう?」
マブチはキョーコに、アサヒが見つけた2つの扉について説明した。そしてその中を全員で確認したいので、ユリカを起こしてきてほしいということについてもあわせて伝えた。
「分かりました。ちょっと見てきますね」
キョーコはそう言って自分の部屋とはホールを挟んで反対側にある廊下の方へと歩いて行った。少ししてキョーコはホールへと戻ってきた。
「ユリカさんはもう起きてました。ただ、化粧をするから少し待っててほしいそうです」
キョーコはそう言うが、本人はおそらく化粧などしていない。いわゆるすっぴんという状態で歩きまわっていた。
「えっと、キョーコさんもそうされますか?」
「あ、ごめんなさい!恥ずかしいなぁ……」
そう言って彼女は少し照れながら手で顔を隠すような仕草をした。すっぴんのままでも化粧をしている時とほとんど大差がないのは彼女の顔の作りがいいからなのか、若さゆえかは分からない。
「もし自分の部屋に戻るなら、部屋に合った机の引き出しとかを見てもらっていいですか?僕の部屋に、心当たりのない封筒があって、もしかしたら同じようなものがあるかもしれません」
「そうなんですね。じゃあちょっと戻ってますね」
そう言ってキョーコはそそくさと自分の部屋の方へと向かっていった。これで封筒の件を話していないのはユリカだけだが、彼女がホールに来た際に伝えればいいだろうとマブチは思い、一度自分の部屋に戻って封筒の中身を探ることにした。
自分の部屋へと戻り、机の引き出しから中身の入っている気配がする封筒を取り出す。封はされておらず、中身を簡単に見ることが出来た。マブチはその封筒の中を覗き込む。
「えっ……」
茶色い封筒の中には、100万円と思われる紙幣の束が入っていた。取り出して確認するが、どう見ても本物のそれである。
現実味のない館の中に置いてある本物の札束。それが意味するところは、恐らく他の3人の誰かの『秘密』に関係しているということなのだろう。マブチはそれを見ても自分の記憶が戻るような感覚を感じられず、そう結論付ける。
マブチはその封筒を手に持ち、自分の部屋を後にした。ホールから自分の部屋に戻ったアサヒがそろそろ戻ってくるかもしれないと考えての事だった。
案の定、ホールにはアサヒが戻ってきていた。マブチと同じように収穫があったのか、手には何やら書類のようなものを持っている。
「俺の部屋にも確かにこれがあった。でも、書いてあることは身に覚えがないな。あと、さっき女優のやつが来たから、あんたに言われたように部屋の中を探すように言っといたよ」
「そうなんだ、ありがとう」
どうやらマブチはユリカと入れ違いになってしまったらしく、そこからは各々の部屋で見つけたもののことについては詮索せず、キョーコとユリカを待つ時間になった。しばらく待たされることになるかとも思ったが、案外2人ともすぐに、何かを手に持った状態でホールへと集まった。
「おはようございます、ユリカさん」
「ええ、おはよう。それで、そこがキョーコさんの言ってた扉?」
ユリカはホールに来るなり、開口一番にそう尋ねた。
「ええ。アサヒ君が一番最初に見つけたんですが、僕と話し合って皆で一緒に開けた方が良いかと思いまして」
「なるほどね。じゃあとりあえず中に入りましょう。多分、話したいことはそれぞれにあるはずだから」
ユリカはそう言って手元をチラッと見る。話したい事、というのは勿論、各々の部屋で見つかった『秘密』の手がかりと思われるものについてだろう。
「じゃあ、俺が先に入るぞ」
ユリカが提案してすぐに、アサヒは自分とマブチの部屋に近い方の扉に手をかけた。どうやら新しく現れた扉は、個人の部屋とは違い、誰が開けようとしても開くものらしく、彼がドアノブを回すと木製の鈍い音をたてながら扉が開いた。
扉の先にあったのは、白いレース生地の布がテーブルの上に敷かれ、個人の部屋にあるものよりも遥かに上等な椅子。そしてホールと同じように天井からシャンデリアが吊るされた空間だった。
「これは、食堂のような場所ですかね?」
マブチはアサヒに続いて中へと入り、部屋の中を見回す。食器が丁寧に並べられている棚や、簡易的な洗面所などがあることからも、恐らくマブチの予想は当たっているだろう。
「そのようね。肝心の食事がないけれど……。まあいいわ」
ユリカは食堂らしき場所の一番近くの椅子を引いて、そこに腰掛けた。椅子はちょうど4人分だったため、マブチがユリカの正面、アサヒがその隣、キョーコがユリカの隣の椅子に座った。何を話すのかについては全員が理解しているため、その場には緊張が走る。自分の『秘密』を思い出す手がかりが手に入るかもしれないという高揚と、本当に思い出せるのか、思い出していいのか、そんな戸惑いが食堂に流れているようだった。
「えっと、多分皆さんが思ってることは一緒だと思うんですが、このままだと埒が明かないので、僕が話しますね」
そんな状況を見かねて、マブチが話を切り出した。
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