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【 少女 】
遠くから川のせせらぎが聞こえてくる。心が穏やかになる、優しい自然の音だった。時折吹く風は木々の葉を揺らし、アクセントを加えている。
「お兄ちゃん、あそぼ?」
目の前に、ある少女が現れた。服なのかどうかも怪しいズタボロの布のようなものを体に纏わせた、かわいらしい女の子だった。彼女の頬は同じ年頃の子供よりもこけており、頬骨が浮き出ている。その状況に違和感を持った。
「ねぇ、あそぼ?」
少女は余程何かをして遊びたいのか、同じような問いを繰り返す。無邪気なその瞳の奥に、光は見えなかった。それでも意を決して「いいよ」と言おうとするが、言葉を発せない。頭に言葉が思い浮かんでも、その言葉は現実にならない。
いや、そもそもここは現実なのか。
それが頭をよぎった瞬間に、目の前の少女は忽然と姿を消し、先ほどまで聞こえていた心地よい川のせせらぎは聞こえなくなっていた。木々を揺らす風も、止んでしまった。
そこで、世界は暗転した。
◇ ◇ ◇
【 アイテム①「少女の記憶」 】 を手に入れました。
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