↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/43

22

 【 左上の引き出し 】






 マブチは左上の引き出しに付いている鍵穴に、ボイラー室で見つけた鍵をはめ込んだ。鍵はスルッと中へと入り、マブチはそのまま鍵を回す。ガチャリという音がして、左上の引き出しが開いた。


 そこにあったのは、1つの免許証だった。そこにはマブチらしき男の姿が写っているのだが、それを見てユリカには疑問が生じる。


 「馬渕、康(・)平(・)……? 」


 



 ゴトンッ!


その時だった。部屋の外から強い衝撃が加わったかのような音が聞こえたかと思うと、4人の居る部屋の扉がひとりでに閉まる。部屋の中は闇に包まれ、4人は平静を保つことが出来なくなる。


 「な、なんだ!? 」


 「ひいっ! 」


「おい、なんか動いてないか? 」


「部屋自体が、移動してる? 」


 暗闇のまま、部屋には振動が起こり、4人はそのままその場に倒れこんでしまう。機械の駆動音のような音が鳴り響き、部屋全体の振動はさらに強くなった。最早誰が何をしているのかも分からない状況に、4人は混乱することしかできなかった。






 ◇






 謎の揺れは、途端に収まった。すると勝手にしまったはずの部屋の扉が、今度は反対にひとりでに開く。光の導きがあるのはそこだけで、4人は何とか辛うじて部屋の外へと出ることが出来た。


 「なんだよ、ここ……」


 アサヒがそんな言葉を漏らす。引き出しのあった部屋から出た先には、この世のものとは思えないおぞましい光景が広がっていた。




 そこは、拷問部屋とも形象すべき場所。血で赤く染まった診療台、何に使われたか不明な金属器具、そして、床にいくつも伸びている、何者かが這いずったかのような血の痕跡。照明は小さな裸電球がいくつも無造作に吊り下げられているのみで、それもいくつか電気が切れかかっている。チカチカと光っては消えてを繰り返す電球が、不気味さを増幅させている。




 「おめでとうございます、マブチ様」




 どこからともなく、声が聞こえた。機械が話しているかのような、そんな違和感を感じる無機質な声だった。その声の主は、正体を探るまでも無く、向こうからやってきた。




 「どうやら、『秘密』を思い出されたようですね」


 影。影が、動いている。


 そう思えるほどに、黒く、ゆらゆらとした、形の無い物体。それでいて、そこが目だと嫌にでも分かる白い光が、その漆黒の中に浮かんでいた。


 「な、なんだよ、お前は……! 」


 その黒い物体に、マブチは怯えの表情を露にしながら疑問を返す。それを聞いて影のような物体はゆっくりとマブチの方へと近づいてくる。


 「私のことは、そうですね……。カゲとお呼びください。私はこの『白詰の館』の支配人をしておりまして、皆様のことをご到着の時からずっと見守ってきたのです」


 そう言って、カゲと名乗った物体は、いかにも人間らしい姿に形を変えていく。ホテルマンのような清楚な身だしなみまでして見せて、カゲはにっこりと笑った。そのように見えた。


 「マブチ様。当初のお約束通り、お迎えに上がりました」


 「約束……」


 「ええ、『秘密』を思い出した方は、『白詰の館』から出ていただくことが出来る。案内状の方にも書かせていただいた通りでございます」


 その話を聞いて、4人はこの館で目を覚ました直後のことを思い出す。いつの間にかポケットに入れられていた謎の黒い封筒。その中身の話をしているのだ。


 「出れる……? ここから?」


 マブチはまるで神でも見ているかのような恍惚の表情を浮かべている。非現実的な世界からの脱却。それがすぐ手元まで近づいている喜びもあってのことだろう。


 「ええ、すぐにでも」


 「じゃあ……」


 マブチはカゲに差し伸べられた手のようなものを取ろうとする。しかし、その状況にユリカは黙っていることが出来なかった。


 「待ってちょうだい」


 「何でございましょう」


 カゲはマブチの手を取るのを中断し、ユリカの方へと向き直る。


 「『秘密』を思い出したから出て行く? ……冗談じゃないわ。そんな異(・)常(・)者(・)、世間に戻していいはずがないでしょう! 」


 ユリカにとってその発言は、賭けに等しいものだった。カゲがそれに対して無視を決め込んで、マブチを連れていく可能性も当然あったからである。


 「……と、言いますと? 」


 しかし、カゲはユリカの言葉に対して、まるで試すかのような口ぶりでそう返した。見透かされている。そう思いながらも、ユリカは言う。


 「マブチ君、私たちは協力関係なのよね? だったら、あなたの『秘密』を私たちが暴いても問題は無いはずよね」


 「何の話ですか、ユリカさん。前も言いましたが、それをあなた達に言う義務は僕には……」


 「黙りなさい」


 そう言ってユリカは、懐からナイフを取り出した。キッチンに置いてあった、果物用のペティナイフである。それを見て、マブチは一歩引きさがる。


 「あなたがここを出て行くのは、今更止められないわ。きっとね。でも、あなたが私たちを脅した罪はまだ消えてない。なら最後に私たちには、せめてあなたがどういう人間か知る権利があるはずよ」


 「……」


 マブチは目の前のナイフに委縮してか、返答に困ったのか、カゲの方を黙って見た。しかしカゲはその場から動かず、あくまでも静観を貫くような態度を見せる。


 「分かりましたよ。だったら、あなたの考えを聞かせてもらいましょう、ユリカさん。でもきっと、僕の『秘密』のことは、あなたには推測が付いているんでしょう? 」


 そう言って、マブチはユリカの方を見る。その目は、異端者の目つきだった。






 ◇ ◇ ◇





 【 アイテム⑬ 馬渕康平と書かれた免許証 】 を入手しました。





 目次から「23」へお進みください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。