第五十六話「運び屋の女性」
こんにちは、オロボ46です。
今回は車でピョンヤンに向かうところから始まります。
それでは、どうぞ。
「やっと見えて来たね......」
ソヨンさんの言葉を聞いて自分が窓の外を見ると、街が見え始めていたところだった。
「あいつのせいで......モグモグ......日がくれてしまったからねえ......モグモグ......」
そう言いながらリェンさんは饅頭を口に入れている。
「もともとピョンヤンに行くつもりでしたから......それに、食料も補給しないといけないので、ちょうどいいですよ......モグモグ......」
ソヨンさんは片手でハンドルを動かし、もう片手で饅頭を食べながら笑っていた。
「モグモグ......ゴクン、それならいいけど......ところでユウさん、饅頭食べないかえ?」
リェンさんは後ろを振り向いて、こちらの手にある饅頭を見て言った。返答を考えていると、ソヨンさんが口を開いた。
「さっきの男を見て心配しているみたいだけど、別に毒は入っていないから大丈夫。お腹が痛くなったりはしないよ」
それを聞いて、自分は饅頭を口にした。
「それじゃあお義母さん、ユウ、旅免許を出してください」
ソヨンさんの言葉を聞いて、自分は疑問に思いながら旅免許を取り出した。
「ピョンヤンではそれがないと入れないからねえ、ちゃんと見せるんだよ?」
今まで訪れた街ではなくても入れたとリェンさんに伝える。
「街によっては旅免許がないと入れない街もあるんよ」
納得したので、旅免許を手に頷く。
その後、車はピョンヤンの門の前で止まった。門の前で立つ守衛に三人の旅免許を見せると、車は門の下を潜り抜けて行った。
ピョンヤンでは公園での野宿は禁止されていたため、自分はリェンさんたちと共にホテルに止まることにした。車はホテルの駐車場で止まり、ホテルのロビーへと歩き始める。
「ふう......さっぱりした......」
客室の中、ベットの上で荷物の整理をしていると、ソヨンさんが浴槽から出てきた。
「ソヨン、このかんじ、どうだい?」
リェンさんは鏡に向かって作業をしていた。そばにはビンのような物がある。
「まだやっているんですか......別に染めるのはいいんですけど......」
「今の若者にはねえ、銀髪がうけるんよ」
......
「止めませんけど......お義母さんが年齢を間違えられる原因の一つだと思いますよ」
「きちんとした男なら、年齢も見抜くことができるんよ」
......リェンさんは笑いながら、髪染めを再開した。
荷物の整理が終わったので、自分は窓の外を見た。ビルの光が輝く街が見える。その時、ピョンヤンに来た時から思っていたことをリェンさんに聞いてみることにした。
「......街で暮らす人の考えによって違うからさ」
「お義母さん、いきなり何言っているんですか?」
ソヨンさんの質問にも答えず、リェンさんは話を続ける。
「確かに制限をかけられると窮屈に思うかもしれないが......メリットがないこともないんよ。例えば、門の前で旅免許を見せる必要だが......あれは外から犯罪者が入ってくることを防ぐ役割があるんよ。それに、人によっては公園で旅人が野宿する人を嫌う人もいるからねえ......」
街によって考え方が違うのだろうか......
「まあ、そう思っていいだろうねえ。うちの性格ならソウルみたいなところが合っているだろうけど、人それぞれ考え方は違うからねえ。答えはひとつじゃないと考えれば、すんなりと受け入れるもんよ」
「あの......ユウ、ちょっといいかな?」
ソヨンさんが手を上げて話しかけてきた。
「君は殺し屋に狙われているみたいだけど......それに......お義母さんはテレパシーを受け取ったみたいに答えているし、あの時ナイフを空中で止めていたのも、もしかして......」
自分は少しだけ考えてから、その理由をソヨンさんに伝えることにした。
「びっくりした......いきなり声が聞こえるから......でもこれで理由がわかったわ」
「ユウさん、前にも言ったけど......そう隠すことはないんよ?」
途中でリェンさんが話に割り込んできた。
「いえ、お義母さん。ユウの判断は正しいですよ。彼女の力は何が起きるのかわからない......それに、殺し屋に狙われるような人と行動していたら、こちらの命も危険にさらすことになる......」
......
「だけど、ここであなたを置いていく真似はしないつもり。お義母さんと一緒に約束しちゃったからね......約束は最後まで守るつもりよ」
そう言ってソヨンさんは手を差しのべた。
......?
ソヨンさんは手のひらを天井に向けている......
「ただし、料金は払ってね。さすがに殺し屋に狙われるんじゃあ、収入を弾ませないと割に会わないから......それから、あの男は後払いで乗せていたからその分もね!」
......
「ソヨン......別に止めるつもりはないんだけどねえ......その性格、なんとかなしたほうがいいんじゃないのかい......?」
「なに言っているんですか! "アイツ"もいない分、私一人で生きていかなきゃいけないんですよ? それじゃあ、ここまでの距離とペキンまでの輸送代、それにあの男の後払いの分......しめて......」
......ソヨンさんに自分の事を話さなかった方がよかったのかもしれない。
いかがでしたか?
リェンさんの髪色......まさかの染めていたという事実......
次回もお楽しみに!




