第五十五話「森を走る車」
こんにちは、オロボ46です。
今回は車の中から始まります。
それでは、どうぞ。
「お饅頭でも食べるかえ? オオイタの街で買ってきたんよ」
走る車の中で、助手席に座っていたリェンさんが袋を取り出し、その中から饅頭という食べ物を取り出しながら聞いてきた。
「あ!! いただきます!!」
自分の右隣に座っていた男性が言うと、リェンさんはその男性に饅頭を渡した。
「珍しいね。お義母さんがお土産を買ってくるなんて......」
ソヨンさんはそう呟きながら饅頭を手にした。
「ユウちゃんもどうだい?」
自分も饅頭に手を伸ばす。
饅頭を片手に窓を見てみると、木が次々と過ぎ去っていった。
「車は初めてかい?」
隣から話しかけてきた男性を見て、少し悩んだが、頷くことにした。
「車が初めて!?」
バックミラーに移るソヨンさんの目が見開いた。とりあえず自分はリェンさんに説明を頼むことにした。
「......この子は訳ありでねえ、少し世間知らずなところがあるんよ」
「......そうなんですか」
トラックには乗ったことある。しかし、その時は外の様子が見られない、暗闇に包まれていた荷台の中だった。あの時の周りの景色も、こうだっただろうか......
「ところで、みんなは何か趣味とかはあるか?」
男性は何気ない様子で訪ねた。
「私は休みの日はスマホつついていますよ?」
ソヨンさんの隣のリェンさんが、鼻で笑った。
「まったく、現代っ子はスマホばかり......少しは行動を起こしたらどうだい?」
「はあ......お義母さん......そういうところが年寄り臭いと言われるんですよ......」
「ふん......うちだったらいろんな男と出会いにいくねえ......」
「......あいかわらずですねえ」
二人は、とても楽しそうに話しているように見えた。
おかげで、隣の男性がナイフを持っていたのを見逃しそうになっていた。
「......っ!!」
自分はすぐに男性の方に向いて腕を掴んだ。
「......嘘」
ソヨンさんはバックミラーで後ろの座席の様子を見ていたようだった。
「ソヨン!! よそ見をするんじゃあない!!」
突然、体が男性の方向に倒れた。男性も自分から離れる方向に倒れたので、自分は男性の腕を離してしまった。
「もう少しで木にぶつかるところじゃないか!!」
リェンさんがソヨンさんに対して叫ぶ。
「それよりも......お義母さん......後ろ......」
!!
男性はすぐに立ち上がり、ナイフを降り下ろした。今度は間に合いそうになかったので、見えない壁を張る。
「......? ナイフが......空中で......っあ!!」
今度は自分が男性から離れるように倒れた。男性も続いてこちら側に倒れる。
「......おい!! 車を止めろ!!」
男性が初めて怒鳴った。それにあわせて、車は急停止する......!!
その反動で、自分の体は席の足元に落ちてうつ伏せの状態になる。すぐに上を向こうとしたが、男性が自分の体に乗り掛かった。
「ソヨン!! 車を......」
「車を動かしたらてめえらも殺すぞ!!」
男性が再び叫ぶ。車が動くことはなかった。
「なあ実験体さんよお......俺の妹を覚えているか......?」
妹......?
「俺の妹は......お前に殺されたんだよ......森の中で......左腕、手首、そして心臓に刺されてな......なあ、覚えているだろう......?」
......!!
思い出した......!! サカノと共にトンネルで出会った殺し屋......
「あれは正当防衛だというつもりか? だがなあ、あそこで妹が死ぬのは間違っている。妹は殺しの仕事でしか生きることはできなかったんだ......だから、人々を恐れさせる力を持ったお前が死ぬべきだったんだ!!」
男性がナイフを振り上げ、風を切る音がした。
「う......っぐ......」
突然、背中に重たい物が乗っかった。
「は......腹が......」
「ふん、あんたは出会った時から怪しかったのさ」
リェンさんの声が聞こえた。
「まさかババアッ......!! あの饅頭に......!!」
「第一、あんたはユウさんを知っているみたいに話しかけていたが、後でユウさんに話を聞いてみると知らないと言っていたんだよ。それに、ユウさんから殺し屋に命を狙われていると聞いたら、あんたを怪しいとしか思えないさ。でも人違いだったらいけないから、とりあえず饅頭に"便秘薬"を入れてみたんだけどねえ......」
"運び屋の姉ちゃんが腹痛で倒れたんだ!! あんたなら治せるだろ!?"
あの時の男性は、確かにそう言っていた。
「くそっ......ババア......う......っぐ......」
「お姉さんだよ、このバカモノが。ソヨン、ちょっと手伝ってくれんか」
そう聞こえると、扉の開く音が聞こえた。その後、上に乗り掛かっているものが退いた。
立ち上がると、リェンさんとソヨンさんが、男性を持ち上げていた。
「本当にいいんですか? この辺りは......」
「......絶対......ぶっ殺す......」
「ええ、かまんよ」
そして、男性を車の外へと投げ出し、すぐに扉を閉めて車を走らせた。
一息つきながら席に座り、窓の外を見てみると......何かの視線が横切った。周りの木をよく見てみると、熊の怪物たちが木に張り付いているのが見える......
「お義母さん......この辺り......怪物たちの巣があることを知っていましたか......?」
ハンドルを握るソヨンさんが恐る恐る聞く。
「あの逆恨み野郎にはちょうどいい罰だよ。万が一生き残ったとしても、もうこれに懲りてユウさんを襲うことはないはずだからねえ」
いかがでしたか?
それにしても......リェンさん......恐ろしいことを考えましたね......
次回もお楽しみに!




