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第46話

 一回何か思いついちゃうと、思考はなかなかそこから外れなくなる……ものだと思うのだけど、っていうか今まではそうだったんだけど、今日はなんか違う。


 ダテラスが俺と同じようにあの世界に召喚されて、向こうで俺のことを聞いていた。魔法も体験した。


 だとするならば、俺のことに対する反応に対してもある程度納得がいく。確かに会ったことは無いけど俺のことは知ってて、なおかつ同じような体験をしたなら俺の急激な変化にも理解を示すだろうとは思う。それに、自分が趣味で織り込んだ英単語が向こうで伝説の勇者の魔剣の名前になってた……というのを後から知るってのはなかなかクル ・・ものがあるような気はするんだ。フィクサーブライドリルEXとかフェイクスクエアマッシャーGとか。俺にも色々そういう心当たりはあるからわかる。ブライドリルは結構役に立ったけどな。何がどうEXでGだったのか……いやそれ以外もさっぱりわからんけど。

 まあとにかくあれだ。そう思えば一通り説明がつくような気がするんだ。俺とのことも、振る舞いも。する。説明がつく。つくんだけど、なんとなく納得いかない。いや、納得いかないというかなんというか。ぐるぐるとメモの隙間で円を描くだけだった右手のペンを止める。


「要するに信じたく無いんだよな。あの体験をしたのが俺だけじゃ無い……ってことを」


 書くことをやめてフリーになった右のペンを鼻と上唇の間に挟んでもそもそと口の中でつぶやいた。客観的に見ると凄く馬鹿っぽいことをしてる自覚はままある。いや、ポーズのことじゃなくてさ。現在の思考形態というかな。明らかに納得いくだろう仮説を特に根拠なく否定している。いや否定はしてないのか? なんだろうこれ。自分だけが特別だったと思いたい……とか。そんな感じかな。自分のことなのによくわからないけど、そんな感じ。

 しかも……しかもだ。考えがそこに寄らなくなって、それで他のこと考えられるんならいい。それならまあ、視野が狭くならないって美点に取れる気もするんだけど、単に集中力が切れてまともに考えられなくなってる感がある。

 彼が召喚された『以外の可能性』を考えてるならいい。

 けど俺が今考えてるのは召喚された可能性『を否定する根拠』だ。無駄なことこのうえ無い。これなら一旦考えるのをやめて勉強に専念したほうがまだ自分のために建設的だろう。


 ちらと目をやれば板書はちょうど時事問を終えたところで、先生は何やら紙の束を教卓の下から取り出した。とキリのいいところではあるのだろう。いや、というか、これあれだ。この後公民2枚と地理歴史一枚ずつの小テスト地獄の始まりだ。

 うわぁ。なんで忘れてたんだ。この先生実践あるのみが信条で、ひたすら小テストやらされるんだった。授業の最初に一応思い出したじゃん。ああ、こんな先生いたなーって。そんな先生だったなーって。

 とりあえず今すぐテキスト読み返さないと。それと後でこのノートもだ。っていうかこれあれだ。このノートあれじゃん! 清書用のノートじゃん。うわぁ。清書用のノートにノイズ混じりの板書した挙句メモまでとか……何やってんだ俺。全然こっちの流れに戻ってきて無いじゃん。


「おい蘭堂」

「うん?」


 鼻の下からペンを落としつつ頭を抱えていると、突然背中をつつかれた。これはペンか。そんなもん刺さらんから嫌がらせにならんぞ。


「前、プリントきてるぞ」

「うお、さんきゅーぬくい

「いいからとっととよこせ」

「おう」


 慌てて前のヤツからプリントを受け取り、自分の分と同じ並びの隣のヤツの分をとって後ろに回す。彼はそれを受け取り自分たちの分を取り分けると、すぐにまた後ろに回した。

 温歩未 ぬくいあゆま。特筆すべきことの無いヤツだ。ただまあ、あえて言うならこいつらも一応半月前前の俺と一緒にこの教室で授業受けてたんだよね? なんでそんなにあっさり今の俺受け入れてくれちゃってるの? 若干不審な気持ちが拭えないんだけど。いや、若干。

 ……などといったところか。

 それでもこいつを始め、G20の圧力爆弾 (プレッ○ャーボンバー)問題のとき微妙な反応してたの記憶してるからね。何人か二度見してたし。その中でも温くんは割と反応薄かったけど、まあ、後ろの席だしすでに慣れていたのかもしれないしね。

 そういう意味では未だにチラチラ見てくる隣のヤツなんか割と反応が可愛いというか……ってやべ、その彼ですら今は全力で小テストに取り組んでるぞ。かけらもこっちを見ちゃいない。なのに俺は全く集中できてないであっちをチラチラこっちをチラチラ……これじゃ『高校いってもいいのかな』が笑い話にしかならないぞ。っていうかほぼほぼ負け惜しみ。

 それは嫌だ。それは絶対カッコ悪い。

 どうせあれだ。ダテラスには明日単語カードを渡す時に会うんだし、ちょっとやそっとでどうにかされるとも思えない。できることはできる。できないことはできない。今は勉強。ダテラスくんのことは後々。ただ目の前のことに集中するんだ。

 とりあえず考えることは家に帰ってからでもできるしな。よし。

いつも読んでくださったりがとうございます。

感想など、とても励みになってます。

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