表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六刻のイグジステンス ― 世界を拒絶された能力者たち ―  作者: マーたん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/7

最終話 接続子の選択



――前書き――


物語には終わりがある。


どれほど大きな戦いでも、

どれほど理不尽な運命でも、

いつか必ず選択の瞬間が訪れる。


世界を守るのか。

誰かを守るのか。

それとも、自分を守るのか。


第六話まで続いてきた侵食の物語は、

ここで一つの結末を迎える。


英雄の物語ではない。


これは、

存在そのものを鍵にされた少年の、最後の選択の話。

静寂だった。


先ほどまで異形で埋め尽くされていた大地が、

不気味なほど静まり返っている。


だが終わったわけではない。


空が軋んでいる。


世界が崩れている。


裂界が、さらに開いていた。


「……限界だな」


天城ユウトが低く言った。


視線は空へ向けたまま。


「侵食速度が臨界を越えた」


相馬レンが舌打ちする。


「止める方法は?」


「一つだけある」


全員の視線がユウトへ集まる。


だが彼はすぐには言わなかった。


代わりに、霧島ハルを見る。


まっすぐに。


逃げ場を与えない目で。


「接続を切る」


沈黙。


意味は分かる。


理解したくなくても分かる。


ハルがゆっくり口を開いた。


「……俺か」


ユウトは頷いた。


「お前が裂界の鍵だ」


「お前がいる限り、この世界は繋がる」


「だから」


言葉が止まる。


だが、続けるしかない。


「お前が消えれば、侵食は止まる」



誰も声を出せなかった。


風の音だけが響く。


トウカの手が、わずかに震えている。


マキナが目を逸らす。


ガイは何も言わない。


レンだけが怒鳴った。


「ふざけんな!」


重力が揺れる。


地面が軋む。


「そんな結末認めるかよ!」


ユウトは動じない。


「認める認めないの問題じゃない」


「構造の問題だ」


冷酷な現実。


誰も否定できない。



ハルは空を見上げた。


裂界。


あの日からすべてが狂った。


理由は分かった。


自分だった。


偶然じゃない。


被害者でもない。


ただの鍵。


接続子。


最大の汚点。


「……はは」


笑いが漏れる。


自嘲だった。


「主人公っぽくねえな」


誰も笑わない。



その時。


トウカが前に出た。


強く、ハルの腕を掴む。


「違う」


声が震えている。


だが離さない。


「あなたは原因じゃない」


「あなたがいたから、ここまで来れた」


「あなたがいなかったら、私たちは逃げてた」


ハルの視線が揺れる。


「だから――」


言葉が詰まる。


それでも続ける。


「勝手に終わらないで」



観測者の声が響く。


「侵食最終段階へ移行」


空が割れる。


大地が崩れる。


巨大な歪みが現れる。


世界そのものが接続されようとしている。


ユウトが静かに言う。


「時間切れだ」


ハルは目を閉じた。


深く息を吐く。


怖い。


当たり前だ。


でも。


もう分かっている。


「……なあ、ユウト」


「なんだ」


「消えれば終わるんだな」


「ああ」


短い答え。


嘘はない。



ハルは笑った。


少しだけ。


本当に少しだけ。


「じゃあさ」


一歩前へ出る。


裂界の中心へ。


「鍵は閉めとくわ」


空気が震える。


世界が揺れる。


接続が集中する。


ハルの身体が光に包まれる。


存在が分解されていく。


トウカが叫ぶ。


「ハル!!」


振り返らない。


振り返れば、止まる。


だから。


前だけを見る。


「――頼んだ」


その一言だけ残して。


霧島ハルは、裂界へ消えた。



静寂。


空の亀裂が閉じていく。


歪みが消える。


異世界が遠ざかる。


侵食が止まる。


完全な沈黙。


レンが拳を握りしめる。


マキナが目を伏せる。


ガイが空を見上げる。


ユウトが静かに呟く。


「接続遮断を確認」


そして。


トウカだけが、その場に立ち尽くしていた。


何も言わず。


ただ、空を見ていた。


そこにはもう、裂界はなかった。



人類は救われた。


だが。


その記録は残らない。


接続子は消えた。


侵食も消えた。


世界は何も知らないまま続く。


ただ六人だけが覚えている。


最大の汚点を。


そして。


最初で最後の英雄を



――後書き――


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。


『六刻のイグジステンス ― 世界を拒絶された能力者たち ―』

第一部はこれにて完結となります。


この物語で描きたかったのは、


強さではなく代償。

才能ではなく歪み。

救いではなく選択。


能力者たちは特別な存在ですが、

その特別さは祝福ではなく、世界からの拒絶でした。


そしてハルは、その中でも最も特別で、

最も残酷な役割を与えられた存在でした。


最大の汚点。


それは人類の過ちであり、

同時に世界を救った唯一の鍵でもあります。


物語はここで終わりますが、

彼らの時間が終わったわけではありません。


もし続きを描くなら――


失われた鍵の行方。

残された能力者たちのその後。

そして、再び開く裂界。


第二部は、いつかまた始まるかもしれません。


最後まで読んでくださったことに、心から感謝します。


――ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ