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六刻のイグジステンス ― 世界を拒絶された能力者たち ―  作者: マーたん


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第四話 崩れる優位

「……おかしい」


最初に異変へ気づいたのは相馬レンだった。


怪物の群れが押し寄せる中、彼は即座に能力を発動する。


重力干渉。


見えない圧力で敵を叩き潰す――


はずだった。


「効きが……浅い……?」


異形の動きが鈍る。


だが止まらない。


本来なら骨ごと圧壊するはずの質量が、

まるで軽い幻影のように揺らいでいる。


「レン!」


白峰トウカが叫ぶ。


すでに彼女も異変を察していた。


空間切断。


振るわれた不可視の刃。


確かに斬れている。


だが――


「手応えが違う……!」


断裂したはずの怪物の身体が、

ノイズのように揺れ、再接続される。


物理的な破壊が成立しない。


世界のルールが違う。



「最悪ね……」


黒曜マキナが舌打ちする。


精神干渉を試みる。


恐怖を植え付け、敵の行動を鈍らせる能力。


だが。


「……え?」


感触がない。


怪物の意識が掴めない。


「感情構造が存在しない……?」


異形の瞳なき頭部が、ゆっくりこちらを向く。


理解。


拒絶。


人間的な精神が通用しない。



「はは……面白えな」


九条ガイが低く笑う。


一歩踏み込み、怪物の群れへ突っ込む。


爪が振り下ろされる。


肉が裂ける。


血が飛ぶ。


だが――


「……ちっ」


再生が遅い。


傷口の閉じる速度が明らかに鈍っていた。


「再生阻害……?」


違う。


能力そのものが弱体化している。


「この世界……!」


ガイの顔から笑みが消える。


「俺たちを拒絶してやがる……!」



「当然の結果だ」


声。


観測者。


戦場を眺めながら、まるで実験記録を読み上げるかのように語る。


「お前たちの異能は確定世界の産物」


「この未確定領域では優位性を維持できない」


「……ふざけんな」


レンが歯を食いしばる。


重力場をさらに強化。


周囲の空間が軋む。


それでも。


効果は限定的。


圧倒的な違和感。



「下がって」


静かな声。


天城ユウトだった。


戦闘の最中でありながら、異様なほど冷静。


「原理は単純だ」


異形が迫る。


ユウトは一歩も動かない。


「この世界は“揺らぎ”で構成されている」


手を伸ばす。


怪物へ向けて。


「ならば――」


空気が変わる。


言葉にならない圧力が広がる。


「揺らぎそのものを固定する」


次の瞬間。


怪物の身体が停止した。


動きではない。


存在の揺らぎが止まった。


ノイズが消える。


再構築が止まる。


レンが目を見開く。


「……おい……」


トウカが息を呑む。


ユウトが静かに告げる。


「未確定性の否定」


怪物の輪郭が硬直し、

今度こそ完全な物理存在へ収束する。


「今だ!」


トウカが反応する。


空間が閃く。


断裂。


今度は消えない。


怪物が崩れ落ちる。



観測者が、初めてわずかに沈黙した。


「……興味深い」


抑揚のない声。


だが確かに変化があった。


「概念干渉の適応個体」


ユウトの瞳は揺るがない。


「実験対象としての価値を確認」


次の瞬間。


異形の群れが、さらに増殖した。


地平線を埋め尽くすほどに。


「……は?」


ハルの声が震える。


観測者は静かに告げる。


「検証を次段階へ移行する」


能力者たちの優位は崩れた。


異世界の法則。


絶望的物量。


そして――終わらない実験。


戦いは、まだ始まったばかりだった。

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