初めで一歩
タコ負けしたので初投稿です。
「野球っすか?」
男は提案書を見てそう尋ねる。
男の目はクマと少し赤みを帯びており風呂で泣いた後ベットでも涙を流し、中々寝付けなかった事を物語っていた。
「その通りだ指揮官!」
そう言うのは扇である。
指揮官室には扇の他にも沢山の者たちが集まっていた。
♢♢♢
ことは数時間前に遡る。
それぞれの部隊の隊長副隊長たちがある会議室である話をしていた。
「今力を入れるべきは陸上装備であろう!」
そういうのは扇であった。
今行っているのはどの装備の開発を行うかである。
だがそれに対して何人かが待ったをかける。
「いいや、今必要なのは空中装備だ!先日も見たであろう!あの爆鯨を!今まであれは大規模な戦闘でしか姿を見せなかったが、最近では小規模な戦闘にも現れるようになっている。これは敵が空の戦力を強化しているに違いない!だからこそ今、我々は装備を整える必要がある!」
そう言い終えるとまた何人かから手が上がる。
「いいえ、お二人とも違います。今必要なのは水上水中装備です!先日の戦いも海中からの奇襲が行われました。私たちが出ていなければ基地内に侵入されていたでしょう。今重要とされるのは水上水中戦です!それにこの基地で一番装備が旧式です。そろそろ整備だけではどうしようも無い物もあり、整備班による改修のみでは相手との装備の差が出始め苦戦を強いられています!」
「だが、いくら空中で敵を堕とそうがいくら海で敵を沈めようが基地が制圧されていれば無意味だぞ。それに最近地上からの攻撃も激化している!やはりここは陸上装備であろう!」
一人が言えばもう一人はこっちが良いと言う。ここに居る者では決まりそうになかった。
「やはりここはいつものようにアレで決めるか」
扇がそう言うと他の者も頷いた。
♢♢♢
「それでなんで野球なんすか・・・?」
男は先程入ってきた彼女達を見る。
「いつもは模擬戦などで勝った方の意見やプレゼンによって採用しているのだがいかんせん今回は人数が多くてな。先程購買部の方から連絡があって、珍しい物が手に入ったと連絡を受けて行ってみればバットとグローブとボールが大量にあったのだ。向こうの手違いで送られたらしく処分して構わないと言われたのだがもったいなくてな、せっかくなので人数が多い今回は野球で決めることにしたのだ」
そう扇が説明すると箱に入ったグローブやボールを見せる。
「ほえーこっちの世界にもあるんすね、で、なんで自分のところに来たんすか?」
男は箱の中身を見ると目線を再び扇に戻す。
「うむ、今回はこれで決めるという事の許可と第二演習場の使用許可を貰いに来たのだ」
扇がそう言うと両神から2枚の紙が男に渡される。
「もう他の者からの許可はもらった、こちらにサインを頼む」
紙の下の方には四人分のサインの欄があり、その内三つはすでに書いてあった。
(四人ってことは俺以外の指揮権を持った人三人も書いてるのか)
そんな事を思いながら男は空欄に自分の名前を書いた。
(オキアミたかし君89歳っと、はー死にてー)
今一度自分の名前のアホらしさに嘆くがしっかりと書き、扇に渡す。
「うむ、ありがとう指揮官。明日から開始するので是非見に来てくれ」
そう言うと扇達は指揮官室を出て行く。
「こんな事で決めちゃっていいんすか?」
男は隣にいたミリアスに聞く。
装備の開発はかなり重要な事であり、それをこんなことで決めてしまうのはどうかと思ってしまう。
「そうですね、ですがこうやって決める時はどれも重要度が同じ場合ですからこういう風に決めて全員で納得するんです」
「なるほど?まぁそういうふうに決めればあきれつは起こんなそうっすね」
男は少し疑問に思いつつもそういうものなのかと納得する。
「とりあえず今日からよろしくお願いします」
「はい、お願いしますね指揮官様」
そうして男はミリアスに教わりながら指揮官としての仕事を始めた。
強すぎる。