皇子様と後宮と…
…主人公目線?
――グシャリ
執務の合間に、早朝、女官が持って来てくれた手紙を自室で読み、グレース・シュベーツは思わずそれを握り潰した。
彼の肩は震え、唇は引くついた。琥珀色の瞳は細まり、白磁の頬は心なしか紅潮し、辺りには冷気が漂っている。
もしここに誰かいたら、その寒さに、恐れ戦き、即座に逃げ出しただろう。
しかし、幸い、今この部屋には彼しか居らず誰も怯えずに済んだ。
暫くそうしていた彼は、突然王宮内を走り出した。目指すは手紙の送り主である母の部屋。途中、騎士や女官の驚く表情が目にちらついたが彼はそんなものさえ気にする事が出来なかった。 そして、目当ての部屋の扉を乱暴に開けて閉め、思い切り吸い込み、母を呼んだ。
「母上ーーー!!!」
「はぁ~い。」
奥から、間延びした声が響く。
そこで、彼と同じ水色の髪とサファイアのような青い目の女性が、ソファーに座り、片手には紅茶が握られていた。
彼はズカズカと彼女、――エリーリア・シュベーツ――に近き、その心中を吐き出した。
「何故後宮を開くんですか!」
「やだ、跡継ぎは必要じゃない。それに、大国の次期皇帝に側室の一人や二人、いたって不思議じゃないわよ~?」
「父上にはいませんでした!!」
「ええ、そうね。でも、グレースには必要ないなんて事、言い切れないでしょう?」
エリーリアは何も気にせず優雅に紅茶を飲み、ゆったりとした口調で話す。
彼は全力疾走した所為か、肩で息をしていた。頬より少し長い髪の毛が汗ばんだ顔にへばりついて忌々しそうに拭い、それでも呼吸と気持ちを落ち着かせながら口を開く。
「…確かに、百歩譲って同意しましょう。……ですが
――どうして後宮に男を入れるんですか!?」
――カツン
エリーリアがティーカップをソーサーに置く。
「あら、だってあなたは―――‘女の子’じゃない。」
シュベーツ帝国次期皇帝、グレース・シュベーツ。彼は‘彼’ではなく、正真正銘、‘彼女’だったのです。
思ったより客観的(?)&書きたかった言いあいが次話行きになりました。
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びっくりしました!!
さて、次はエリーリア目線かな?