第一章 2
父親から、
「今年から学園に通う。その手紙が届いた、渡しておく」
と分厚くてお洒落な封筒の中にたった一枚入っていた手紙は、
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クズナ・ヴァレンタイン様へ
王国歴523年
本学園への入学を認める
セインフォード学園より
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は……?
……セインフォード学園?
そして、その瞬間。
猛烈な眩暈と共に20代までの人生を歩んだ男の記憶が流れ込んでくる
喫茶店。
…裏切った友人。
彼女の誕生日。
…赤い痣。
会社。
…懲戒解雇。
最後の景色は、視界一面のトラックで終わっていた。
……そうか俺は死んでしまったんだな。
「何で最後までこんなに酷い死に方しなくちゃいけねーんだよ」
「いや、不注意だった俺も悪い…か」
納得はしていないが、いまは如何することもできない。
復讐したい気持ちもあるがこの世にはする相手もいないだろう。
記憶の混濁により意識がはっきりしないため手紙をもらった場所から自室へと帰り
整理するために、すこし寝ることにした。
ベッドへと転がり込むと同時に、
まるで抑えていたかのような悲しみと虚しさが一気に押し寄せてくる
「なんで...なんで俺ばっか....ッ....」
ただただ無駄だったんだ。
どれだけ相手のためになる行動をしても、どれだけ仲が良くなろうとも
どれだけやっても……無駄だ。
「クソっ」
…もういい、誰かのために生きて傷つくのは終わりだ。
考えているうちに寝ていたらしい。
誰かに呼ばれているようだ、
「——様、——ナ様」
「クズナ様、お父様がお呼びです」
どうやら本当にこの体の持ち主は貴族らしい
メイドを雇っている所を見て改めて思った。
「……わかった」
そう軽く返事を返すと
「ヒッ」
俺に聞こえるか聞こえないかぐらいの声量で、悲鳴が聞こえたんだ
「えっ」
俺はただ困惑していた
そのメイドは、俺に悲鳴が聞こえたことを気づいただろう
そう思い目を向けると、
メイドは一歩下がり、手が震えていた。
「何をそんなに怖がっているんだ」
と聞くと
「大変失礼なことをしてしまい申し訳ありません!」
「罰は受けますのでどうかお許しお願いします……」
そう言われた、
え、どういうことだ?
体の元の所有者は何か酷い奴だったのか
クズナは15年分の記憶を遡ることにした。
記憶を辿っていくうちに、元のクズナがどんな人間だったのかが分かってきた。
簡単に言えば——権力を使って好き放題していた。
まず、街では平民と目が合っただけで「反逆だ」と決めつけて殴りつけていた。
護衛を連れているのをいいことに、気に入らない相手を力で黙らせるのが常だったらしい。
露店でも同じだ。
気に入った商品を見つければ「侯爵家が徴収する」と言い放ち、代金も払わず持ち去る。
店主が抗議しても聞く耳を持たず、護衛に品を運ばせてそのまま立ち去っていた。
屋敷ではメイドを呼びつけ、怯える彼女たちを当然のように扱っていた。
彼女たちが背筋を伸ばし、息を詰める理由はそこにある。
技術指導の教師には木刀で暴力を振るい、学問指導では話を聞かず、メイドを隣に座らせて指導者を無視する。
指導というより、ただのストレス発散の場になっていた。
——これが、元のクズナ・ヴァレンタインという男の“事実”だった。
——そんな奴だったんだ、元の体の持ち主は
「…いいな」
俺はそう呟いた。
「はい?」
メイドはその解答が理解できなかったのか間の抜けた返事だった
(いいじゃないか。この縛られすぎない侯爵家という地位、この評価)
(今までは人を信じることで後悔してきたんだ、
これならば自分のやりたいことをすることができる)
「最悪な評価、それはだれも俺に期待していない。」
「なら好きに生きていいだろう」
(俺は変わっていく、今までは黙って我慢していたがやりたいようにする)
まずは手始めに、
「おい、そこのメイド」
声をかける
「はいッ…」
「トイレはどこだ」
許してくれ、ずっと我慢してたんだよ




