表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
75/76

栄連合は加速していく

 午後の陽が差し込む、政庁西館の会議室。

 加賀谷、リィナ、そしてヴァルド、ミロの四人が、円卓を囲んでいた。

 窓の外には、拡張工事の進む開発区と、帆船がひしめく港湾が広がっている。


 この短期間で、公国は劇的な変化を遂げた。

 ヴェステラの成長、共栄連合構想の発表、国家ファンドの立ち上げ、若者たちの育成。

 そして、ついに公開株式制度が、この地に生まれた。


「……あなた、最初は“売ろう”としてたじゃない」


 少しからかうようにいたずらっぽくリィナが呟いた。


 加賀谷は視線を窓の外に向け、わずかに息を吐く。


「……まさか。今となっては、想像すらできないよ」


 その言葉に、リィナは目を細めて微笑む。


「そう。……ちょっと安心した」


 加賀谷はゆっくりと背にもたれかかり、天井を見上げながら続けた。


「俺はさ、別に王様じゃない。

 偉そうに国家を語れるほどの人間じゃないし、正直、至らないところだらけだ。

 あくまで本質は“商人”なんだよ。価値を見て、拾って、育てて、繋ぐ。……その繰り返しだ」


 ヴァルドが静かに頷く。


「ですが、その価値の中に“人”があると気づいておられる。だからこそ、我々は動けたのです」


「それも……俺ひとりじゃ無理だった。

 ヴァルド、あんたが見出して送り込んでくれた学生たち――あれがなきゃ、育成なんてできなかった。

 ミロも、レーネを現場で支えてくれて、本当にありがとう。

 リィナ、お前がミュリルを連れてレーナ連邦に交渉行ってくれたから、取引所とのコネクションが生きた。あれはでかい」


 加賀谷は一拍おいて、ふと視線を伏せる。


「それと……ここにいないけど、ガロウにも。

 あいつがいなきゃ、この国はとうに潰されてた。

 制度も技術も人材も、武力がなきゃ守れない。マジで感謝してる」


 誰も言葉を挟まなかった。

 その空気は静かで、けれど確かにあたたかかった。


 加賀谷は再び顔を上げ、二人を見渡す。


「そうして積み重ねてきたこの国を、“売る”なんてさ。

 ──もう、考えられるわけないだろ」


 リィナは短く頷いた。


「……うん。それでいいのよ」


 ヴァルドが静かに立ち上がり、深く一礼する。


「この都市が……いえ、この国が、新たな時代を切り拓く先駆けになると、私は信じております。

 どうか、これからも共に歩ませてください」


「もちろん。あなたにもまだ、やってもらうことが山ほどありますからね」


 リィナの言葉に、加賀谷は肩を竦める。


「ま、逃げてもどうせ仕事回されるしな。だったら前向いてやるしかない」


 窓の外には、港に向かう魔導輸送船がひとつ、光の軌跡を描いて進んでいた。


 かつて“売却”から始まったこの国は、今や“創出”という名の未来を育てる地となった。


 これはまだ、始まりにすぎない。

 だが今は確かに、希望がここにある――自分の手で育てた“価値”として。



 ――第六章 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ