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隣のキミと過ごす、本当の恋人までの一年間。  作者: 四乃森ゆいな
第二章
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第25話「幼馴染たちは、テストの時はライバルになる」

 僕──凪宮晴斗には、いわゆる幼馴染というのが存在する。


 さて、幼馴染とは皆的にどういう存在のことを指すだろうか。

 小さい頃から身近にいて、尚且つ人の目を引き寄せる容姿と類稀ならぬ才能を持つだなんて、お決まりなパターンをするだろう。そう、まるで神様が仕送りし授けた天女のように。


 ──だが、現実はそこまで同じパターンで構成されているわけではない。


 現に僕の幼馴染は、天才ではない。


 小さい頃から成績優秀で才色兼備……なんて、漫画や小説のような幼馴染は現実にそう容易く居るわけがない。そんな人物をこの広い世界の中から探すとなると、おそらく何億分の1ぐらいになることだろう。


 例えば某有名大学の生徒だとしても、何もかも特化した人間がゴロゴロと転がっているとかはない。

 人というのは努力して結果を成すもの。産まれてから天に恵まれているような──そんな人間がいること自体、幻ではないだろうか?


 寧ろあの“学園一の美少女”に頭脳明晰までもを与えたならば、天は彼女に恩物を与えすぎではないだろうか、と訴えてる。


 しかし、現実には()()()()()()()()()()()()()

 そしてそれは──僕の幼馴染も同じこと。


 僕の幼馴染──一之瀬渚は、容姿端麗で成績優秀。高校入学後、試験で満点だったという噂のお陰で、彼女はあっという間にクラスグループの頂点を占領した。


 おまけにあの気前の良さだ。

 今のクラス内でモテないわけがない。

 だが、勘違いしないでほしくないのは──彼女の容姿や実力、それらの全てが天から与えられたものではないということだ。


 容姿端麗であるのにも、成績優秀という看板もあるのにも彼女の『努力』が産んだ結果だということだ。それだけは覚えていてほしい。




 僕達がまだ小さかった頃──僕は平仮名や片仮名、小学校6年間で習う数式や知識、それから漢字等など。それらを全てひっくるめて、僕は過去一度も渚に負けたことなどなかった。

 理由は単純──容姿が整っているからと言って、何も頭脳明晰という言葉が当てはまるわけではないということ。


 要するに、彼女は昔から頭が良かったわけではないのだ。

 小テストにおいても、中間・期末試験においても、渚は僕との勝負で勝ったことはない。

 逆に僕は彼女に負けたことがなかった。それが当たり前で、それがいつも通りだった。


 しかし、意外なことだと感じる人も少なくないのではないだろうか。

 今の順風満帆な高校生活を見ているととても想像しにくいだろうが、人には必ず『敗北』という結末が訪れるものだ。「この人より悪い点数を取るはずがない!」なんて、浅はかな結論を付けたことがあるだろうか? ──あるとしたら、それは立派な勘違いだ。


 人を見た目で判断する時代は、もう終わったのだ。

 人それぞれに得手不得手があるように、勉強においても、たとえその人が“根暗ぼっち”であろうがなかろうが、それだけの判断材料では何の説得にも成りやしない。


 見た目が綺麗な彼女が頭脳明晰では無いように、たった1つの材料で『人』を判断したところで、それは結局──他人が作り上げた幻想だ。事実ではない。


 結論を言えば、その材料だけではいつか痛い目を見るということだ。


 重要なのは外見ではなく中身を見据えること。

 イケメンだからと、その人が勉強出来る美人であろうと、人と言うのは外見だけでは『人』を作れない。中身というのは、それだけ重要であり必須な代物しろものなのだ。


 先程述べたように、僕は渚相手に完全な負けを味わったことはない。

 そしてそれは、小学生の頃だけに留まらず、中学生の頃まで受け継がれた。

 結果は5分の1の確率でしか渚は勝利出来なかった。端的に言えば、僕の圧勝だった。


 けれども、渚は努力を続けた。

 どれだけ敗北をしようとも、そこから伸し上がろうと手を伸ばし続けている。伸し上がらずに永遠と地底に留まる奴らは、決して渚には敵わないだろう。


 ──ねぇ、ここ教えて!

 ──はいはい


 渚は無類の努力家だ。

 決して悪い点数を取っているわけではない。入学式のときの代表挨拶に抜擢ばってきされたのがまさにその証明。実際満点を取ったのは僕なのだが、噂というのは形を変える代物らしい。


 クラスメイトが目の当たりにしている渚は、仮面を被った『優等生なぎさ』だ。

 本当は、誰にも劣らない努力をして身に着いた実力だというのに、周りはそれを一言でまとめてしまう。……あの有名選手が言ってた台詞を、生で味わっているような感覚だ。


 小学生から今まで、努力を怠らずに結果を出し続けている渚に触発されたのだろう。

 テスト前にしか範囲の勉強をしない僕だが、渚が張り合うようになって暫くした辺りから──僕も普段から勉強するようになった。


 ……でもその根本は、僕自身の中にある『敗北感』からだろう。

 負ける屈辱、悔しさ、劣等感……というのは、僕も知っている。


 ある人が言った。──「天才には努力しても敵わない」と。

 だがそれを言い残したところで、実際のところそれを決めるのは当事者である僕達だ。


 僕にだって越えられない壁がある。──そう、あの忌々しい兄貴には負けるのだ。

 渚と同じ立場だからこそ、僕は彼女相手に手を抜いたことは1度もない。


 そんな幾度となく行われた僕と渚の真剣勝負。そしてそれが、もうすぐ訪れようとしていた。そう、学期恒例行事──定期試験である。


 もちろん双方抜かりはない。

 幼馴染だからといって、恋人だからといって、お互い手を抜くつもりは一切ない。

 これは毎回行われる──僕達だけの、恒例行事のお話だ。

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