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隣のキミと過ごす、本当の恋人までの一年間。  作者: 四乃森ゆいな
第二章
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第24話「幼馴染は、友達の話で決心をつける」

 お店を出た私は、少し話がしたいと佐倉さんに言われて外のカフェへと入店した。

 客も夕方ということもあってかなり少ない。やっぱりこういう場ノリが出来る場所というのは、昼頃が1番賑やかなんだろうか。


 学校では人気者と呼称される私だが、高校に入ってからクラスの女子達と放課後の寄り道なんてことは1度も無い。縁が無かった分、そういったことにはかなり疎い。


 カウンターで注文をした後、ドリンクを持って向かい合わせの席に座る。

 佐倉さんは、注文したストロベリーラテを飲みながら私に訊ねた。


「――んで、問題はそれをどうやって渡すか。でしょ?」


「…………。……うん」


 ……そう、誕生日プレゼントを購入したからといって、それで全て解決したわけではない。


 短期バイトを始めたことを黙っておきたかった私は、腕に微かに残った痣のことを訊ねられて、咄嗟の嘘をついてしまった。

 そのことに、おそらく晴斗は気づいている――。


 隣の席になって、今まで以上に嬉しかったというのに、晴斗に無視されることがこんなにも心苦しいなるなんて……あのときは、考えもしなかった。


 ……とはいえ、晴斗が私のどんな行動や言葉に傷ついたのか。

 それがわからないから、晴斗に直接訊ねることも出来ない。こういうときに限って、かつての臆病者だった自分が舞い戻ってきた気分……。


「改めて訊くけど、本当に凪宮君が何に頭を悩ませてるのかわからない?」


「う、うん……。何か、いくら考えても普段の晴斗なら絶対しなさそうなことばかり考えちゃって。だから、全然思い当たることは……」


「その中に正解がありそうだなぁ……――」


「えっ? なに?」


「いや、別に」


 佐倉さんが何か言った気がするけど、本人が支点を逸らされてしまい、結局はわからずじまいだった。


「――じゃあ、押してみれば?」


「……えっ? 押す?」


「ほら、良く言うでしょ? 押してダメなら引いてみろって。今渚ちゃん達がしているのが『引く行動』だとするなら、次は『押す行為』をしてみればいいんじゃない?」


「……押してダメなら……か」


 佐倉さんの言っていることは確かだ。

 私も晴斗の様子が気になりつつも、実際は迫る行動など何1つしていない。


「凪宮君の性格上、自分から真意を話すことは極端に嫌がるだろうから、渚ちゃんから行動に出ればいいと思うよ。……しっかし、そういうところだけは似てるよね~2人共!」


「うぅぅ…………」



 ✻



 ……的な会話があり、佐倉さんの提案に乗って『押す行為』を取ってみた結果――互いに抱えていた誤解は解けた。


 佐倉さんには感謝せざるを得ない。晴斗が嫉妬していたことも、晴斗がそれに苦しんでいたことも、自分で気づくことが出来たから。

 そして、文芸部の部室にて2人きりになった私と晴斗はというと……、


「……へぇ。腕時計なんて、随分珍しいもの選んだんだな」


「そ、そんなにセンス無いって思われてるの……?」


「半々」


「意地悪っ!!」


 晴斗は私があげた箱を開けて、プレゼントに買ってきた腕時計を実際に着けてみてくれた。肌色に黒色が予想以上にマッチしていて、とてもカッコいい。


 ……だが、1つ不安なことが出来てしまった。


 予想以上に腕時計が本人とマッチしているお陰で、これは……更にモテてしまうのではないだろうか。――何て、ちょっとした不安を持ちつつも、やっぱり似合ってるんだよなぁと思ってしまうのは、似合いすぎる晴斗が悪い……。


 前に使っていたのも黒めの物だったから、今回のも暗めのものにしておいた。

 普段着も黒がベースになってること多いし、それに無難だったから。


「……こりゃ、渚のプレゼントも今までのと違うのにしなくちゃな」


「別に今までと同じでいいよ」


「そういうわけにもいかないだろ。現に内緒だったとはいえ、お前は僕のために頑張ってくれたんだし」


「そういうことじゃなくて。……またこんな風に誤解招いたら元も子もないし」


「意外と根に持つんだな」


「う、煩い! 1度壊れた壁の修復が難しいように、1度決壊寸前で持ち直してそこから更に2度目の追い打ちがあると、もう修復不可能に近いんだよ!?」


「それは『壁』の例えだろ。別に人間で表してるわけじゃあるまいに。……ま、僕もお前の誕生日近づいてきたらアルバイトでもするかな」


 晴斗はまるで独り言を零したかのようにそう呟いた。

 それは、数十分前のような距離感から、あのとき以前にあった距離感に戻った故だろうか、独り言のような言葉が私の耳にはっきりと届いた。



 …………んん? ……えっと、今晴斗なんて言った?



 普段は外に出ることさえ嫌う、あの“根暗ぼっち”な晴斗が……人とコミュニケーションを取ることが極端に苦手な、そんな晴斗が…………バイトっ!?


「おい、今すっごい失礼なこと考えただろ」


「な、何のことかな……?」


「誤魔化せてないからな、バレバレだからな?」


 幼馴染としての会話から何1つとして変化はなく、まだまだ『恋人同士』らしいかと聞かれればそうではないかもしれない。


 けど、私達はそれでいい。

 少しずつ、少しずつ……私達のペースで変わっていければ、それでいい。


 晴斗が私に対して嫉妬してくれた――これもまた、私達の関係性を進めるきっかけになってくれた。……それに、今までそういったこととは無縁だった影響か、こんなにも嬉しいと感じることはない。本人にとっては、少し不服かもしれないけど。


 私の誕生日は7月。

 テストも忙しくなる時期だろうが、あまりそういったことには期待しないつもり。


 ……でもどうだろう。

 晴斗は私と同等に1度言ったことを実行しなかった例がほとんどない。無理とわかっていることは、大人しく引くのが鉄則。


 だから――少しだけ期待しておこうかなって、そう思わされるんだ。

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