2-2-1「本当はなんかあるんでしょ」
司瑞「前回のビブリオバトる! バトラーデビューに向けて気合い充分な本庄、しかしハリキりすぎてか体調を崩してしまい、発表する本が決まらないままデビュー戦まで日にちの無い状態に陥ってしまったのだった!」
観上「……誰に言ってるの?」
司瑞「てなわけで図書館の二階から本庄のことこっそりウォッチしてるわけだけどさ」
観上「うん」
司瑞「おれ飽きてきた」
観上「帰っていいよ。僕は本読んでるから」
司瑞「えー、でもさー、本庄のこと心配じゃん?」
観上「なら直接声かけなよ。あと足バタバタやめて、地味にうるさい」
司瑞「だって本庄ぜったい気にするじゃーん……あ、書川」
観上「……止めといたほうがいいよ、下行くの。嫌な顔されてさっさと帰られるのがオチ」
司瑞「むーん……」
◆
本……今日こそなにか探さないと。
こんなに色々あるのに……いや、色々あるからこそかな。「これ!」って本がなかなか見つからなくて……。
……どうしよう。このまま、何も見つからないまま発表当日になっちゃったら……。
ううん、諦めるのはまだ早いよね。ギリギリまで粘らなきゃ。そうじゃなかったら……うん、朝読で読んでる本――『怪盗アルセーヌ・ルパン』、頑張って紹介しよう。途中までしか読めてないけど、面白いのはそうだしね。
で、でもやっぱり、読んだきっかけとか聞かれるのかな……――あれ、書川?
「…………」
あ、こっち来てくれた。
「……何?」
「え、あ、えーと……ご、ごめん! オレがじっと見ちゃってたから、だよね。……あ、あの……本、返却しに来たの……?」
こくり、書川がうなずく。
「あ! な、なに借りてたのか見てもいい……かな」
「……いいけど」
「ありかとう! えーと……『ラクガキ・マスター』と……『きまぐれロボット』! ――これ、オレも読んだことあるよ! これと違って緑っぽくて、えーと……小さい人がロボット組み立ててるみたいな表紙の――」
「あらゐけいいちのやつ……!」
なんとなく書川のテンションが上がったような。
……あれ? 書川、もしかしてオレが読んだバージョンも一回読んだことあるのかな。
「読むの二回目?」
「……あらゐけいいちの表紙のやつとなんか違うのかなって……本棚見てたら思ったから」
「そうなんだ」
……どんな違いがあったんだろう。表紙と大きさは分かるけど……うーん、子供用じゃないから、ふりがなが振ってないとかかな? 内容が違ってるとかは……そんなことあったりするのかなあ。
「……書川ってマンガ好きなの?」
「…………」
……はかりかねてる?
「ええと……ビブリオバトルで紹介してた『FLIP-FLAP』もマンガだったし、あらゐけいいちさんも漫画家でしょ? ……オレね、あらゐけいいちさんの描いた『日常』ってマンガ――転校する前、だいちゃん……親戚の家で読ませてもらった! ……あ、あの……だから、書川はマンガ好きなのかなって」
「……『日常』?」
鳩が豆鉄砲を食らう……ってこういう顔のことだっけ?
「もしかして好き?」
「全巻ある。『ヘルベチカスタンダード』と『CITY』もある」
「ええと……同じ人が描いてるの?」
こくり。
「そっか、あらゐけいいちさん好きなんだ」
「あらゐけいいちの……絵とギャグと、……全部好き」
あんなに説明できる書川がゴイリョク無くすくらい――表情もちょっと嬉しそう。
「えへへ、そっかー」
……あ、ちょっと恥ずかしそう。ふふ。
「し……『CITY』も面白いから読んで、絶対読んで。4巻すごかったから、4巻からでも――いや、今度持ってくる。ビブリオバトル、次も来るでしょ」
そうだ。……発表、間に合うかな。
「あのさ、書川――」
「……何?」
「オレ、今まですごく本読んできたわけじゃないから……今ね、面白い本がないか毎日探してるんだけど、がんばっても一日一冊読めるかどうかって感じで……つまらないわけじゃないんだけど、なんかしっくり来なくて」
あ、つい……。書川、多分こういう話されると困っちゃうよね?
「……今までに読んだやつでいいのに。さっき話してた『きまぐれロボット』とか『日常』とか……小さいとき読んだ絵本とか。……面白かったやつなら、なんでもいいのに」
…………。
「……それ、言えない顔だと思うんだけど。怒られてる時の妹みたい」
書川、妹いるんだ。……じゃなくて。
「……そんなにコドモっぽい顔してる?」
「してる。……本当はなんかあるんでしょ」
「………………た、たとえば……たとえばだけど、もし……オレが女の子の好きそうな本持ってきたりしたら、ヘンとかおかしいって思われないかな……とか」
あ、なんかムッとさせちゃった……。
「別に誰もおかしいとか思わないし。……もし本がヘンで面白くても、本庄は別におかしくないと思う。……自分が面白かった本持ってきて笑われる所だったら俺、来たくないし」
たしかにそうだ。書川が真剣に一生懸命ビブリオバトルやれるの、きっとそのおかげだと思う。……なんとなく。
「……ほ、ほんとうは一冊、あるんだけど……」
「それにして」
やっぱりちょっと勇気が出なくて――と、言いかけた瞬間、カンパツ入れず。
……はっきりそう言われたほうが、今はありがたいかも。
「……うん。オレ、がんばってみる。ありがとう、書川」
「別に、何にするのか気になるだけ」
「えへへ……そっか」
★参考リンク
10歳までに読みたい世界名作『怪盗アルセーヌ・ルパン』 | 学研出版サイト
https://hon.gakken.jp/book/1020419000
ラクガキ・マスター | 株式会社美術出版社|アートを社会に実装させる
https://bijutsu.press/books/2341/
「きまぐれロボット」星新一 [角川文庫] - KADOKAWA
https://www.kadokawa.co.jp/product/200510000014/
きまぐれロボット | 日本の名作 | 本 | 角川つばさ文庫
https://tsubasabunko.jp/product/nihon_meisaku/321307000250.html
「日常 (1)」あらゐけいいち [角川コミックス・エース] - KADOKAWA
https://www.kadokawa.co.jp/product/200705000003/
「Helvetica Standard」あらゐけいいち [角川コミックス・エース] - KADOKAWA
https://www.kadokawa.co.jp/product/201105000121/
『CITY(1)』(あらゐ けいいち)|講談社コミックプラス
https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000018904
あらゐけいいちはいいぞ(筆者の強い思想)





