自国を愛する国
ぜひ最後まで読んでいってください。
注意!
ひとが死ぬような描写があるよ。
自転車が喋るけど気にしないで!
平原を一人の人間が悠々と灰色自転車をこいでいる。
肩まで伸びた黒い髪をなびかせて、ゆったりと走っている。
青いオーバーオールを着ているが、少し土埃がついていた。
腰のポケットには護身用の銃器があり、澄んだ空の太陽の光を反射している。
リアラックには大きなカバンが紐でくくりつけられていて、そこに食料やら、水やら、テントやらが無尽蔵にささっている。
自転車が運転手に言った。
「ねえ、そろそろリュック片付けない?これじゃあ入るもんも入らないよ。メル。」
メルと呼ばれた運転手はいった。
「別にいいでしょ。シドだって軽いほうが助かるでしょ。」
シドと呼ばれた自転車は、
「そうだけどさ。身だしなみを整えたほうがなんかいいじゃん。」
「なんかって?」
「なんかはなんかだよ。なんか。」
「じゃあそのなんかはなに?」
「そなのなんかは…」
そんなくだらない会話をしながら走っていたとき。
シドが急に叫んだ。
「ねぇ。城壁が見えるよ!」
「え?どこ?」
「ほらあそこ!」
「ねぇ、自転車より人のほうが視力悪いのわかってていってるよね。」
「ごめんごめん。」
「あ、でも見えてきた。」
「でしょ?」
そこには大きな円形の城壁が見える。
「そういえばどういう国なの?メル。」
「んーと。商人によれば「自国を愛する国」だって。」
城壁前に着くと門番に言った。
「すいません。観光と食料調達などの目的で入国したいです。」
門番は少し柔らかな口調で、
「わかりました。滞在期間を教えてください。」
「特に決めてませんが、三日後には出国すると思います。」
「では、三日間で登録しておきますね。」
シドが明るめに、
「ねぇ、この国は「自国を愛する国」と言われているらしいけどどうなの?」
門番はやや困ったように、言った。
「うーん。旅人や商人にはよく言われるんだけど、そんなにかなぁ?」
「まあ、自分たちのことって案外わかんないですよね。さ、行くよシド。」
「質問に答えられず申し訳ありません。それでは我が国をお楽しみください。」
メルとシドは入った瞬間すこし、いや、ものすごく違和感を感じた。
「めちゃくちゃキレイだね…」
「めちゃくちゃキレイだよ…」
道にはホコリや落ち葉ゴミなどは一切落ちておらず、ピカピカに磨かれている。
家や壁なども同様に、新品のようにきれいだった。
「わあ!みてメル!道が揃えられていて走りやすい!」
「おまけに缶や瓶もない!」
「自国を愛するってこういうことだったんだね。わかりにくいなぁ。」
「比喩っていうんだよそういうの。」
国の中を宿探しも兼ねて歩き回っていたが、どこもかしこも汚れや傷一つもない。
まさに国民が自国を愛しているからだろう。
やがて夜になると、見つけた宿にチェックインした。
すると受付の人が
「どうでしたか?旅人さん。私達の国は。」
「うーん。きれいでしたね、驚くほど。」
「そうでしょ、そうでしょ!いつも気を使っているんですよ!」
「ねえ!あの整備された道はどうやって作ったの?!」
「あれは国をきれいにするお礼として、国が作っているんです。」
「政府が整備しているってこと?」
「いえ、国自体が整備しているのです。」
「国自体?」
「まぁ、こまかいとこは明日にしよう。シドも疲れたでしょ。」
そして部屋に入ったメルはシドを立てかけて、軽い軽食を食べて、シャワーを浴びてから、
ふかふかのベットで寝た。
やっぱり部屋はとても綺麗だった。
次の日、寝心地が良すぎて朝を寝過ごした一人と一台は「国の専門家」と呼ばれる人の家に向かった。
「ごめんくださーい。」
「はーい。どなたでしょうか?って旅人さんじゃないか、今朝新聞で見たよ。で、わしに何かようかね?まあ大体見当はつくがな。」
「思っている通り、国について少し教えてほしくて。」
シドが口を挟み、
「おじさんすごいね!超能力者かなんか?」
「………。お時間よろしいでしょうか。」
「いいぞ。さあ、あがったあがった。あ、でも少しスペースが足りないから自転車はもちこめないぞ。」
「わかりました。シドはここにいてね。それじゃあ、お邪魔します。」
「え?ちょっと!置いてけぼり?!」
資料の山で埋め尽くされた少し狭い部屋の椅子によっこらせっと座って老人は訪ねました。
「まず、この国は大体見てきたかね?」
「はい、とても綺麗でした。」
「それには理由があってだな…。いやまずは建国の話からにしよう。」
ご先祖様は大人数で旅をしながら永住する場所を探していたんじゃ。
そしてここを見つけた。
最初は何でもないただの平原だと思っていたそうじゃ。
じゃが、ある時一人の若者がこの国に意思があると言い出したんだ。
みんな疑った。でもそれを認識してから、不思議とその平原に石があるように感じたそうじゃ。
そこに国を作ろうとした。
あるものが面白がって、まだ国になっていない平原に言ったそうじゃ。
「平原よ、ここを国にしたい。その国に一生住み、国をきれいにする、から国になってほしい。」
そのとき何にもない平原から国が湧いたそうじゃ。──それが真偽かはまだわかっていないがな。
それいらい、わしらは国をきれいにし続け、そして国から整えられた国をうけとってるんじゃよ。
「面白いですね。今日はありがとうございました。」
「またいつでもこの国においでなさい。この国とわしらが歓迎するぞ。」
メルはおじいさんの見送りを受け取りながら、居眠りしていたシドを起こし、出発しました。
「ねえ、どんな話だったの?」
「えーっと、この国はね…」
話を思い出しながら、喋り、そして食料を買い込んで宿屋に戻り、昨日と同じことをして寝ました。
次の日、三日目。
観光と食料調達を済ましたメルとシドは国を出ようとしていました。
そこに商人がいました。
「やぁ。君は旅人かい?」
「そうですけど…」
「この国は便利だね。ポイ捨てしてもすぐに拾われる。昨日だってそこの裏路地に空き缶を捨てたけど、もうないだろう?」
「はい。そうですね。」
「この空き缶だって、そこら辺の裏路地に捨てておけば…」
そういって周りを確認し、裏路地にポイ捨てしました。
「おっちゃん。自転車が言うことじゃないけど、ポイ捨ては良くないと思うよ?」
そうシドが言ったときでした。
「見つけたぞ!」
少し遠くから大きな声が聞こえました。警察の声でした。
警察は商人に詰め寄り、
「貴様だな?連続国汚染事件の犯人は。」
「え?いや…その…」
「言い逃れはできないぞ。証拠はあるんだ。」
「…すいません…私です。」
「刑法第一条。国を汚染した者は国外追放または無期懲役をかす!そしてこの逮捕状に基づき、貴様を国外追放とする!」
「え?え?」
「……」
「……」
困惑する商人が連れてかれる様を一人と一台は黙って見届けました。
「はい。出国手続きは完了しました。旅人さん、また来てくださいね。」
「もし気が向いたりしたらそうします。」
「そういって、いったことないけどねー」
メルはシドに「しっ言わないの!」と小声で言い、出国しました。
「おや、さっきの旅人さんじゃないか。」
出国後、さっきの警察に出会いました。
「すいません。どうしても聞きたいことがあるんですが、いいですか?」
「いいですよ。」
「なぜ国外追放なんですか?あんなに怒るなら死刑でいいのに。」
「いや、死刑にしたよ。」
「え?」
「あそこに建物があるだろ?あそこが処刑所だ。」
「なぜあそこに?」
警察は少し笑い、当たり前だろというように答えました。
「国を汚したくないだろ?」
国とは意志であり。
意志とは人である。
──その意志と成った人は国を作るのである。




