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東海道中珍栗毛  作者: なごやかたろう
東海道中珍栗毛
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~江戸到着、そして夢のつづき~

品川を出て間もなく、藤兵衛の隣から、 「ぐおぉ……すぴぃ……」と、地鳴りのような音が聞こえてきた。

(……本気で寝とる)

あれだけ「大丈夫」と言っていた弥次さんは、 まるで旅の疲れをすべて吐き出すかのように、座席にもたれて熟睡していた。

(……いや、気になる。これは気になるぞ)

藤兵衛は、そわそわと落ち着かない。 江戸に着いたら起きるのか、それともこのまま夢の中を旅し続けるのか。

やがて、車内にアナウンスが響いた。

「まもなく終点、江戸~、江戸~。お降りの方はお忘れ物のないようご注意ください」

藤兵衛は、そっと荷物をまとめ、通路に立った。 弥次さんは、まだ寝ている。 (……起こすべきか? いや、でも……)

迷った末に、藤兵衛はそっとその場を離れた。 ドアの近くで振り返ると、弥次さんは口を半開きにして、 「ういろう……焼売……」と寝言をつぶやいていた。

(……夢の中でも食ってるのか)

やがて、鴨嘴は江戸駅に滑り込み、ドアが開いた。 人々が降りていく中、藤兵衛は最後まで見守っていたが、 弥次さんはぴくりとも動かない。

そして――

「ドアが閉まります。ご注意ください」

鴨嘴は、弥次さんを乗せたまま、静かに発車した。 その姿は、まるで夢の続きを見に行くかのように、 鉄の嘴を前に向けて、車庫の方角へと消えていった。

(……あれって、車庫に行くんだよな。知らねぇぞ?)

藤兵衛は、肩をすくめて笑った。

「ま、いいか」

そうつぶやいて、江戸の町に向かって歩き出した。 夕暮れの空には、ほんのりと茜色が差し、 どこかで猫が鳴いていた。

風が吹く。 どこかで、また新しい珍道中が始まるような、そんな気配がした。

― 終 ―

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