第21話「これって教会デート?!」
「芸術家の心には芸術でしか届かない?どういう意味?」
俺の発言にリアナさんが驚いて聞き返した。
「ほら、残滓は『大人になった息子』を認識できてないんだろ? だったら、父親が一番愛していた『芸術』を通じて、成長した息子の姿を見せてやるんだよ!」
リアナさんが一瞬ぽかんとしたあと、にっこりと笑った。
「ふふっ、悠真さんらしいわね。でも...悪くないと思う。いいアイデアよ!」
俺はにっこりと笑って、褒めてくれたリアナさんの返事に嬉しくなった。
俺は褒められて嬉しくなり、調子に乗って続けた。
「画材は集めますか?」
「同じ木炭絵なら木炭は鍛冶屋でも安く売ってくれると思うけど...問題は紙ね。この町なら教会が取り扱っているはず。でも、できれば行きたくないな。ちょっと苦手で」
「へえ~、話を聞く限りだと職業的には似ていると思ってたけど」
リアナさんは少し遠くを見るように目を細めた。
「そうね。似てるからこそ、違うところが目立つのかも」
確かに、リアナさんはヘカテーの神殿の巫女様にもなったから、王様が敵対するために作った教会と仲良くはずがない。
「テオさんを説得するにもちょっと苦労しそうですね。父の死をきっかけに絵から離れたみたいですし」
彼女は宿の主人との会話で名前を確認していたらしい。
「テオさんね。あの残滓の記憶によると、テオさんはこの町の教会で勉強していたはずだ」
その時、俺は気づいた。俺も残滓と同じ。小さくて可愛かった子供が、あの宿の主人に育っていたなんて。
「教会に行くついでに話を聞きましょうか」
「仕方ないわね…。それならもうちょっと町娘らしい服に着替えてくるわ。」
そう言ってリアナさんと一緒に泊まっている宿の方に戻って行った。俺は外で待つことにした。やっぱりタンスの中でも気まずいと思った。でも、なんだかデートの待ち合わせで彼女を待っている気分だった。
数分後、ドアが開いてリアナさんが出てきた。
…やっぱり何を着ても美人だ。
髪は二つに三つ編みにして、耳飾り以外のアクセサリー全部外していた。ふわふわ袖の白いシャツに黒いスカート、その上に白いエプロン。いつもの冒険者姿とは全く違う雰囲気なのに、めちゃくちゃ可愛い。
「似合ってるな」
素直に褒めた瞬間、
「え?!」
リアナさんがびっくりしたように声を上げた。
(まずかった?これは『お前ごときは庶民の服がお似合い』って感じに受けられた?)
「す、すごくかわいいって意味だよ」
なんて恥ずかしい事を言い出した。
言った瞬間、リアナさんの顔が隠し切れない動揺が広がってた。
「あ、ありがとう…。」
言うなり、彼女の顔がみるみる赤くなった。俺も顔があれば、今頃真っ赤になってただろう。
(恥ずかしくって死にそう…いや、恥ずかしくって生き返れない!リアナさんの顔が赤いのは怒りじゃなくって、照れていると思うけど...そう思うのが自惚れなの?なんか死んでいるから自分と他人の感情に鈍くなっている気がする!)
「じ、じゃ、もう行きましょう!」
顔が赤いまま、俺の方に目を向けずに強めな声で言い出した。
「そ、そうね!いざ、教会へ!」
俺も勢いよく返した。
教会は意外と町外れにあり、近くに墓地があるせいか少し薄暗い雰囲気だった。建物自体は洋画にでも出そうな伝統的な形をしていた。異世界なのに、知ってる世界と似ているところが多くてびっくりした。共通するところが多いのが偶然なのか何か繋がりがあるのか不思議に思えた。
俺とリアナさんが教会のドアの前に立ってたら、彼女は大きなノッカーを掴んだ。一瞬動きを止めて深く息を吐き、トントンと叩いた。
すぐにドアが開き、中からシスターが出てきた。俺が知ってるシスターの服装と大分違ってた。どっちかっというとリアナさんの霊能力者服に近いデザインだった。ヴェールで顔を隠しているが、鋭い視線を感じた。
「この教会へようこそ」
厳しいだが清らかな声でシスターが言った。
リアナさんが自己紹介をしようと口を開いたその瞬間、シスターが先んじて言った。
「珍しい二人組ですね」
その言葉と視線で、彼女は俺が見えているのだと疑う余地はなかった。
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