第20話「親の形見と、成長しすぎた息子」
遅くなってごめん!
外から『耳を澄ませていた』(いや、集中して)俺には、宿の主人が自分は芸術家の息子だとはっきり強調したのが聞こえた。だが、俺が見た『夢』では、生き残る要素はなかったはずだ。
「残滓が残した記憶が途切れたあと、何が起こったんだ...」
答えてくれる相手なんていないのに、つい独り言が漏れた。
宿の方では、リアナさんが続けて尋ねていた。
「まるで現実のように、美しく描かれている絵ですね。ご友人の心を動かしたのも納得できます。」
「ええ、描いたオヤジは、本当に腕が良くてね~ できれば私にも跡を継いでほしかったんでしょうが…どうにも、あの人の絵と比べると物足りなく感じてしまって」
宿の主人は誇らしげに、でもどこか寂しっげに語った。
「私がまだ子供の時、オヤジは火事から私を救い出すために亡くなったんです…建物に飛び込んでいったオヤジを心配して、あの時、泊まってた宿の主人は建物の中に入ってくれました。ドアの近くの廊下で私を見つけてもらえたんですが…オヤジの方は助けられなかった。」
「…それは…本当にお気の毒のでしたね。」
リアナさんが静かに応じた。
「その代わりに、その宿のおじさんは私を育ててくれた。十年前にはその娘さんとも結婚して、今は幸せに暮らしています。ですが、オヤジが遺してくれた芸術は、私にとって何よりの宝物でして...この宿を開いた記念に、義父があの絵を贈ってくれたんです...成人するまで、大切に保管してくれていたそうで」
あの木炭絵を大事にしていた理由は、値段ではなく、個人的な想いによるものだったのか。
「そう…親の形見なら、大切にしたくなる気持ち、わかるわ」
彼女のかすかな声が、外にいる俺にも届いた。
「それでは、他の作品もご覧になりますか?」
「ええ、ぜひ。」
丁重に答えたリアナさんを、宿の主人が案内していた。どうやら宿泊客も多いらしく、見せられる部屋はそれほど多くなかったようで、見学はすぐに終わった。
やがて彼女は礼儀正しく別れを告げ、宿の外へ出てきた。
そして俺の方を見るなり、にやりと笑った。
「ちゃんと聞こえた?」
「まあな。…で、残滓は祓えたのか?」
「いいえ、無念が消えていなかったの。息子さんは生きているのに…残滓は大人の姿になった息子さんを認知できなかったみたい。」
リアナさんが残念そうに言った。
「なるほど、そりゃ厄介だ」
「ええ、だから、悠真さんと相談したかったの。次の手をどう動くべきかをね。あの残滓のこと、一番よく知っているのは悠真さんでしょう?頼りにしているわ!」
血が通っていれば、頬が赤くなっていただろう。本当に可愛い顔で頼んできた。
「いや、集中!今はそれどころじゃない!」
俺が自分に言い聞かせた。
「魂もない、無念で残ってしまった残滓は時の流れを理解させることはできるか?いや、残滓の無念って記憶と気持ちの欠片みたいなもの。知性的に考える方はダメ。」
期待に満ちた目でリアナさんは俺の言葉を待っていた。それに応えるか不安だけど、それでも思い付いた作戦を伝えてみた。
「芸術家の心は芸術でしか届かない!」
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21話は明日に向かって頑張ります!
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