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夢の島再開発計画  作者: 若松ユウ
第二部「開園式」
10/10

#009「蛇と花」

――老人の忠告を無視した長男と二男は、沼の主にケロリと呑まれてしまったが、賢明で思慮深い末娘は忠告に従い、無事、病気の母に薬草を持ち帰ったとさ。

  *

助役「嫁に行かないなら、もう一仕事してもらおうかな。老朽化した市営団地を建て替える件で、ちょいとばかし面倒なことになっているんだ」

吉田「(セクハラがゼクハラになったことは、不問に付して置こう。まだ、利用価値があるうちは。)その件ですけど、超高層の高級マンションではなく、低廉な戸建て住宅を量産すべきだと考えます。周囲には低所得者層が多いので、ターゲットを、そのニーズに合わせるべきかと」

助役「しかし、それでは儲からないだろう?」

吉田「いつ完売するか判らない物件を、捕らぬ狸の皮算用で試算するより、よほど賢明な策定かと」

助役「サブプライムローンみたいにならないかね?」

吉田「ご心配なく」

吉田、タブレット端末を操作し、助役に見せる。

吉田「こちらの企画書をご覧ください」

助役「一ページの要約だけか? 裏付けになるデータや資料は?」

吉田「ございます。が、こちらの案を採用されるとご決断されてから、お見せいたします。今から三分計りますので、早急にご確認の上、ご英断ください。先伸ばしにされるのであれば、この話は無かったことにしてください。スタート」

助役「急いては事を仕損じるというのに」

吉田「善は急げとも申します。――残り三十秒」

助役「あせらせるんじゃない」

吉田「五、四、三、二、一。ハイ、時間切れです。テキストを削除しますね」

助役「待ちなさい。わかった、採用しよう!」

吉田「そんな大声で宣言しなくても宜しいですよ、助役」

助役「やれやれ。(退職も懐柔も効かないとは、なんて恐ろしい奴だ。謎の怪死事件から生き残っただけのことはある)」

  *

助役「しらさぎ自然公園と銘打ちながら、肝心要の白鷺の姿が見えないね」

吉田「そんなことありませんよ。ホラ、あちらの見当に」

吉田、指差す。

助役「アリャー、本当だ。目が良いんだね」

吉田「こちらに向かってきますね。何か挟んでるみたいですよ」

助役「オヤオヤ。白鷺くんも、我々の祝福に駆けつけたのかねぇ」

白鷺、脚に持っていた物を助役の真上で放す。

助役「何だ? ウワッ、青大将だ」

白鷺、吉田の前に降り立ち、嘴に銜えた物を差し出す。

吉田「まぁ、綺麗な山百合ね。ありがとう、白鷺ちゃん」

白鷺、飛び立つ。

助役「人騒がせな白鷺だ。今度同じ真似をしたら、焼き鳥にして食べてやるからな!」

吉田「あんまり怒鳴られないほうが宜しいのでは? どこで市民の皆さんがご覧になってるか分かりませんよ」

助役「あぁ、それもそうだな。ゴホン。取り乱しました。どうも、お見苦しいところを」

吉田「それでは、市役所に戻りましょう。跡地の活用方法も決まったことですし、仕事は、山のようにありますからね」

助役「そうだね。さっさと片付けないといけない。(トホホ。このまま直帰しようかと思っていたんだが、そうもいかなくなってしまった)」

  *

オーナー「あの女性が居る限り、裏野市からは手を引いた方が良さそうですね。それでは、今度はアナタの街にお邪魔しましょうかねぇ? ナイトパレードは、これからです。フフ、フッフッフ」


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