十一話
「魔王様ーーーーーーー!!!」
「お帰りなさいませユズキ様」
「(・・・エルンストさん・・・美形の顔が崩れてる・・・)」
ラースさんに付き添われ城に帰ってくると・・・勿論今度は正門から帰った
ちなみにグラニールは私とラースさんを下して空に飛んで行った
巨大な門前にエルンストさんとユリウスさんが立っており対照的に出迎えられた
「魔王様!!ワタシ、本当に心配いたしました!!!勿論!貴方様を害す事の出来る存在が魔国にいるわけありませんが、心配で心配で!!!」
「ユズキ様、次にお出かけになる際は、一言で構いませんので仰ってからお願いいたします」
「ごめんなさい。騒ぎになるかなぁって途中思ったのは思ったのですが、ちょっと衝動的に欲しいものがあって」
「左様でしたか、欲しいものというのはラースの持っている花ですか?」
「えぇ。
エルンストさん、心配させてごめんなさい。次からはキチンと伝えてから行きますから」
「そうして下さい・・・出来れば、お出かけの際はワタシも付いていかせてくださいまし」
「あははー」
日本人のスキル笑ってごまかすを実行した
だってこの先魔王として生きるなら間違いなく、一人の時間が欲しくなるからだ
今は数十人しかいない城に暮らす人も、私(魔王)が現れた事で増やしていくそうだ
テレビや映画、漫画の見過ぎかもしれないがそのうち侍女とかも沢山現れるのだろう
プライバシーが無くなりそうで非常に嫌なのだが、そうも言っていられない立場だというのは十二分に理解できる
此処にいるというのは、それだけその事に対しての義務が生じると思う
私が此処にいるという事が大事で、王としての人生を受け入れるという事は傅かれる事も、命令する事もそれは私の義務だし、彼等は傅く事や命令される事が義務なのだ
勿論、命令する事になれる気も、傅かれて当然と思う事も無いと言い切れるしそう在りたいと思う
「陛下、中へ入りましょうか?」
「えぇ。何時までも外にいるのも迷惑だしね
あぁ、ヒューブさん、ちょっと頼まれてほしいのだけど」
傅いていた侍官のヒューブさんが何でしょうか?と頭を上げる
「この花を、鉢に植えてもらって良いかしら?後で部屋に飾りたいの」
「承知いたしました。鉢に植え侍女に預けます」
「よろしくね」
この城に庭師はいない
中庭もあるが雑草が伸びすぎないよう少し刈られるだけで殆ど放置状態だ
なんでも、前王がそう言った事に興味が全くなかったからなんだとか
勉強が落ち着いて余裕が生まれたら自分で弄ってみようと思っている
自室ではなく応接間の様な場所に着く
この部屋はかつて孤独を好んだ魔王が一人食事をするために用意した部屋らしい
私は反対に一人での食事は嫌だから、例が無いそうだが食堂で食べる
「あの花があったという事は、陛下はウェールズに行かれたのですか?」
侍女のアリスさんに紅茶を入れてもらい一息つく
「あの場所はウェールズって言うんですか?」
「えぇ、そうですよ」
「ウェールズは八代前の魔王が愛した場所として魔国では知られています
陛下より以前の魔王陛下19人それぞれにお気に入りの場所があったそうです
八代前の魔王は印象的な方でしたからより広く知られていますね」
「そうなんですか・・・他にはどんな魔王がいたのですか?八代前は綺麗なものを好まれたとか」
「例えば、先代魔王は残虐な方で同胞殺しは滅多にされませんでしたが、侵入した人間族には容赦なかったですね」
「私が直接会ったことのある魔王様は三代前までだが・・・二代前の魔王様は孤独を好み群れるのを厭うていらっしゃった。
三代前の魔王様は聖龍族が気に食わなかったらしく、度々軍勢を率いて聖龍の国に乗り込んでいらっしゃった」
「ワタシは八代前の魔王様までしか存じ上げませんが、そう・・・印象的だったのは八代前より七代前の魔王様でしたね。
捨てられた人間の赤子を御自身の手でお育てになっておりました
ユズキ様と同じく、魔王様の中では稀有な女性でした・・・母性というものが現れたのでしょう」
聞けば聞くほど、歴代の魔王というのは面白い人が多いようだ
勿論、残虐とか聖龍の国に乗り込んだとかは少し魔族って・・・と思ったが