3話 いざ、学校へ
3 いざ、学校へ
夕飯を食べた後自分の部屋に戻り、ベットに倒れこむように寝ころんだ。ベットの横にあった大きなペンギンのぬいぐるみを抱きかかえ、ぬいぐみを上に上げた。ペンギンを見ながら、今日、一日を振り返って見た。
起きたら記憶がなく、父と母と兄、3人が病院まで向かいに来てた。そして私の名前は、ペー太郎という変わった名前。それも、その名は兄が付けたらしく、その話題をあやふやにされた感じがした。謎といえば、この部屋と家の中にあるペンギングッズとポケットにあった小さな紙。ペンギンは、私がただペンギン好きってことなのか、それとも、他に理由があるのか。小さい紙も材料が書いてあるだけで、何の事だかさっぱり。謎が深まる一方で、何にも解決策が思いつかない。
(これから私、どうなっていくんだろう…)
もやもやと考えてるうちに、寝てしまった。
次の日、私は兄の車に乗り、自分の通っていた高校に登校した。
「家にいるのはあまり体によくないから、学校に行って来なさい。」
と父は悲しげな顔して言った。後で知った事だが、家で療養してれば一緒にトランプしたり、DVD見たり、元気になったら遊園地に遊びに行こうという計画が母にばれ、説得されたらしい。母の行為に感謝した。
兄に連れられ、職員室に向かった。あらかじめ、私の事は話してあるらしい。職員室に入ると、椅子から立ち上がり、眼鏡をかけた男性がこちらに来た。
「ペー太郎さんこんにちは。私はあなたのクラスの担任、八鹿です。よろしくお願いします。」
ペンだこの手を差し伸べて来た。
「よっよろしくお願いします。」
握手してみると、その手は意外にも冷たかった。
「じゃあ教室案内するから、着いて来てね。」
職員室で兄と別れ、八鹿先生と一緒に教室に向かった。教室入ったらなんて挨拶しようかと頭の中で、グルグルと考えているうちに、教室に着いてしまっていた。軽く深呼吸して、教室に入った。教室の中は思ったより静かで、全員席に着いていた。その静かな空間の中で八鹿先生は、クラスの生徒に言った。
「皆も聞いている通りだ。後はよろしく。」
と、一言言って、教室から出て行った。
(…………ちょっと待って。こんな真正面で置き去りにされて、わっ私はどうすればいいんだ。)
心の中の言葉が、口に出してしまいそうなぐらい衝撃的だった。
一人がボソボソっと何かを言うと、他の人もボソボソと話始めた。私はから見れば、いい雰囲気ではない。どうすればいいのか全くわからない。
”パン”と手を叩く音が、教室に鳴り響いた。
「さぁ、始めようか。」
突然一番後ろにいた男子が、絶妙なタイミングで発した。びっくりして一歩下がると、前の席に座っていた少女が私の腕を掴み、後ろの席まで引っ張っていった。
「ここに座って。」
さっき、発した少年の隣の席だった。少年は、右手に丸めたノートを持って、
「さてさて、これからペー太郎に自己紹介タイムを行いたいと思います!」
と彼の声の直後にクラッカーが鳴り、小さな垂れ幕が引っ張られた。そこには“ペー太郎お帰り!”と書いてあった。すると、丸めたノートを持った少年が”ポンポン”と自分の右肩を叩いた。
「俺、清水進一。おまえとは、小学校からのつきあいだ。よろしく。」
と手を差し伸べてきた。ぎこちない握手をした後、その隣に先程、私の手を引いてくれた少女がいた。
「私はペーちゃんの友達、桜井桃。これからもよろしくね。」
優しく微笑んだ。キョトンとしてると、進一と桃の後ろにもう一人いた。進一がその彼の肩を組み、前屈みになった。
「こいつは俺の友達、池田智雅。口数少ない奴だけど、良い奴だぜ。」
「よろしく。」
智雅は、軽くお辞儀した。
智雅に続いて次々と、クラスメイトと挨拶を交わし、握手した。クラス全員に挨拶し終えると、八鹿先生が教室を覗き込んだ。
「自己紹介は、終わったかな?」
クラス全員が一斉に、”OKでーす”と答えた。それを聞き八鹿先生は教室に入り、教卓に立った。
「自己紹介が終わったみたいだし、そろそろ授業始めますよ。」
クラスの出席を取り、授業を始めた。
休み時間になり、進一と桃と智雅がペー太郎の席に来た。
「よ。授業大丈夫だったか?」
「えっと、清水君だよね。なんとか、大丈夫だよ。」
「おい、水くせーよ。進一でいいよ。なぁ!」
桃と智雅の方を向いた。
「そうだよ。気にせず下の名前で呼んで。その方が、私たちも嬉しいから。」
桃が微笑んで言うと、隣で、智雅も頷いていた。
「じゃあ、下の名前で、呼ぶね。」
にっこり笑った。
「で、先生にも頼まれたんだが、ペー太郎を校内案内しろとのことだ。」
「簡単にだけど、いいかな?」
「僕も…案内したい所いっぱい、ある。」
3人は必死に、訴えかけた。
「えっと、お願いします。」
深々とお辞儀した。3人はガッツポーズし、ペー太郎を連れて廊下に走りだした。進一は先頭に、桃がペー太郎の腕を掴み、智雅はペー太郎の横にいた。
「さっそく行こうぜ。まず、どこから行く?」
「保健室からがいいと思んだけど!」
「確かに。いいアイディア。」
3人は息ぴったりの会話を、保健室着くまで話し続けた。
保健室着いてみると、保健の先生はいなかった。中に入ると、保健室の独特な匂いがした。
桃はペー太郎の方を向き、説明し始めた。
「ここは保健室。ここの保健の先生って、けっこう出張が多くていない時が多いの。だから、大抵の怪我は、皆、誰か付き添って手当てしてるの。因みに、ぺーちゃんはここの常連さんで、いつも私が手当てしてたのよ。この前も転んで、膝を擦りむいてたしね。」
桃は、思い出し笑いをした。ふと膝を見てみると、まだ完治してない擦り傷が確かにあった。これも、桃が手当てしてくれたのだろう。
「桃。覚えてないのにこんな事言うのも何なんだけど、手当てしてくれて、ありがとう。」
驚いたような顔をして、桃は微笑んだ。
「どういたしまして。ぺーちゃん、怪我したら私に言ってね。」
と言った後会話を切るように、進一がペー太郎の腕を掴んで、また、走り出した。
「じゃあ、次行くよ。今度は、体育館に行くよ。」
100mを全速力で走るような早さで走った。桃と智雅は、進一に不意を突かれ、後方の方にいた。
体育館に着いた時は、足が棒になったようだった。
「ここが体育館。体育の授業とかで、使う事が多いだろうぜ。ほら、体育館からグラウンドとテニスコート見えるだろう。お前テニス部何だから、覚えとけよ。あのグラウンドで、俺と智雅はサッカーの練習してるんだ。俺って、サッカーかなり上手いぜ。この前なんか智雅の絶妙なパスを取り、華麗にシュートしてゴールしたんだぞ。」
「それ、間違い。俺のパスに驚いて、ずっこけた時に足に当たったボールが、たまたまゴールしただけだ。」
進一の後ろからひょっこり、智雅が出てきた。桃も一緒だ。
「智雅、桃。あれっ、俺、そんなに格好悪いシュートしたっけ?」
「進一、頭打って延びてたから、忘れたんじゃない。」
痛い所を、智雅に突っ込まれた。進一は、少し落ち込んだ。
「それより、進一ずるいよ。ぺーちゃん独り占めにするなんて。」
「わり―、わりー。つい、本気が出てしまった。」
「じゃあ、次。僕が案内する。」
智雅は、スタスタとペー太郎の前に歩きだした。
着いたのは、大きな広場だった。
「ぺー、ここは学食。あそこの食券を買って、カウンターのおばちゃんに渡すんだよ。特に、日替わりランチが一番安くてお勧めだよ。パン買う場合は、奥に購買所があるから、早めに行った方がいいよ。僕のお勧めは、ヤミ―!つき焼きそばパン。」
「お勧めするなら、デラックス唐揚げパンだろ。大きくて、安いじゃんかよ。」
「そうかな。私なら、生クリームとクリームとチョコがサンドされてる、ミラクルサンドだよ。」
3人は、お互いのお勧めの長所を言い合った。思ったよりも、変った名前が多い事がわかった。
そうこうしてるうちに、予鈴のチャイムがなった。
「やばい。予鈴だ。」
「ダッシュで戻らないと、間に合わないよ。」
「ぎりぎりだ。」
「早く戻って、授業受けなきゃだね。」
4人は廊下を全速力で、走った。
放課後、進一達に遊びに行こうと誘われたが、兄が迎えに来てたので断った。家に着き、部屋で考え事していた。夜空を眺めていると、ドアを叩く音がした。
「誰。」
「お兄ちゃん何だけど、部屋に入っていいか。」
「どうぞ。」
雄治は部屋に入り、ペー太郎の横に来た。お互いに夜空見上げ、沈黙が続いた。最初に沈黙を破ったのは、雄治だった。
「綺麗だな。」
「うん。…綺麗だね。」
「学校どうだった、楽しかったか。」
「楽しかったよ。けど…」
「けど、どうした。」
「何にも覚えてないのに、多分皆、今までどうりに接してくれるのが、凄く遣り切れない気持ちでいっぱいで。何で、忘れちゃったんだろうなって何度も思ってしまったり…」
また、沈黙が少し続く。
「それは、ペー太郎が皆の事を大好きだったからさ。ペー太郎も、その気持ちを忘れなければ、今度こそ忘れたりしないよ。記憶も、一時的なものだと医者は言っていたから、大丈夫だよ。」
雄治の言葉に少し安心したような気がした。何だか、前向きに頑張ろうと思うようになった。
また2人で夜空を見ていると、下からドタドタと上がってくる音がした。バンっとドアを開け、部屋に入って来たのは父だった。
「ペー太郎、寂しかっただろう!父さんと下で遊ぼう。」
父にあごひげをジョリジョリされ、固まってしまった。その後夜中まで、父とトランプする破目になるとは、このときのペー太郎は、知る由もなかった。




