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ペー太郎  作者: しずく
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1話 前途多難

※これは、フィクションです。

推理小説ではないので、ご注意ください。

途中、BLが混じる場合もございますので、苦手な方は読まない事をお勧めします。


 

 1 前途多難


 ………………

 (ここ、どこだろう…)

 (その前に、私は誰だろう………)

 目が覚めたときに思った事。起きる前の事はさっぱりわからない。一体どうなっているんだろう?


 廊下からドタドタと騒がしい足音が響いた。

「ペー太郎!!」

女の人と男の人がドアを激しく開けた。

「ペー太郎!無事なのね。」

「ペー太郎…よかったぁ。」

 (…………………………………ちょっと待て!!私がペー太郎!この人たち、私の事ペー太郎って呼んでる。何で?ううっ何も思い出せない…)

「ペー太郎…お母さんよ!わかる?」

「ペー太郎、父の顔忘れるわけないよなぁ?!」  

 どっかの少女マンガにでてきそうなウルウルした目つきで私を見ている。

「だ…誰だかわかりません。」

 そう答えると、洪水のように泣き出した。その後ろに立っていた医者まで何故か泣いている。もらい泣きにしては、泣きすぎるほどに……父と母らしき人物は、私の為にいっぱい泣きだした。どうしようと考えていると、廊下が再び騒がしくなった。

「ペー太郎!!」

 同じ登場の仕方で、青年が入ってきた。周りから見れば、かなりの美男子だろう。その美男子は入って来た直後、私に抱きついてきた。

「ペー太郎、お兄ちゃんが向かいに来たぞ。お兄ちゃんの事がわかるよな?」

 頬をすりすりしながら、ぎゅっと抱きしめる。恥ずかしくて、少し固まってしまったが、冷静に答えた。

「あの、どちら様でしょ。」

 その言葉を聞くと、美男子は子供のように泣き始めた。

 (こんな綺麗な人が、お兄ちゃん。一体、どうなっているんだ。)

 混乱はしているけど、本来ならこういう場合、当の本人である私が泣くはずなのに、他人である大の大人が4人も泣いているので、泣くにも泣けない状態になってしまった。

一体、何がどうなってしまったんだろう………

 (いや、その前に何で私の名前ペー太郎なんだろう。仮にも、女の子なのに…)

 

 やっと気持ちの整理がついたのか父と母らしき人物は、医者と話すとの事で、別室に向かった。

 その間、私の兄らしき人物と二人きりになった。私は、一番聞きたいというか、突っ込みたいところ聞いた。

「あの。私の名前ってペー太郎って言うんですか。」

 おそるおそる聞くと、兄はにっこり笑って、

「そうだよ。お前の名前は、古吟こぎんペー太郎。俺の妹だよ。」

 満面な笑みで返された。通常の人であれば、胸キュンで倒れているだろうけど、めげずに、聞いてみた。

「でもどうして、ペー太郎という名前に…。あの、ちょっと気になって。」

「それは、俺が考えたからだよ。ペー太郎は、ペー太郎だ。」

 真剣な眼差しだった。

 私の動揺も気にせず、兄は、椅子から立ち上がり、拳をぎゅっと握りしめて、目をキラキラした。

「ペー太郎は世界中で一番可愛い妹で、勉強が少し苦手で、部活はテニス部に入ってる。特にスコートはいた姿がとてもかわいくて、あっ後、ペー太郎は、たまに母さんとお菓子を作るんだけど、いつも失敗して泣いていたな。もちろんそのお菓子はお兄ちゃんが全部食べたんだぞ。親父の奴よく怒っていたな。“ペー太郎の作ったお菓子全部食うな”ってな。それと…」

「待った!!もう十分です。ありがとうございます。」

 物足りなさそうな顔しているが、何故か、すごく恥ずかしくなったので、話を止めた。

 (兄や父、母には、愛されてる事がわかった気がするけど、何か、はぐらかされた様な気もする。)

 少し安心した様な、安心してはいけない様な、複雑な気持ちになった。

「改めて、俺は、古吟雄治こぎんゆうじ。雄治でも、お兄ちゃんでも、好きに呼んでいいから。」

 手を差し伸べられ、私は、その手を握り返した。


 その後、医者との話が終わったらしく、父と母が戻ってきた。

「生活には支障ないみたいだから、家に帰れる事になったわよ。」

「大丈夫さぁ。私達家族が、ペー太郎を助けるからなあっはっはっは!!」

 背中を叩く父に、それを見て笑う母と兄。前途多難の序章の予感がした。

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