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イレーナの後悔

聖女イレーナは数十年前の失敗を、今も忘れられずにいた。

勇者パーティに参加したが、勇者の裏切りで魔王討伐に失敗したのだ。

人生最大の汚点だ。


あれから魔王討伐にふさわしい勇者を探し求めているが、未だに出会えない。

ようやく後を託せる弟子も出来た。

聖女チェルシーという。

聖女としての能力だけでなく、聖杖を振り回し、物理的な攻撃もできる。

前回参加した魔術師ウルスラと弓士エリスは、長命なのでいまだ現役である。

パーティ再結成に必要なのは、あと勇者だけなのだ。

その勇者が一番問題なのだが。


前回の失敗の原因は、魔王の美貌に使命を忘れるような勇者だったからだ。

今度は、美しい女性を前にしても、使命を見失わない者を選ぼう。

しかし男性である以上、まったく女性に興味がないという人物は少ない。


「あなたは女性より男性が好きですか?」


と聞いて回りたい衝動にかられた。

面と向かって聞いても、不審者扱いをされ、正直に話してくれる人はいないだろう。

まだこの国では、そういう嗜好の人に厳しい。


しかし最近あるうわさを聞いた。

ラトリッジ家の嫡男レオナードが、剣の稽古に熱心だという。

父や騎士仲間と鍛錬場で稽古するだけでなく、家に帰っても剣術好きの妻と稽古をしているらしい。

それでも腕前は、今一つらしいが、その熱意が素晴らしい。

しかも鍛錬場に見学に来るご婦人には目もくれず、騎士仲間との付き合いを優先するという。

この男なら勇者になっても良いのではないか。

魔王の色香にも惑わされないのではないか。

イレーナの期待はぐんぐん膨らむ。


今度はしっかりと人物を見極めよう。

前回の失敗のせいで、イレーナの中で神の人選は、もう信用できなかった。

自分がレオナードと面会して、見極めると決めた。


レオナードと会う前に、学園で一緒だったというチェルシーにどんな人物か聞いてみる。


「熱があっても鍛錬をこなし、友人思いの方です。

あと紅茶を飲むときに、小指を立てます。」


なんだその情報は。

前半はともかく、後半は意味不明だ。

チェルシーは脳筋だ。

聞いた私が悪かった。


ひとまずレオナードに会ってみることになった。

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