第4話 強くなろう
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道中でゴブリンは見つからなかった。
会社の門の前に、健治と正樹の車が止まっている。
「ごめん、待たせた」
裕也が門の前で車から降りて、声をかける。
「さっき着いたばっかだよ」
「気になってしょうがなかったよー」
健治と京子が車から降りて言う。
「正直、裕也のことが本気で心配になってたわ、大丈夫か?」
正樹が呆れた顔で、声をかけてきた。
「ごめん、取り敢えず敷地の中にはいってくれ」
門を開け、2台の車を敷地内へ誘導する。
続いて裕也も車を敷地内に入れ、門を閉じる。
「簡単に言うと、昨日みんなに伝えた通り、モンスターが現れて、ステータスやスキルがある世界になったみたいだ」
3人の前で裕也は続ける。
「決して、冗談なんかではないよ。証拠を見せる」
台車を持ってきて、裕也はアイテムボックスの収納を見せる。
「収納」
その瞬間、台車が消えた。
「「「は???」」」
3人はものすごく高度なマジックを見せられたような顔をしている。
「台車!」
ドン!
先ほどまであった場所に台車が現れる。
「え?どういうこと?どうやったの?」
京子は何が起こったかまったく理解出来ず、困惑する。
「昨日、トラックを止めようとしたときに、ゴブリンを轢き殺した・・・多分。
で、スキルを貰った。その1つがアイテムボックスだった」
「ゴブリン・・・?」
健治も何を言ってるのか分からず、呟く。
「うん、そのリアクションは分かってる。こっち来て」
裕也は呆気にとられている3人を倉庫へ誘導する。
第一倉庫と書かれた倉庫に入ると、昨夜ゴブリンからドロップした剣と青みがかった小石を見せる。
「これ、昨日ゴブリンが消えた後に落ちてた。多分ドロップアイテムだと思う」
「ゴブリン消えるんだ。それと剣・・・初めて見た」
正樹が冷静なリアクションをする。
「俺も。でね、昨日の夜、そんなことがあった後にスキルを貰ったんだ」
「誰に?」
京子が言う。
「分からない。いきなり頭の中に聞こえたんだ。特別なスキルをあげるって。
で、帰ってみたら、ステータスが見れるようになった。ステータスオープン」
裕也の目の前に、ステータス画面が現れる。
「ん?何も見えないぞ?」
健治は裕也の周りを見回すように言った。
(なるほど、ステータス画面は他の人には見えないんだ)
「俺だけに見えてるみたいだな。健治もステータスオープンって言ってみて」
「おけ、ステータスオープン!」
しーん・・・
「何も出ねーな」
「多分きっかけが必要なんだろうな。考えられるとしたら、モンスターを倒す、とかだな」
正樹は少し考えながら自分の考えを話し始めた。
「この世界にモンスターが出現して、倒すことによりステータスやスキルが人間に発現し、
モンスターと戦う能力が備わる。ってとこだろうな。ラノベの王道だ」
「ねぇ、もうみんなすっかり理解しちゃってる?もしかしてついてけてないの私だけ?」
京子は仲間外れにされたかのような顔をしている。
「京子が普通だと思うわ。けどなぁ、スキルみたいなん見せられたし、剣なんかも出されちゃ納得せざるを得ん。それに、裕也がここまで手の込んだネタを仕込めるとも思えん」
健治がフォローなんだかディスなんだか分からない説明をする。
「それとね、昨日の夜に親父の友達の山田さんって人が、飲んだ帰りに襲われたんだ。
バットみたいなので後ろから殴られたって。背が低くて、小学生くらいの背丈だったみたい。俺が昨日見たのも、小学生くらいのサイズで、頭がデカくて、上半身裸だった」
3人の顔が真剣な顔になる。
「山田さんは何とか逃げれたけど、いつ自分が襲われるかも分からないし、家族や友達を失ってしまう日が来るかもしれない・・・ゲームやラノベの世界に憧れてたけど、いざ現実となると、ちょっと怖いよね。けど、俺は守りたい」
「裕也」
正樹が真剣な顔で、ちょっとニヤけながら言う。
「その為の、ステータスやらスキルだろ。要は強くなれるんだろ?俺たち」
「正直俺はわくわくしてる。みんなを守るために強くなろうぜ!特に知っている人が不幸になったら、さすがに俺もショック受けると思うし」
「ねぇ、魔法って使えるようになるのかな?」
健治も京子もニヤけてる。
「そういえば魔法あるよ!ステータスに魔力あるし、俺結界術ってゆースキルもらったんだ」
「結界?陰陽師的な?何が出来るの?」
「んー、シールドってのが使えるみたい、まだ、試してないけど」
「いいね、いいねー!私魔法使いになりたいな!」
京子はゲームでも後衛の魔法使いを良く好んで使っていた。
カチャ・・・
「俺たち散々ゲームやラノベで既に予習済みみたいなところもあるから、意外と最強パーティになれるかもな」
健治が剣を手にしながら言う。
ドン!
「ん!?」
第三倉庫から物音がした。