第13話 古い仲間
裕也たちが2回目のダンジョン攻略を始めたころ。
『もしもし?』
『お!退院したのか?』
先日ゴブリンに襲われ怪我をした修一から裕次郎への電話である。
『怪我も軽傷だったし、検査してただけだからすぐだよ』
『何にせよ、無事でよかった。先に帰っちまってすまんな』
『お前が気に病む必要なんてねーよ。でな、警察からも嫁からも聞いたんだけど、モンスターってのが出現するようになったみたいだな。俺を襲ったのもそいつの可能性が高いって聞いた』
『そうなんだよ。ゴブリンってやつで、こん棒みたいなのを振り回してくるらしい』
『ほう、詳しいな。何か知ってるのか?』
『俺が知ってるっていうよりは、息子の裕也だな』
『裕也君か。詳しいのか?』
それから、裕次郎は裕也から昨夜までに聞いている情報や、これからどうするべきかなどを、自分の見解も交えて説明をしていった。
『なるほどなぁ、にわかには信じられないが、実際襲われてるし、何か行動しないと手遅れになるのは嫌だな』
『明日、裕也達と一緒にそのダンジョンってのに行って、俺も挑戦してみようと思ってる。そのモンスターを倒すことによって強くなれるんなら、俺もなっときたいしな』
『それ、他の人も参加していいのか?さすがに俺は役に立たなそうだが、伝手はある』
『そんなに大人数じゃなかったら問題ないと思うぞ。ただ、モンスターと戦闘になるから、それなりの経験か気持ちが必要って感じかな』
『分かった。また、連絡する』
そういって、修一は電話を切った。
そしてすぐにある人物に連絡をする。
『もしもし、久しぶりだな』
『おう、久しぶりだな。怪我したって聞いたぞ?大丈夫なのか?』
『いや、軽傷だったし、大丈夫だ。でだ、その件でちょっと相談があってな。モンスターってのが出現してるのは知ってるか?』
『聞いている。まだ俺は直接見たことはないが、周りに見たことがあるって人がちらほらいるな』
『この先、そいつらと戦っていかなければならない未来が待っているらしい。さらに、そいつらと戦うことによって自分自身がスキルってのを貰えて強くなれるんだそうだ』
『ほう。興味あるな』
『だろ?(ニヤリ)』
修一が電話した相手は、全国的にも有名な空手道場の師範代である田中 武であった。
古くからの知り合いで、若いころは強くなることを目標に色々なことに挑戦していた強者であった。
修一は、裕次郎から聞いた話しに対し、武なら絶対に参加するであろうと思い連絡をしたのであった。
『門下生もすぐに連れて行きたいところだが、まずは俺からだろうな。洋平も連れて行こう』
『分かった。俺から裕次郎に言っておく。詳しい詳細はまた追って連絡するな』
『宜しく頼む』
電話を終える。
「洋平!」
「父さん、どうした?」
「明日一緒にモンスター退治に行くぞ」
「急にどうしたの?」
「実はな・・・」
武の息子である田中 洋平も高校生時代、空手の全国大会のチャンピオンで、実力者であった。そして、武の血を受け継いでいる。突拍子もない話であったが、すぐに乗り気になり、準備を始めるのであった。
『もしもし?』
『久しぶりだな、どうした?』
『今いいか?・・・』
まだ修一は手を広げる。
昔、市長すら務めていた経験のある修一のネットワークは業種問わず、多岐にわたる。
「あなた、退院したばっかで無理しないでよ」
「分かってるよ。けどな、俺はモンスターってのと戦えるほど体力があるわけじゃないけど、若いやつが頑張ってるのを聞いちまうと何かしてあげたくなっちまうんだよなぁ」
「あなたは、昔からそうだものね(笑)」
「今の俺に出来ることは、応援してやることと、バックアップしてやることだな。国単位で考えるなら警察や自衛隊なんだろうけど、今すぐ助けてくれ!って声を上げたところで、すぐには動けないだろうしな。さぁて、もうちっと聞いてみるか。若いやつからこんな話ししたって馬鹿にされて終わっちまうけど、俺から話せば信じざるを得ないだろう」
修一は電話を手に取る。
この日本において、警察や自衛隊が自己判断にて、その場で作戦を実行することは難しい。
なら、今は自分たちで出来る限りの自衛をし、住民達を守れるようになりたいと願う。
自分の地元が大好きで、同じ思いを持っている古い付き合いの仲間は多い。
彼らに注意喚起も含めて、連絡をしていく。
裕也たちの知らないところで、古くからの絆で結ばれている大人たちの参戦が決まっていくのであった。
それは、裕也たちにとって心の支えとなり、強力な味方が出来た瞬間であった。




