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黒の零号〜最強の装殻者〜  作者: 凡仙狼のpeco
第7話:人格消滅!? 二人の零号の行方
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第8節:装殻者の真実(前編)

「霊子、というものについて」


 ハジメは、場の全員に問いかけた。


「お前たちはどの程度理解している?」


 霊子、あるいは霊子力、と呼ばれるものは。

 一般的にはコア・エネルギーと呼称される。


 〝純粋なエネルギー〟などとも呼ばれるそれは、理論上無限にコアから出力される、装殻の要とも言えるもの。


 口火を切ったのは、ルナだった。


「ありとあらゆる物に変質可能な霊子は、熱、電気等に限らず物質にすら変化するもの。コア・エネルギーが大量に出力可能な装殻が、微小ながら自己修能力を持つのもそれが理由よね」


 次に口を開いたのはケイカだった。


「装殻の基礎システムと出力解放システムは、そのエネルギーの変換を補助するものです。補助頭脳の補助がなくても、ミツキのように適正が高い人間は自身である程度コントロールする事が出来ます。また霊子は、真の物質の最小単位、と現在では結論付けられていますね。魂の実在すら証明したその論文を書いたのは―――ハジメさん自身です」


 魂の実在。

 それが霊子論の中核だ。


 続いて声を上げたのは、ミチナリ。


「未だ人類同士の争いが絶えないのは、その無尽蔵のエネルギーが〝装殻の稼働にしか使えない〟からだ。同じコアを用いても、魂を持たない無機物に対して、コアはエネルギーを供給しない。例外は、流動形状記憶媒体(ベイルドマテリアル)化した物質……それも追加武装(アームドシェル)や、乗り物であればバイク程度の大きさのものまで、しかも装殻者と共鳴する事でようやく使用可能になる」

「例外的に、黒の一号は大阪隕石封印にアレを使っていたがな。どういう原理だ?」


 ミチナリの言葉に、ケイタが質問を被せる。


「人間と在り様は違うが、襲来体母体も魂を持つ存在だ。あれを中核として共鳴させる事で起動する。……人を近づけない為に偽っていたが、襲来体以外に害はない。あれが取り込むのは、襲来体の魂と同様の固有周波を持つ存在のみだ」


 ハジメは質問に答えてから、先を促す。

 応えたのはリリスだった。


「どうやっても装殻の稼働にしか使えないエネルギー……それを使用可能にした技術は、総帥、あなたの独自技術。私たちは模倣する事でしか、こちらの世界で装殻を使えるようにならなかった」


 《白の装殻》は、来た当初こそ装殻を駆動出来たが、やがてコア・エネルギーが枯渇したのだという。

 故に現在、《白の装殻》のオリジナル装殻には、この世界でハジメが開発したコアが搭載されている、とミチナリは説明した。

 

「お前らは使徒だからな。大元のリンクが絶たれちゃ当たり前だ」


 不意に、ゴウキが口を挟んだ。


「なぁハジメちゃん。まどろっこしいよ。この件に関して何も知らねー奴らが幾ら考えたってムダだろーよ。さっさとお前が話せ」


 ハジメは、ゴウキの言葉に肩を竦めた。


「どの程度ニヒルが伝えているものか、分からなかったので」

「お前は本当に呑気な野郎だな」

「ゴウキさんが短気すぎるんですよ」

「本条で呑気なら」


 花立が呆れた顔でゴウキを見る。


「お前こそ、どれだけ短気なんだ?」

「お前らがついて来れねーくれーだよ。見せてやったろ?」


 ゴウキの戦闘機動について行けない花立を皮肉り、彼は全員の顔を見回した。


「聞いてりゃ、お前らが知ってるのは表面も表面、この世界での霊子の発現に関する事だけだ。そもそも、魂を持つことがコアからエネルギーを引き出す条件なら、動物でも装殻出来る理屈になんだろ。お前らそんなの見たことあんの?」


 仲間同士で目を見合わせ、装殻者たちは首を横に振る。


「表向き、それでも特に問題がねー説明だからハジメちゃんはそう言ってたんだろうが……本来は、装殻者となれるのはデウスの産み出した俺だけなんだよ。そして装殻者は使徒を作り出す。お前らに対してニヒルがやったように、自身の力を貸し与えてな」


 ゴウキは、ミチナリらを指差した。


「使徒と装殻者は繋がってる。丁度お前らが使う遠隔兵器みたいなもんだ。零式が失われれば、リンクが消えて稼働しなくなる。この世界でもそれは変わらねぇ。それを、お前ら自身が言ったように『代替』したのが、ハジメちゃんだ」

「黒の一号が?」

「そう。この世界の装殻は、ハジメちゃんか……今はコウも役割を持ってるが、こいつらがいなくなったら稼働しなくなる。二人が俺の代わりだからな」


 ゴウキの言葉を受けて、再びハジメが口を開いた。


「そもそも、コアというもの自体にエネルギーは内蔵されていない。あれは、接続媒体……あるいはエネルギー召喚具とでも呼ぶべき物だ」

「召喚……?」


 いきなりハジメから飛び出した非現実的な言葉に、ミツキが戸惑いの声を上げる。


「どこからか、エネルギーを呼び寄せてるって事なんすか?」

「ある意味では、そうとも言える。この世界に俺のコアが開けた穴の外から流入する霊子を、他の装殻コアがエネルギーに変換しているんだ」

「穴の……外」

「大体、無限のエネルギーなんて便利なモンがこの宇宙に存在する訳ねーだろうが。宇宙ってのはエネルギーを消費しながら存在してるもんだ。いずれエネルギーが無くなりゃ止まる。宇宙の終焉理論に関しては、ビッグフリーズも灼熱死も、収縮も間違いとは言えねー。止まり方は宇宙それぞれだからな」

「宇宙とは」


 ハジメは巨大なホロスクリーンを背後に浮かべた。

 そこに映されているのは、闇に浮かぶ大きな光の円だ。


 そこから、光の線が内に向けて曲線を描きながらいくつも伸び、円を平面から立体……光の線がぐるぐる回って形成される〝球〟へと変化する。


「簡単に視覚化すると、この光の筋の一本が宇宙とそれを内在する時間の流れ……霊子の流れだ。この一本が止まる、つまり時間ごと停止するのが宇宙の終焉」


 光の筋の一本が徐々に遅くなり、やがて止まる。


「ここに、別の霊子流が衝突すると」


 流れていた光の筋の一本が止まったものに衝突して弾け、そこから再び幾つかの光の流れが生まれた。

 細いそれは急激に太くなり、やがて他と同じ太さになると中に紛れて球を形成する要素になった。


 それが、映像のあちこちで起こり始める。


「霊子流は、停止、衝突、再形成を繰り返しながら流れ続ける。止まった霊子は再形成された流れに装殻者を介して迎合し、再び無限に加速を維持し続ける要素になる」


 ハジメは、全員の顔を見回して言った。


「本来、〝心核(コア)〟とは、この循環から外れて停止している霊子を、加速させて流れに乗せる為のアーティファクトだ」


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