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黒の零号〜最強の装殻者〜  作者: 凡仙狼のpeco
第7話:人格消滅!? 二人の零号の行方

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第7節:和解


 パイルらとの対峙から僅か一週間で。

 PL社幹部の三人……《白の装殻(クルセイダー)》と《黒の装殻(シェルベイル)》の対談は実現した。


 時間を置く余裕がない、というハジメの言葉を裏付けるように、襲来体の活動が活発化し、各地で被害が出始めていたからだ。


 装技研内の会議室に、PL社の三名、そしてゴウキ以外の《黒の装殻》、リリスとミカミが揃っている。


「まずは謝罪しよう、黒の一号」


 口火を切ったのはエータ……山上ミチナリだった。

 巌のような顔と体格の男で、髪は短く刈られている。

 凄みを持つ顔は無表情だったが、崖で対峙した時に比べると瞳の生気が桁違いだった。


 以前の様子が飼い慣らされた犬とするなら、今は野生の大熊のごとき威圧感を持っている。

 これが、彼本来の姿なのだろう。


「我々は襲来体に利用されていた。そこのリリス……我らが同胞が君たちに与した事は正しかった、と私は思う。そして、ミカミも」


 エータは硬い表情を している二人に対して立ち上がると、洗練された動作で頭を下げた。


「すまなかった。私が不甲斐ないばかりに、君たちには辛い思いをさせた」

「私は、貴方に殺されるところでした」


 銀縁眼鏡を掛けた、仕事モードのミカミが言う。


「でも、貴方たちが私の事を自らの意思で排除しようとしたのではなかった、と。そう知る事が出来て良かった」

「ヒルメ……」


 パイル……海野ケイタが思わず呟くと、ミカミは微かに微笑んだ。

 もう彼女に暴走の危険はない。


 それは、ケイタが戻れるあてもないのに、ミカミの為にラムダに作らせたフリード・コントローラーによる救済だ。

 そして、リリスも。


「あなたたちを、同じ《白の装殻(クルセイダー)》として情けないと思う。……でも、元に戻ったあなたは、私は好き」

「ああ。……本当にすまなかった」


 ミチナリが再度頭を下げると、リリスはラムダを見た。


「……私は謝らないわ」


 ラムダはふてくれされた表情で顔を背けた。

 そんなラムダに声を掛けたのは、リリスではなくミツキ。


「……ルナ」

「そいつが仲間を裏切った事は事実でしょ。別に、何も悪い事はしてないわよ、私は」


 そんなルナをじっと見て、リリスは淡々と言った。


「別に謝罪して欲しいなんて思ってない。……私は、あなたが嫌いだから」

「知ってるわよ。だから何? 私だってあなたが嫌いだわ」

「でも」


 リリスが、ラムダに対して微笑んだ。


「「……ッ!?」」


 その優しげな微笑みに、ミツキとラムダが目を見開く。


「ユナを、殺さなかった事。ミツキに助言した事。ほとんど可能性がないと思っていたパイルの手助けをしてあげた事を、私は知ってる」


 ラムダは答えない。

 だが、唇を噛んで目を背ける彼女に、リリスは続けた。


「あなたも、エータの異変に気付いていた。その事を、私は知っている」

「……ッ!」

「おい、マジかよルナ……」


 ケイタの驚きに、ラムダは顔を伏せたまま答えない。


「ルナが本気だったら。私の攻撃は、ルナには届かない。あの襲来体が現れる前の戦いで、私は彼女に負けていたはず。あなたは、参式と同じ……敵であっても、人を殺せない」

「だから……何よ」

「誰も彼もを守ろうとして自滅するのは、あなたの悪い癖。操られたパイルとエータを敵のそばに残していけない。だから残った。……私が、知らないと思った?」


 偽装装殻(ダミーベイルド)の開発は。

 万一、予想よりも早く襲来体が牙を剥いた時に、戦力をより多く手元に残しておく為。

 ダミーベイルドは、襲来体が擬態した人間には身につけられないようにプログラムされているので、奪われる心配はない。


  自分たちの装殻を元に、米国専属で開発してなお巨大企業になるほど強力な装殻を開発したのは。

 日本の装殻に脅威を感じていた米国が、人体実験まがいの不良装殻をバラまいたような、数多くのベイルダーを生み出す悲劇を、二度と起こさない為。


「そして私の裏切りと脱走がやりやすいように手助けをして、ミカミと私を逃したのは。……事態が解決した時に、【黒殻(アンチボディ)】との折衝をやりやすくする為だった」


 これほど早く会談が実現したのは、全てラムダが秘密裏に行なっていた下準備のお陰だった、とリリスは言う。


「あなたの事だから、主要な経営陣には定期的に、襲来体かどうかの検査を行なっていたでしょう。そして本当に不味い技術の横流しがないよう、適当な理由をつけてミチナリの要請を跳ねていたはず」


 リリスは、ラムダに歩み寄った。


「ルナ。だから私は、あなたが嫌い。……何でも分かってくれると思って、私に厄介を押し付けるあなたが」


 ラムダは……ルナは、いつの間にか泣いていた。

 その頬に、リリスが手を触れる。


「そして、ニヒルが憎い。あなたに、重圧を押し付けて死んだままずっと、戻ってこなかったあの人が」

「私だって、あなたが嫌いよ!」


 ルナは叫ぶが……リリスの手を払おうとはしなかった。


「仕方ないじゃない! ニヒルだって一生懸命やったのよ! なら戻って来るまで、私たちが頑張るしかないじゃない! リリスはいっつも、そうやって何でもかんでも見透かしたような顔をして! いっつも私が苦労かけてるような事を言うあんたなんか嫌いよ! バカ!」


 まるで対照的な双子は。

 そのままルナが泣き止むまで立ち尽くし。


 ルナが目尻を拭うと、リリスはそっと離れた。


 それを静かに見ていたハジメは。


「では、エータ。君の謝罪をもって、そちらとの和解が成立したと判断する。……異論はないな?」


 ハジメの最後の問いかけは、花立らに向けられたものだった。

 彼らは一様にうなずいて、賛同を示す。


「では、本題に入ろう。我々の目的は襲来体の殲滅……そして君たちの帰還だ」


 ハジメの言葉に、《白の装殻》らが驚いた顔をした。


「手段があるのか?」


 ミチナリの問いかけに、ハジメはうなずいた。


「ある。……というよりも、取るべき手段が取れるようになった。零号と、零式。そして俺が揃ったことで」


 そこで、不意に会議室のドアが開いて、顔を見せたのはゴウキだった。

 相変わらず、ニヤニヤと笑っている。


「よう、そろそろ本題か?」


 ケイタとルナが、顔をを強張らせた。

 エータとマサトを圧倒したゴウキの強さが、最も身に染みたのはこの二人だ。


 それを分かっているかのようにニヤニヤと笑いながら、ゴウキがハジメの横に立って肩に手を置く。


「さ、ならハジメちゃん。そろそろ説明してやれよ。真実を知らない間抜けな、もう一人の俺の使徒どもと……お前の使徒どもによ」


 ハジメはゴウキの言葉を受けて、口を開いた。


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