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黒の零号〜最強の装殻者〜  作者: 凡仙狼のpeco
第5話:連続励起!? 暴走する零号!
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第9節:愚者の祭典

 ユナ奪還作戦の前日。


「コウくん?」

「調子はどうですか?」


 ミカミが家に帰ると聞いて、迎えに指命されたコウが訪ねると、既に身支度を整えていたミカミが微笑んだ。

 帰り支度を手伝っていたリリスが、コウに答える。


「データ上は、ほぼ問題なし。アヤとコウのお蔭……私は、とても良かったと思う」

「そうね。少し体は重い気がしますけどねぇ〜……それは仕方がないですよねぇ。コウくん、ありがとう〜」

「……いえ」


 大した事をしたつもりはない。

 実際に抑制薬を形にしたのはアヤの手柄であり、コウ自身にはそちらの知識はないからだ。


 ただ、自分に何か手助けが出来そうな状況で、ミカミの命が長らえるなら、と。

 考えた事を、アヤに伝えたに過ぎない。


「いよいよ、明日ですね」

「そうですねぇ〜」


 ユナのいないあの家は、表面上は何事もないように皆が振る舞っていたが、やはりどことなく空気が沈んでいた。


 自分の大切な人を守る、というのが、どれ程大切な事か。

 それをコウに突きつけるように。


 もう、姉が死んだ時のような思いをするのはゴメンだと思っていたのに、ユナはコウの目の前で拐われてしまった。


 まだ、力が足りない。

 そう思ったコウは、指定された日までの間、ジンと訓練を重ねた。


 敵を、自らの大切な人々を脅かす者は許さない。

 訓練を重ねる中で、コウは、そう決意を新たにしていた。


「ユナの奪還には、私も参加しますよぉ〜」

「え?」


 思考に沈んでいたところに不意にそう言われて、コウは顔を上げた。


「当然でしょう〜? 私だって、ユナは大切ですからぁ〜。まさか、参加するなとは言いませんよねぇ〜?」


 いつも通りの口調で、無茶な事を言うミカミに、コウは狼狽える。


「いや、でも、暴走の危険が……!」

「コウくんが逆の立場なら。大人しく待つんですかぁ〜?」

「……」

「それが、答えですよぉ〜」


 ミカミは迷いなく言った。


「それに、あの人たちとは因縁がありますからぁ〜。コウくんたちよりも、恨みは深いんですよねぇ〜」


 困ったコウがリリスを見ると、リリスは首を横に振った。


「ミカミは頑固。それに、気持ちは私と一緒……私は、好き」

「……花立さんたちは、どうするんです?」

「もう許可はもらってますよぉ〜。そもそも、私は一応職員ですけど、協力してるだけなんですよ〜? 私を無理に引き止める命令は、あの人たちには出来ないんですよぉ〜」


※※※


『分かりました。それは、好都合ですね……」


 米国軍のアドバイザーを名乗る男は 夜の街中を走る車の中で、そう言って笑みを深めた。


「ええ、約束通り、少女はお返し致します。助かりましたよ。参式の出現は少々予想外でしたが事は上手く運びました。後はお互い、手筈通りに……」


 通信を切ると、男は。煌々と明るく照らされる街並みの中で、一際高くそびえ立つビルに目を向ける。

 ユナをあそこまで運んだのは、彼自身だった。


「あの方も酔狂な事だ。あえて敵を増やす確率を上げるとは……」


 PL社本社。

 そこにいる者たちと、仲間を拐われてさぞかし憤っているだろう者たちに思いを馳せて、くくく、と嗤う。


 どちらも愚か。


 それが彼の感想だった。

 たかが仲間一人に右往左往し、罠にハマる連中も。

 それを返すなどとほざき、自らを危険に晒す真似をする連中も。


 全く、ゴミ程の価値もない愚か者ばかりだ。


「せいぜい利用させて貰いましょう。お互いに潰し合ってくれるなら、これほど楽な事もないですしね……偉大なるあの方の前では、全員が生きていても大した脅威にはなりませんが、リスクが少ないに越した事はありませんし」


 自らが忠誠を誓う存在に思考を及ばせた男は、ふともう一人の愚か者を思い出して、眉根を寄せる。

 主に逆らい、姿を消した彼の知る中で最も愚かしき存在だ。


「アレはどこで何をしているんでしょうねぇ……力と命を授けていただきながら、全く理解出来ません」


 だが放置していても、どうせ奴は邪魔をしないだろう。

 ちっぽけなプライドにこだわるあの男が、黒の一号に利する行いをする筈もない。


 彼は、それ以上不愉快になる前に、考えるのをやめた。


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