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黒の零号〜最強の装殻者〜  作者: 凡仙狼のpeco
第5話:連続励起!? 暴走する零号!
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第4節:口にするのは容易いけれど。


 ミツキは、開発室へ向かうリリスを追いかけて声を掛けた。


「リリスさん」

「何?」


 振り向いた彼女は相変わらずの無表情だ。

 他の人たちと違い、コウの言葉に堪えた様子はない。


「ルナがどんな奴か……教えてもらわれへんすか」

「何故?」


 ミツキが気になっていた事を問うと、リリスは即座に問い返した。


「あいつは、こなにだ俺がリリスさんに……その、怒られた時に、話し合いをせぇ、ってアドバイスしてくれたんす。俺にはあいつが、そんな悪い奴には思われへんのっすよ」


 立ち止まったリリスは、じっとミツキを見つめて自分の考えを告げる。


「悪い悪くないという面で言えば……私はどちらも悪いとは思わない」

「そう、なんすか?」


 彼女が自分と同じ主張なのかと思って期待したミツキだが、続いた言葉は予想に反したものだった。


「ぶつかるのは、主張が違うから。お互いに譲れない感情と目的があるから、人はぶつかる……お互いを消し去ろうと思うほど深く対立するのは、好きではないけれど。私の中にもその感情はある」


 その目の奥に、譲れないほど硬い意志を感じ取ってミツキは怯んだ。


「……向こうと、話し合う事は出来ひんのですか? ユナの事だって、総帥とルナが協力すれば、何か解決策が見えるんちゃいますか?」


 それでも、ミツキは自分の主張をぶつけてみた。

 リリスは目を逸らして、遠くを見つめるように虚空を睨む。


「人と人の関係は、難しい。ミツキの言う通りに出来れば理想ではあるけれど。話し合いには時間がかかり、話し合うにもわだかまりがある。その解消に掛けるべき時間が、お互いに残されていない事が問題」

「その事情を、俺は知らんっす。俺は、マサトもユナも、ルナも、リリスさんも知ってる。少尉……パイルや花立さんも。皆ええ人や。お互いの目的が同じなら、それを軸にお互いに妥協する部分を探れるんと違いますか?」


 何とか衝突を回避して、ユナを無事に取り戻したい。

 そんなミツキの気持ちに、しかしリリスは首を横に振る。


「話は、既にそうした段階を飛び越えてしまっている。そもそもは、事の起こりから。《白の装殻》から見れば、事故によって0式が失われた事が彼らの怒りに火を付けた。その報復を退け、あまつさえ0式復活の要であるユナを、私たちが隠した。そして自らを『次なる〝ニヒル〟である』と言ったマサトという装殻者は、宿主である少女を救う為にコアを欲している」


 感情を交えない冷静な分析を、ミツキは黙って聞いた。


「逆に《黒の装殻》から見れば、あくまでも《白の装殻》の件は不慮の事故。攻められたから自衛をしたに過ぎない。そして、コウから見れば?」


 先程激情を見せたコウの様子を、ミツキは思い出した。

 コウを説得するには、確かに生半可な条件では頷かないだろう。


「コウにとって《白の装殻》は、ユナを拐った憎むべき相手。彼自身にも、ユナにも、そしてアヤにも非はない。どう歩み寄るの? 《黒の装殻》が謝罪し、《白の装殻》がユナを無事に返し、0式のコアをユナから危険なく取り出す方法を見つけ出す為に協力して、復活させて、目的を達成する? どれ程の時間が必要になると思う?」

「時間を掛ければ、出来るっちゅーんなら」


 時間を掛ければ良い、とミツキが言う前に。


「それまで、〝ニヒル〟の器であるマサトは生きているの?」


 リリスは、冷酷な事実を告げた。 


「……それは」

「仮にニヒルが生きていたとして。その間に敵が、待ってくれるの? そんな訳がない事は、あなたもよく知っているはず」

「……俺が?」

「そう。……私たちの敵は、襲来体(イミテイト)よ」


 襲来体。

 隕石として星々の彼方より飛来し、人類を殲滅せんと襲い掛かって来る、決して相容れないモノたち。


「奴らを殲滅する為に、私たちは在る。それは、定められた事。成さなければ人類は死滅するわ。そして、次の襲来体が現れる兆候は既にある。私たちが見た赤い襲来体は、大阪の残党などではない。あれこそが、真なる襲来体……《星喰使(オーファン・ウィルス)よ」

「オーファン・ウィルス……?」


 新たに告げられた名前にミツキは疑問を呈するが、リリスはそれについて答える気はないようだった。


「彼らを殲滅する共通の使命以外にも、私たちにはそれぞれに目的があり、それぞれの主張を解決出来るのは時間だけ。でもその時間がない。ならば、争うしかない」

「でも、リリスさんは、リリスさんとミカミさんは、俺らに協力してくれてはるやないですか!」


 何故彼女たちは協力出来るのに、他の者たちは無理だと言うのか。

 納得出来るだけの理由を求めるミツキに対して、あくまでもリリスの態度は変わらない。


「もし仮に、襲来体との意思疏通が……擬似的でなく可能であったとして。ミツキは彼らに対して歩み寄る?」


 リリスの問いかけは。

 ミツキにとっては、極限の選択だった。


「襲来体、と?」

「そう。もしも彼らに、地球に移民しなければ滅ぶだろう事情があったとしたら。あるいは、先に話し合いを持とうとしたのに攻撃されたから報復として人類に侵略行為を行っていたとしたら。あなたは、その事情を知ってなお、彼らを許して話し合おうとする?」


 ミツキは、襲来体に仲間を殺された。

 そして父親までもがその犠牲になった。

 他にもたくさんの人が奴等のせいで命を落とした。


 ―――そんな相手を、もし自分なら許せるか?


「私にも、そしてミカミにも、自身の目的がある。事故によるものとはいえ、ミカミは一度《白の装殻》に見捨てられた。故に自身の生存を掛けて、私たちに協力している。そして私は」


 先程、リリスの目の奥にまたたいた硬い意志が、再び顔を見せた。


「〝ニヒル〟を憎んでいるのよ」


 

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