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黒の零号〜最強の装殻者〜  作者: 凡仙狼のpeco
第5話:連続励起!? 暴走する零号!

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第3節:希望を繋ぐ


 救護室を後にして、コウが訪れたのは研究室だった。

 研究室は、シースルー構造でガラス張りになっている。


 立ち働く研究員も多い中、アヤは自分の割当スペースで相変わらずホロスクリーンとにらめっこしていた。

 だが、目はまるで動いていない。


「アヤ」


 コウが声を掛けると、アヤは跳ねるように顔を上げた。


「お兄ちゃん……ミカミさんは?」


 いきなり、そう訊いてくる。

 動きが止まっていたのは、きっとミカミを心配するあまり、仕事の内容がまるで頭に入っていなかったに違いない。


「落ち着いたらしい。今、大丈夫か?」

「うん……」


 心配そうに、アヤは顔を俯けた。

 仕事中で、ミカミの安否を気遣いながらも抜けれなかったのだろう。

 そのアヤに対して、コウは今からもう一つショックを与える事実を告げなければならない立場だった。


「アヤ。落ち着いて聞いてくれ」


 コウは、自分が知る限りの事実をアヤに伝えた。

 話す内にアヤの顔は蒼白になり、その体が震え出す。


「ユナ……」


 呟いたアヤは、目の焦点が合っていなかった。


「アヤ。俺は、必ずユナを取り戻す」


 コウはアヤの頭を抱き寄せて、髪を撫でた。

 触れた頬は、血の気が引きすぎて、まるで氷のように冷たい。


「絶対に殺させない。今からPL社の本部に殴り込んででも、生きているユナを連れて帰る。だから、アヤも信じろ。ユナが生きて帰って来るって」


 アヤと目線を合わせて、コウは誓う。


「俺は、力を使いこなす。シュリさんの時みたいな想いをしないように、お前にもさせない為に、俺はこの力を得たんだ」

「お兄ちゃん……」


 アヤは、コウの目を見返して微笑んだ。

 その拍子に、目尻から一粒、涙が零れる。


「約束、してね?」

「ああ」


 コウは力強くうなずいた。

 ―――ユナが、無事に戻るのならば。

 コウの胸中に暗い決意が宿る。


 相手が誰であろうと……仮にマサトであろうと、殺すことを厭いはしない、と。


「その前に、一つ問題を解決出来ないかを知りたい。ミカミさんの装殻データを見せてくれ」

「……もしかして、また何か思いついたの?」


 話題を変えたコウに、アヤは期待と不安が混じったような声を出した。

 コウは、そんな彼女に軽く笑みを浮かべた。


「流石にアヤは分かってるな。俺は、思いつくのは割と得意だ。元々何でも屋だからな」

「……なんか、お兄ちゃんは落ち着いてるね」


 ミカミのデータを表示しながら、アヤが軽口を叩くコウに言う。


「周りが頼りにならないなら、自分でどうにかするしかないだろ。慌ててても何も変わらないしな。今出来る事から、手を付けていこうとしてるだけだ」

「ミカミさんの問題が、出来る事?」

「そう。アヤがいるからな」

「どういう事?」


 アヤの問いかけに。

 コウは表示されたミカミのデータを見ながら、自分の予想が間違っていなかった事を確信して、悪い顔をした。


D.Ex(ダウン・エクシード)だよ」

「え?」

「ミカミさんの装殻って、要は常時起動状態なんだろ? 不良装殻者は基本的に皆そうだけど、ミカミさんの場合は外殻じゃなくてコアが制御を受けない状態な訳だ。なら、装殻のコアを不活性化出来れば、外殻のコントロールが出来なくても問題は先送りに出来るんじゃないか?」


 コウがコアデータを指し示しながら言うと、アヤは眉をしかめて難色を示した。


「でも、ミカミさんって人体改造型でしょ? そんな事したら、生命維持(バイタル)に問題が出ない?」


 人体改造型は、生体維持に関わる機能を少なからずコアエネルギーで代替している。

 通常の装殻を身に付けるだけでも細胞の劣化が防げるそのエネルギーを常時肉体に供給している為、人体改造型は常人を超える身体能力を有し、また基本的に改造時より外見年齢が変化しない。

 代わりにコア出力を一定量以下にしてしまうと、今度は生理機能や日常生活に支障が出るのではないかと推測されている。


「D.Exによるコア機能制限を行う分には、生命維持に関しては問題ないって花立さんが言ってたらしいよ。試した事があるって」

「試した!? いつ!?」


 コウは大阪隕石の事件で、ミツキから聞いた『花立がやった事』をアヤに伝えた。


「あの人、無茶すぎるよ……」


 アヤが頭を抱えた。

 コウから見ても、どんな副作用があるか分からないのに相当無茶な事だと思う。


「知らなかったのか?」

「う〜、後で問い詰めてやる! 貴重なD.Exの人体実験データ!」


 多分、ハジメさんはデータ持ってるんだろうな、とコウは思ったが、口には出さない。

 ハジメさんは問えば答えてくれるが、聞かなければ放置するタイプだ。

 アヤがそういうデータを欲しない限り、自分から提供はしないだろう。


「アヤ……お前も大概、染まってるな……」


 花立の無茶な行動を、即座に臨床データの取得に結びつける辺り、既に純真無垢な学生だった頃とは違うと思える。


「私だって【黒殻】に入ってこっち、こき使われっぱなしなんだよ!? そりゃ変わるよ!」

「それもそうか。で、どうなんだ? ハジメさんがの指示でD.Ex自体の改良は続けてるんだろう?」

「うん……まぁ、花立さんの身体データ次第では、無理ではない、かな?」


 しばらく起こりうる事象とそれへの対処法を話し合い、コウたちはお互いにうなずいた。


「……いけそうだな。コアを不活性化させて外殻へのエネルギー供給を断つ事だけを考えるなら」

「でも、その代わりに服用してる間は装殻を部分展開もできないよ。でもそのくらいは、諦めてもらうしかないかな……」


 後日、検証を終えた時点でのD.EXの受け取りを約束してもらい、コウはその場を後にした。



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