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黒の零号〜最強の装殻者〜  作者: 凡仙狼のpeco
第4話:覚醒! 零号装殻者!
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第12節:集結(前編)

「―――行くぞ」


 宣言と共に、パイルがコウに対してグレイヴを突き込んで来た。

 滑るように迫り来るパイルを横に避けつつ、コウは銃剣の引き金を引こうとしたが。


 閃光の速度でしごき抜かれたグレイヴの穂先が不意に軌道を変え、銃身を跳ね上げて狙いを反らされる。


「ハッ!」


 ミカミがそんなパイルの脇を狙うが、ぐん、と何かに後ろに引かれるように、あり得ない動きでパイルが避ける。

 彼の装殻のベルトの位置にある、出力増幅核に似た球体が青く光っていた。

 なにがしかの力、恐らくは磁力を使っているのだろう。


出力解放(アビリティオーダー)!」

承認(レディ)


 ミカミの攻撃を避けたパイルが、肩の辺りに浮かぶグレイヴをもう一本出現させ、それらをコウとミカミに照準する。


出力解放(アビリティオーダー)!」

要請実行(オールレディ)


 同時に、コウも必殺の一撃をカウンターで叩き込むべく声を上げる。


「〈迫撃殻杭(ピアシングステーク)〉!」

電磁加速(マグネブースト)


 二本のグレイヴが射出された直後に、コウは自分の体がいきなり左右に引かれる感覚を感じた。


「ぐ!? ……〈黒の轟閃(ブラストアサルト)〉!」


 動きを止められて目の前に迫るグレイヴに、コウはとっさに銃口を自分の前に向けた。

 眼前の空間に炸裂する破壊振動がグレイヴの勢いを弱めると同時にコウの体を吹き飛ばし、直撃を避ける。

 転がって体を起こすと、ミカミはグレイヴを構えた姿勢のままその場を動いていなかった。


「ナメられたものですねぇ~、パイル。私と貴方は同型ですよぉ? こんな攻撃、通用する訳ないじゃないですかぁ」

「まぁ、気付くよな。お前なら。まさか利用されるとは思わなかったが」


 言いながらパイルが手をかざすと。

 コウを狙って地面に落ちたグレイヴと、ミカミに軌道を逸らされて壁に突き立ったと思しきグレイヴが、それぞれにパイルの手元へと飛来して戻る。


「マグネボールを目立たないように、撒いてあるんですよねぇ?」

「奥の手を見破った、と思ってるんだろ? ……磁力干渉(マグネバインド)

承認(レディ)


 補助頭脳が応え、再びコウの体が拘束を受ける。


「く……!」

「体が重くて動き辛ねぇだろ? そこで見てろよ」


 コウに言い捨てて、パイルは三本目のグレイヴを出現させた。


「どういうつもりですかぁ~? 言っておきますけど、私には効かないですよ~?」

「分かってるよ。これ以上お前に暴れられるのも困るしな。一人ずつ始末させてもらう……出力解放(アビリティオーダー)


 パイルは、再びコア出力を解放して、グレイヴを構えた。


「ダイヴですかぁ……ならこちらも。出力解放(アビリティオーダー)


 ミカミがパイルと同じようにグレイヴを出現させ、同じ構えを取る。


「「―――〈対潜迫撃殻弾杭(ガンピアシングダイヴ)〉!」」


 二人が全く同時に声を上げ、自身を電磁加速してお互いに突っ込んだ。

 目で追いきれない速度。


 しかし交錯した二人が着地した時、グレイヴを三本全て破壊されて倒れたのは、ミカミだった。


「い……まのは……!?」

「こないだ、襲来体の伍式が使ってた手だ。すげぇだろ?」


 得意気に言うパイルの体が、ぐにゃりと歪んで元に戻る。


 (ゲル)化だ。


「出力解放に、限界機動(ブレイクアップ)を重ねた状態で……? パイル、あなたは死ぬのが、怖く……ないんです、かぁ……!?」


 信じられない、と言わんばかりに首を横に振るミカミに、パイルは振り向いてグレイヴを払う。


「……俺には、自分の命より譲れないモンがあるんだ。知ってるだろうが」


 そこに。


「無事……ではなさそうだが、生きてはいるようだな」


 両手に、ミツキとラムダをぶら下げた参式が合流した。

 パイルの傍にも、少し遅れて見慣れない装殻者が着地する。


 灰茶を基調とした外殻に、太い出力供給線(ホワイトライン)が全身に走るツートンカラーの装殻。

 武骨な印象で、胸元と脚部は戦車の外装を剥ぎ取って整形し直したような、分厚いスクウェア型。

 逆に両肩から肘にかけての外殻は薄く、両手は黒の一号が付けているのによく似たグローブスラスタータイプの追加装殻を付けている。

 頭部を覆うフルフェイスは、鋭い牙を剥いた熊の頭部に似た意匠を刻み、白く輝いている。


 陸戦型装殻ベアード)


 これもまた、米軍で採用されている正式装殻だ。

 細部や色合いが違うのも、パイルやラムダと同じ。


「あれが……?」

「エータだ。〈グリズリア・エータ〉。これで、敵の旗頭が三人揃ったな」


 コウの呟きに、参式がミツキから手を離しつつラムダの首を羽交い締めにして答える。


「これでほぼ全員、か? 肆号だけ姿が見えねぇな」


 パイルがグレイヴを肩にもたせかけながら言うと、ミカミがパイルとエータの隙を窺いながら答える。


「いいえ~、もう一人、居ますよぉ~……この場に居るべき人がねぇ!」


 彼女が叫ぶのと同時に。


Ψ(プサイ)……着装」


 どこからか、声が響き。

 物陰や上空で、何かが破壊されるような音が響き渡る。

 その一連を受けて、パイルとエータがそれぞれに呟いた。


「ッ……油断したな。マグネボールが、かなり潰された」

「今の声は―――」


 キュキュキュン、と音を立てて空を裂きながら出現したのは、ブレード・スラスター。

 それらは、コウらの脇にある建物の屋上へと向かった。

 マグネボールの破壊によって拘束を解除されたコウが見上げると。


 そこに立っていたのは、ドラクール・ロッカス。

 乳白色の外殻に、出力供給線(ライムライン)を備えたそれは、参式に囚われているのと同一の装殻。


「リリス……!」


 羽交い締めにされたラムダが言い。


「お前までもが現れる、か」


 エータが、どこか諦めを帯びた口調で言葉を吐き出した。


「当然。私が来ない理由がない。……私は、あなた達が嫌いだから」


 ロッカス……〈ロッカス・プサイ〉と呼ばれる装殻であると、コウは後に知った……は、彼のよく知る少女の声で言った。

 

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