†第21話《錯綜》†
†第21話《錯綜》†
「世界を…?何者なんだラグナってやつは…。」
カルストにある小さな病院…その一室で横たわるアルフ、アルフの横にはリヴィアが座って話を聞いており、その傍らに立つヴァンスはそう問い掛けた。
「さぁな…俺が奴を初めて見たのは4年前行われていた、互いの軍事力を見せ合い力の均衡を保とうとする目的で行われていた、軍騎教合同視察祭の時で、皇帝の横で手を振っていたツヴァイ皇子を睨んでいた…。」
「そうか…世間的には仲の良い兄弟だって有名だったのにな…。」
「ああ…だがそれは間違いだ…その後俺が他の騎士長達と軍騎教合同視察祭の後、互いの国の長に貴国には侵略をしません、と誓いを立てる場、つまり皇帝謁見の儀を行いにゼアサラス宮殿に行ったとき、宮殿内でラグナが迷子になったと大騒ぎになって俺達騎士団も借り出されたんだ、それで偶然俺が見つけてな…その時に…。」
「よぅ…こんな所でいじけて何やってんだ?」
「………。」
宮殿の屋上…その端っこで疼くまって空を見ている少年をアルフは見つけた。
「まぁ何でもいいけどさ…みんな心配してるぞ?俺と一緒に戻ろう。」
「…らない…。」
「え?」
「僕は戻らない!!」
「……どうした?そんなにいじけて…話ぐらい聞いてやるぞ?」
そんな風にふざけ半分で皇子に接しられたのは若さとその時の境遇のおかげ?かもしれない。
「僕はこの世界に必要なのかな…?」
(これは…思ったより深刻………?)
「まぁ俺にはよく分かんねぇけど…この世にとって必要かどうかって自分で決めることか…?」
「えっ…?」
自分の意に沿わない言葉に驚くラグナ。
「大体…そんなに心配することか?それ…。他人から必要とされたいなら…必要とされようとする努力が大事だと思うけどな。」
「努力は今までもしてきたよ!でも…それでも何をやっても認められないんだよ!!……兄さんがいるから…。」
(この兄弟は…表向き仲睦まじいが…本当はそうでも無いのかもな…存在に対する嫌悪は図りきれないものだからな。)
アルフがそうだった。父親が総騎士団長という優秀な人物だと周りに認められようと必死になりすぎて父親という存在自体に嫌悪を抱いてしまう。
ラグナロクの場合は国を継ぐ第一皇子である兄が周りから大事にされすぎて、自分の存在意義を保とうと、兄の存在に対する嫌悪を抱いていた。
「お前の兄貴が居なくなったら…お前は逃げたりせずに先に進めるのか?」
「………。」
「ふ…そうじゃないよな?兄貴が居なくなればお前は第二皇子として担ぎ上げられて一生国に縛り付けられる事になる…。」
「………。」
「ただ…お前は自分を見て欲しいだけ…なんだよな…自分を個として…一人の人間として認めて欲しいだけ…違うか?」
「違わない…。」
「そしたらさ…もう自分が認めて貰えるまで頑張り続けるしかないんじゃないか?国王の息子だとか…王位継承者の弟だとか…そんなもん霞むくらいに頑張るしか…ないんじゃないか?」
「………頑張れるかな…?僕にも出来るかな…?」
「そりゃあ…お前次第だ!」
「………うん。」
「うし!行くか?」
「うん!あの…貴方の名前は…?」
「アルフレット…アルフレット・ブレスクだ。」
「そんな事が…。」
余り聞いたことのないアルフ昔話を聞いたリヴィアとヴァンスはそう感嘆した。
「あの時は少し改心したのかもしれないけど今は多分…。」
そんな自分が騎士だった頃の話に一抹の懐かしさを感じながらアルフはベットから身体を起こそうと力を入れる。
「ちょっとアルフ!?」
「お前!まだ身体が!」
治りきらない身体を起こそうとするアルフを必死に止めるリヴィアとヴァンス
しかし…
「…悪いがそうも言ってられねぇんだ…俺は決着つけに行かなきゃならねぇ…。」
「そんな身体で何言ってんだ!!」
「親父はまだこの町にいる…大丈夫だ…今度は勝てるさ…。」
「今度こそ勝機はある…と?」
「ああ…。」
そう二人は睨み合いその瞳の覚悟を読み取る。
「ったくお前は…絶対勝ってこいよ…このままガーディアン解散なんてありえないからな…!!」
「そうだよ!!また一人残されるのは嫌だよ…?」
「ああ…了解した!」
そうして身仕度を整えるとアルフは部屋を出て行った…。
(お願い…死なないで…帰って来て…)
そうリヴィアはアルフの出ていった病室の扉に向かって祈りを捧げた。