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巻き込まれたアラフォー20歳若返る  作者: 虎太郎


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好きな事

工房兼住居での暮らしにもすっかり慣れ、愛菜は久しぶりに穏やかな日々を過ごしていた。


 朝は窓を開けて空気を入れ替え、お茶をいれる。

 食事を作り、必要なものを整えたら、あとは自分の好きなことをする。


 そんなある日、棚の奥にしまっていた道具箱を見つけた。


「あ……これ、ずっと出せてなかったな」


 中には、布や糸、細かな道具がきれいに収められていた。

 この世界に来てからは住まいを整えたり、生活に必要な物をそろえたりするのに忙しくて、好きだった人形作りやドールハウス作りにはなかなか手をつけられずにいた。


 けれど、今なら時間もある。


「よし。久しぶりに作ろう」




 愛菜は作業台を片づけ、道具を並べた。


 最初に作るのは、手のひらに乗る小さな人形。

 その次は、両手で抱えられるくらいの人形。

 そして、その子たちと一緒に遊べる大きめの人形も作ってみたい。


 大きさが違えば、顔の描き方や髪のつけ方、服の形も少しずつ変わる。


「この子には、ふんわりした髪が似合いそう」


 布を切り、形を整え、縫い合わせていく。

 顔をつけるときは、少し緊張した。

 目の位置を決め、表情を描き入れると、無地だった人形に命が宿ったように見える。


「うん、かわいい」


 愛菜はできあがった人形をそっと手のひらに乗せた。


 一体できると、もう一体作りたくなる。

 髪の色を変えたり、目元の印象を変えたり、服をワンピースにしたり、上着を着せたり。


 作業台の上に、少しずつ個性の違う人形たちが増えていった。




 人形ができたら、次はその子たちが暮らす場所が欲しくなる。


「この子たちのお部屋も作りたいな」


 愛菜は人形の大きさを確かめながら、ドールハウスの設計を始めた。


 大きな人形が使う部屋は、家具も少し大きめに。

 小さな人形のためには、細かな家具をそろえる。


 小さな椅子。

 机。

 棚。

 ベッド。


 ひとつずつ形を作り、置いてみては高さを調整する。


「この椅子、ちょっと大きいかな……」


 そう思えば、魔法で少しだけ縮めたり、角を丸くしたりする。

 直した家具をドールハウスに置くたび、部屋が少しずつ整っていった。


 人形に合う小物も作った。

 小さなカップや本。

 かごやクッション。

 テーブルの上に置く食器まで、ひとつずつ手を加える。


 完成した部屋に人形を座らせると、愛菜は自然と笑顔になった。


「ここで遊んでいるところ、かわいいだろうな」




 人形作りを楽しんでいるうちに、愛菜は自分で使う小物も作りたくなった。


 まずは巾着。

 布の組み合わせを考え、使いやすい大きさに縫い上げる。


 次はシュシュ。

 髪につけたときの雰囲気を考えながら、色や布のやわらかさを選んだ。


「これは普段使いしやすそう」


 できあがったシュシュを手首に通してみる。

 派手すぎず、けれど地味でもない。

 ちょうどいい仕上がりに、愛菜は満足そうにうなずいた。


 人形の服を作る細かな作業と、巾着やシュシュのような普段使いの小物作り。

 どちらも楽しくて、作業台の上には少しずつ作品が増えていく。




 夕方になっても、愛菜は作業をやめたくなかった。


 けれど、無理をせず、道具を片づけてからお茶をいれる。

 今日作った人形たちを棚に並べ、ドールハウスの小さな家具を眺めた。


 生活を整えるために始めた工房兼住居は、いつの間にか、好きなものを作るための場所にもなっていた。


「やっぱり、作るのって楽しいな」


 人形も、ドールハウスも、巾着も、シュシュも。

 手を動かすたびに、自分らしい時間が戻ってくるようだった。


 窓の外が夕暮れ色に染まるころ、愛菜はできあがった小さな人形を棚に飾った。


 明日は、この子に合う鞄を作ろう。

 それから、ドールハウスの食卓に置く小さなケーキも。


 そんなことを考えながら、愛菜は穏やかな笑みを浮かべた。

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