第五十四話 フィー助と代わりのきく不安
標準語の、淡々とした、佇まい。
フィーンド・フィー助。
フィー助
「お疲れ様です」
「量産型バイト芸人の、フィー助です」
四郎
「量産型?」
フィー助
「ええ」
「……」
「俺みたいなの、たくさん、いるんです」
「……」
「だから」
少し、声が、沈む。
「正直」
「俺が、いてもいなくても」
「同じなんじゃないかって」
「思うことが、あります」
ドゴォォォォォォン……
弱々しく、結界が、発動する。
【代替可能結界】
発動。
世界中で。
「自分の代わりは、いくらでもいる」という無力感が、広がる。
『自分が辞めても、誰かが代わりをやるだけ』
『替えのきく存在だと、思われている』
『自分にしかできないことが、何もない』
四郎の心にも、その無力感が、染み込む。
HP
30000000
↓
16000000
フィー助
「俺は」
「……」
「いつも」
「『誰でもいい仕事』を、やってきました」
「……」
「だから」
「自分の存在価値が」
「分からなくなることが、あります」
四郎は、フィー助の、淡々とした表情を、見つめた。
四郎
「フィー助」
「……」
「同じ仕事をしてても」
「お前のやり方は、お前だけのものなんじゃないか」
フィー助
「……」
「俺だけの、もの?」
四郎
「うん」
「……」
「誰かと、代わりがきく仕事でも」
「お前が、その仕事をしてる時間は」
「お前にしか、作れないものだと思う」
静寂。
フィー助の、淡々とした表情に、わずかな、変化が、現れた。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第五十四奥義。
湿拳・かけがえなさ拳
効果。
『代替可能性への不安を、その瞬間のかけがえなさへの気づきに変える』
『地味な仕事にも、その人だけの価値があると示す』
四郎
「行くぞ!」
フィー助
「俺、代わりがきく存在なんです!」
四郎
「お前にしか作れない時間があるぞぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
フィー助の、淡々とした表情に、わずかな、温かみが、宿る。
フィー助
「俺……」
「……」
「今の仕事、もう少し、丁寧にやってみます」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【フィー助を浄化した】
経験値+380
笑石のかけら獲得
称号獲得
『かけがえなさに気づいた者』
四郎
「五十四体目……!」
ヌラリ翁
「これで」
「悪魔区、全十三体、終わりじゃ」
四郎
「やった……!」
ヌラリ翁
「次は」
「いよいよ、怪獣区じゃ」
「ここからは」
「お前さんの世界の、怪獣たちにも、似た存在が、待っとる」
地面が、激しく、揺れた。
ズシン。
ズシン。
ズシン。
巨大な、足音。
江戸町人語の、豪快な声。
ゴジラ芸人・ゴジ郎
「待たせたな、坊主」
「俺は、大御所ドッキリ破壊専門の、ゴジ郎だ」
「……だが、正直、壊すことしか、能がねぇって、言われ続けてきたんだ」




