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黄昏の箱庭  作者: 天音凛
第四章・昴~君想う、禁断の黄昏~
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承-2.食事、強行

 今この場に集まっている人達は、本来なら敵対していた。

 奈落の民だった荻と椿さんは居なくなってしまったけど、槐君だけじゃなく、長である朧さんも居る。

 そして、皆揃って食事中……。

 ゆっくり食べてる時じゃないかもしれないけど、戻って来た朧さんが、“話の前に何が何でも食事する”と言って引かなかった。

 何故か蛍が率先して準備をし、私は槐君と二人、お客様のように鎮座しているしかない状態だ。


「ヒナタ、片手が使えないでしょ? 何が食べたい?」

「あ、大丈夫だよ蛍。そんなに気を使わないで――――」


 と言った瞬間、眉尻を下げて瞳を潤ませる蛍。


 ……色々あったから、蛍なりに何か役に立ちたいのかもしれない。

 食べづらい状況だから、槐君も気にしちゃうかもしれないし、ここは蛍に頼ってしまった方がいいかな。


 ヒナタは戸惑いながらも、一つのおかずを指差す。


「……大根の炒めものが食べたい」

「! うん!」


 その言葉に落ち込んだ表情が消し飛び、いそいそとお皿に大根を載せる。

 しかし、直ぐには渡さず小さく分けると、その一つをヒナタの口元に持っていった。


「はいヒナタ、口開けて?」

「え、えーと……」


 輝かしい笑顔を浮かべる蛍に、ヒナタがどうしようか迷っていると、昴と目が合った。


 さっきから昴さんの眼光が鋭い。

 たまにチラリと朧さんを見たりしてるけど、まったくその視線に気付かないで、もくもくと食べてる。

 だから、結局その視線は私に戻ってくるんだよね。

 何だろう……この、急かされている感じは……。


 前には満面の笑み。

 斜め向こうからは謎の攻撃。

 観念したヒナタは、“パクリ”と差し出されたおかずを口に含んだ。


「美味しい?」

「う、うん……」


 正直味がよく分からない。

 朔さんの料理だから美味しくない訳ないけど、ゆっくりと味わう雰囲気じゃないよね。

 ――――二人を除いて。


「あ、これ美味しい。煌、もっとちょうだい」

「おーこれか? ほい」

「ん、ありがと」


 普通に食べさせてもらう槐と、せっせと世話をやく煌。

 それを見てますますやる気を出す蛍。

 気付けばちらほら食べ終えている者もいるようであった。


「……食が進んでいないな」


 朧が食後のお茶を啜り、不思議そうな表情をしている。

 そして、蛍が差し出しているおかずとヒナタを見比べると、深く頷いた。


「蛍、お前が全然食べていないから、ヒナタが気にしている。……俺がやろう」

「そうだったのヒナタ? ごめんね、僕も食べるから安心して?」


 違ーう!


 ヒナタの心の叫びが聞こえるはずもなく、蛍はすんなりと身を引く。

 代わりに朧が若干嬉しそうな表情をしつつ、おかずを差し出した。


「さぁ、遠慮するな」


 朧さんのそんな輝かしい表情見たことないよ……。

 そんなにやりたかったのかな……よく分からない人だ。


 ここまでくると、恥じらっているより早く食べて終わらせた方がいいと判断し、差し出されるおかずをもくもくと食べる。

 “やっぱり、気にして食べづらかったんだね”なんて言う蛍に、朧は何度か頷いてほんの少し微笑んだ。


「レ、レアだ……朧様が笑っていらっしゃる……」

「誰かに食べさせるなんて初めてだから、楽しいだけじゃないのか?」


 何故か感動している槐に、呆れ顔の煌。

 “分かってないなぁ、煌”

 “何が?”

 と、会話が続く中で“カチャ”と箸を置く音が響く。

 一斉に会話が止んで、皆が音の方を見ると、険しい表情をした昴がヒナタを無言で見ていた。


「昴様、お口に合いませんでしたか?」


 食事はあまり進んでいなかったが、心配した朔の問いかけに首を振る。


「……食べ終わるまで待つつもりだったが、限界だ。後で好きなだけ食べさせてやるから、今は一旦終わりにしてくれ」

「……? はい、大丈夫ですよ?」


 つまり、さっきの視線は結局急かしていたと。

 でも、長くなりそうだから待てなくなったと。

 ――そもそも、私そんなに食い意地張ってないよ、昴さん。


 食事を中断されて、不服そうな顔をしていると判断したのか、昴はチラリと朔を見る。


「後で、デザートもつけてやってくれ」

「畏まりました。良かったですね、ヒナタさん」

「は、ははっ……ありがとうございます」


 ――と、言ったものの……違うんだけど……私の事大食いとか思ってないよね?


 モヤモヤしていると、槐と煌が苦笑いしている事に気付く。

 そして、“分かってる”と言わんばかりに頷いた。


 あ、やっぱりこの感覚、懐かしい。

 同じ世界の三人だからかな?


 昴が笑っている三人に“意味が分からない”と顔を歪め、その様子を微笑ましく見ている朔。


 ――――しかし、和やかな雰囲気はここまでだった。


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