小話.朧2
薄暗い部屋の中で紅い二つの瞳がゆっくりと開く。
ここには今俺しかいない。
遡る事数日前――――荻に続き、椿までもが破滅の神の影響を受け、そこで俺にとって、あってはならない事が起きてしまった。
それは――――ヒナタが死にかけた事。
「あの四人なら何とかなるかと思ったが……所詮は人間か……」
封印はほとんど壊れ、破滅の神の干渉はこれまでにないほど高まるだろう。
暗く何もない殺風景な畳張りの部屋を見渡す。
ここは、ヒナタには似合わない。
ヒナタの黄昏に似た淡い橙色の髪は、明るい陽の下でこそ美しく輝く。
――――だが、この屋敷は薄暗く、陽は届かない……。
それでも、手の届かない所で全てを失うくらいなら、俺の傍がまだ安全だろう……。
“……朧! 待ってよ、朧! どうして――――……”
頭の中であの時の蛍の声が響く。
“ヒナタを守る”その一点は俺と意見が一致している。
だが蛍……お前は最悪自分を犠牲にしてでも、ヒナタに何も言わず、助けるつもりだろう。
そして、最後は俺の傍で、この世界と共に消えるつもりか……?
――――そんな事、望みはしない。
今度は俺が二人共守ってやる……俺のやり方で―――――――。
…………
………………
……………………
「うわー、相変わらず最悪な性格してるよね。――――ああ、仕方無いよね、バカだから分からないんだ。バ・カ・だ・か・ら・!」
「んだと!?」
「バカ。本っっ当にバカ。――単細胞ばか」
「バカはてめぇだ! バカバカ言いやがって! 毒舌仮面!!」
……あの二人は何をしているのだろうか?
空間を歪め、ヒナタの所へ行かせた槐の様子を映しだす。
しかし、お互いを貶し合う二人の様子に俺は軽く溜め息をつくと、槐と精神を繋げて語りかけた。
(槐、何を遊んでいる?)
(え、あっ! お、朧様!)
(今日は帰って来い)
(も、申し訳ありません! すぐに連れて……)
(帰って来い)
(…………はい、分かりました)
有無を言わさず帰還の命を出すと、明らかに落ち込んだ様子が感じ取れた。
冷たく言い過ぎただろうか……?
“朧、僕に冷たい。僕だって友達なのに”
“?”
“蛍、朧は冷たくないよ! まだ、覚えてる言葉が少ないからしょうがないよ! ね? 朧”
幼い頃の二人に出会って少したった時にした、会話の思い出がよぎる。
あの頃の三人と、何も変わらない。
“……朧、何考えてるの?”
“お前とは違うやり方を考えている。蛍とは意見が合わないからな”
“どうしてそんな事言うの? 待って……朧……朧っ!”
……すまない、蛍。
やはり、言葉選びは上達していないようだ。




