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黄昏の箱庭  作者: 天音凛
第三章・煌~対なる扉、想いの狭間で君を待つ~
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小話.朧2

 薄暗い部屋の中で紅い二つの瞳がゆっくりと開く。

 ここには今俺しかいない。


 遡る事数日前――――荻に続き、椿までもが破滅の神の影響を受け、そこで俺にとって、あってはならない事が起きてしまった。

 それは――――ヒナタが死にかけた事。


「あの四人なら何とかなるかと思ったが……所詮は人間か……」


 封印はほとんど壊れ、破滅の神の干渉はこれまでにないほど高まるだろう。


 暗く何もない殺風景な畳張りの部屋を見渡す。


 ここは、ヒナタには似合わない。

 ヒナタの黄昏に似た淡い橙色の髪は、明るい陽の下でこそ美しく輝く。

 ――――だが、この屋敷は薄暗く、陽は届かない……。

 それでも、手の届かない所で全てを失うくらいなら、俺の傍がまだ安全だろう……。


 “……朧! 待ってよ、朧! どうして――――……”


 頭の中であの時の蛍の声が響く。 

 “ヒナタを守る”その一点は俺と意見が一致している。

 だが蛍……お前は最悪自分を犠牲にしてでも、ヒナタに何も言わず、助けるつもりだろう。

 そして、最後は俺の傍で、この世界と共に消えるつもりか……?

 ――――そんな事、望みはしない。

 今度は俺が二人共守ってやる……俺のやり方で―――――――。


 …………

 ………………

 ……………………


「うわー、相変わらず最悪な性格してるよね。――――ああ、仕方無いよね、バカだから分からないんだ。バ・カ・だ・か・ら・!」

「んだと!?」

「バカ。本っっ当にバカ。――単細胞ばか」

「バカはてめぇだ! バカバカ言いやがって! 毒舌仮面!!」


 ……あの二人は何をしているのだろうか?


 空間を歪め、ヒナタの所へ行かせた槐の様子を映しだす。

 しかし、お互いを貶し合う二人の様子に俺は軽く溜め息をつくと、槐と精神を繋げて語りかけた。


(槐、何を遊んでいる?)

(え、あっ! お、朧様!)

(今日は帰って来い)

(も、申し訳ありません! すぐに連れて……)

(帰って来い)

(…………はい、分かりました)


 有無を言わさず帰還の命を出すと、明らかに落ち込んだ様子が感じ取れた。

 冷たく言い過ぎただろうか……?


 “朧、僕に冷たい。僕だって友達なのに”

 “?”

 “蛍、朧は冷たくないよ! まだ、覚えてる言葉が少ないからしょうがないよ! ね? 朧”


 幼い頃の二人に出会って少したった時にした、会話の思い出がよぎる。

 あの頃の三人と、何も変わらない。


 “……朧、何考えてるの?”

 “お前とは違うやり方を考えている。蛍とは意見が合わないからな”

 “どうしてそんな事言うの? 待って……朧……朧っ!”


 ……すまない、蛍。

 やはり、言葉選びは上達していないようだ。


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