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黄昏の箱庭  作者: 天音凛
序章・黄昏の番人
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7話.始まりの調べ

久しぶりに執筆……

 目的地の場所は並木道の奥にあった。


 立派な金属製の門がゆっくり開き、その奥の建物が姿を現した。

 ここからでもハッキリと大きな扉と窓がついているのが見える。


――誰だっただろうか、“屋敷”と言ったのは。

 どこをどう見ても、洋館。

 睡蓮の和風な住まいとは真逆の家である。


 誰が建てたんだろう……この世界に建築業を営んでいる人達って居るのかな……。


 “ガコン”という、いかにも重量のある音をたてて丈夫な扉が開く。

 他の四人に続いて中に入れば、想像を上回る光景が広がった。


 何、ここ……


 広々とした玄関ホール。

 二階に上がる大きな階段。

 天井に輝く美しいシャンデリア。

 階段が左右に分かれるスペースの壁には、昴の大きな肖像画。


 ありえない状況に、ヒナタは放心状態で玄関ホールに立ち尽くしてしまった。


「朔、こいつに部屋を用意しろ」

「承知致しました。空いている部屋がございませんので――増築して参ります」


 ――――――増築!?


 朔の言葉にヒナタは放心状態から回復した。


「朔さん、増築って誰が……」

「私が、に決まっております」

「……誰と?」

「私一人、に決まっております」


 え? 一人で増築って無理だよ!?


「わ、私もお手伝いしま――」

「邪魔ですので、御断り致します」


 ヒナタが言い終わらないうちに朔はピシャリと拒否し、スタスタと歩いて行ってしまった。


 す、素早い拒絶……。


「朔なら一人で十分だ。お前がいると邪魔になる。ここではある程度の行動は許すが……さっきも言ったように、俺には関わるな」

「ちょっ……」


 側にいた昴は言いたい事だけ言うと、階段を上がって二階に行ってしまった。


「な、なんて人なの……」

「まあ、いつもの昴だ。氷の主だな」


 煌は首を縦に振り頷く。


「ただ、朔なら一人で本当に大丈夫だぜ。この館も朔が数時間で改築したからな。元々は睡蓮みたいな屋敷だったし」

「え」

「ほら、帰ってきた」


 やっぱり私の世界とは何かが違うらしい。

 汗一つかかず戻ってきた朔は、優雅にお辞儀をする。


「部屋の用意が出来ました」

「……ありがとうございます」


 言葉使いは丁寧だが、感情は一切読み取ることはできなかった。




***




 煌と蛍をホールに残し、朔に付いていく。

 道すがら、生活に必要な場所を案内してもらい、館の一階にある一番端の部屋に着いた。

 廊下の端だからか、薄暗い。

 朔がドアを開けると、小さめな白い部屋が見える。


「ここが貴女の部屋です。家具は最低限置いておきましたので、他に必要な物があれば言って下さい」


 軽く部屋の中を見渡した。

 小さなクローゼットに机と椅子。

 端に質素なベット。

 窓が一つあり、カーテンが風に揺れている。


「あの、皆さんは普段何処にいるんでしょうか?」

「私達の部屋は二階にありますが、昴様より二階は立ち入り禁止にするよう、仰せつかっております。二階には行かないようにして下さい」


 私、完全に異物扱いされてるよね……

 ある程度の行動とは一階部分だけらしい。


「何かある場合は、玄関ホールの階段横にある、小さな部屋に来て下さい。そこは私の執務室ですから」

「はい……分かりました」


有無を言わせない圧力に、ヒナタは了承の返事しか出来なかった。

その言葉を聞いた朔は足早に部屋を出る。


「――――それでは、後はご自由に」


 ドアが閉まると同時に静けさが身を包んだ。

 ヒナタはゆっくり部屋を進み、ベットに腰をかける。

 冷たいシーツの感触がやけに感じ取れた。


 この世界に来て色々あったから、気にする余裕無かったけど……私、神隠しにあったんだよね?

 戻れないのかな……ずっとこの世界に――この部屋にたった独りでいるのかな。


 胸が苦しくなり、視界がだんだん歪んでくる。


「……そんなの、やだな。今日は、誕生日だったのに――お父さん、お母さん、彰太、美祢……皆に会いたいよ――――」


 ヒナタの小さな呟きと共に、瞳から涙がこぼれる。

 いつもは美しいと感じる黄昏の光が、今はただ寂しさを感じさせるだけであった――。










やっと、ここまできました……(汗)

次からは一人一人個別に展開していく予定です。

よければ、お付き合い下さいませ。

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