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第十三話 戦いが終わっても…

ミネルバの久遠氷華閃によって、敵は原子レベルで氷結し、そのまま砕け散った。原子レベルの氷の粒は、クリスタルの淡い光を受けながら刹那の内に煌めき、すぐに消え入った。夜空に咲く大輪の花の光より、さらに短く儚い光の芸術に、一同はしばし見入っていた。


【魔理沙】

「……と、そうだ!こーりん!アリス!」


魔理沙が思い出したように、二人が閉じ込められていたクリスタルの方を振り向くと…ちょうどそのクリスタルにヒビが入り、砕け散ったところだった。おかげで、二人も無事に解放された。


【魔理沙】

「こーりんっ!」


慌てて駆け寄る魔理沙…だが、二人ともまだ意識はない。まぁ、気絶しているだけで、外傷などは無いようだ。命に別状はないだろう。

と、その時…


ゴゴゴゴゴ…


【ミネルバ】

「…あ?」


広間全体が大きく揺れ始めた。震度は、あっという間に大きくなり、みんな立っているのがやっとの状態だ。


【拓磨】

「…もしかして、崩れるんじゃないか?」


顔を引き攣らせながら、拓磨がそんな不吉な事を言うと同時に…天井に大きなヒビが入り、直径一メートルほどもある岩が落下してきた。

幸い、誰も下敷きにならなかったが…このままでは時間の問題だった。


【ミネルバ】

「逃げろぉっ!」


ミネルバが叫んだ時には、ほたるが空間転移で魔理沙と霖之助、アリスらを自分の傍に移動させていた。気を失ってる二人はいいが、魔理沙は二度も立て続けに空間転移されて、かなり気持ち悪そうだ…が、気にしてる場合ではない。


【拓磨】

「皆、早くたるちゃんの周りに!」


拓磨も急降下して、ほたるの後ろに着地した。

何が何だか分からない霊夢だったが、言われた通りほたるの下へ駆け寄r…おうとした所に、さっきより大きい岩が天井から降って来た。


【魔理沙】

「霊夢!」


【霊夢】

「っ!」


あわや下敷きかと思われたが、落下する岩より速く動いた黒い影が、巨大なその岩を叩き割った。しかし、砕けたとはいえ、それでも破片は人間の頭ぐらいの大きさだ…当たったら大ケガになるだろう。


【ミネルバ】

「伏せろっ!」


【霊夢】

「え!?」


霊夢はその場に屈められ、その上にミネルバが覆いかぶさった。鎧に覆われたミネルバの胸板に頭を押し付ける霊夢は、明らかにミネルバに破片が当たっているのを感じ取った。


【霊夢】

「ちょ、ちょっと!ミネルバ!?」


【ミネルバ】

「ったく、ボケッとしてんな!死ぬぞ!」


破片の落下が止むと、ミネルバは霊夢の手を取りすぐさまほたるの下に駆け寄った。


【拓磨】

「よし、たるちゃん!とりあえず外まで頼む!大至急!」


これで助かる…皆そう思ったのだが…


【ほたる】

「申し訳ありません、マスター…」


【拓磨】

「な、何だ?どうした?」


【ほたる】

「……外の空間座標を取れません…恐らく、ここに来るとき通ったあの結界の影響かと…」


【拓磨】

「……マジで?」


とか言ってる所に、またしても天井の岩が降ってきた。それも、彼らを纏めてペシャンコにしてしまえそうなほど大きな岩だ。


【拓磨】

「ちょっ!たるちゃん!何とかしてぇっ!」


【ほたる】

「話しかけないで下さい…何とか座標を取ろうと集中してるんですから…」


【拓磨】

「たるちゃん冷たい!」


【魔理沙】

「お、おい!漫才やってる暇があったら、飛んで逃げた方が早いんじゃないか!?」


【ミネルバ】

「いや…たぶん出口そのものが無いんだ。あの結界は一方通行だったからな。」


【魔理沙】

「何だよ、それ!?ぜ、ぜあああああっ!」


ほたるは懸命に座標を取ろうとしているが、もはや間に合いそうにない…このままでは、全員岩に潰されてペシャンコだ。

…已むを得まい…。


【ほたる】

「っ!?」


【魔理沙】

「ぜ?ま、また…」


【霊夢】

「きゃっ!」


【ミネルバ】

「くっ!」


【拓磨】

「ふぅ~…ギリギリセーフだ、たるちゃん。」


【ほたる】

「……」


ギリギリの所で、空間転移で脱出した彼ら…出た先は湖のほとりだ。そこに、ミネルバと、拓磨、霖之助…その上から霊夢、アリス、魔理沙が降りた。


【拓磨】

「ぐぇ…たるちゃん?もうちょっと何とか…」


【霊夢】

「いたた…あ!み、ミネルバ!ごめん、大丈夫!?」


【ミネルバ】

「あぁ…」


全員、ケガはないようだ。

…ダミー2カメ君からの映像でそれを確認してから、私はダミーを消去して家の外に出た。


【藤堂】

「おや、ミネルバ先生?それに、巫女様も…どうされたんです?」


…何食わぬ顔で、家の前で組体操に失敗したような状態の彼らに声をかける。先ほどまでの彼らの闘いなど、まるで知らないかのように…いや、それを私は知っているわけがないんだ。少なくとも、彼らにとっては。


【ミネルバ】

「別にどうもしねぇよ…一回死んだ事を除けばな。」


【藤堂】

「はぁ……とりあえず、お茶でも飲んで行きますか?」


【ミネルバ】

「…そうさせてもらう…流石に、一息つきたい気分だ。」


【藤堂】

「では、どうぞ…っ、何のつもりですか?」


背中に突き立てられた感触に、一瞬だが息が止まった。顔だけ振り返り見てみると、背後に立つほたるが、右手に神通力を込めて私の背中に突き付けていたのだ。


【ほたる】

「…何してるの?」


【藤堂】

「私が先に質問したはずだが?」


【ほたる】

「汚らわしい幻術師が、私たちと対等に話していいとでも?」


憎悪にまみれた声で彼女はそう言うが、もちろん私には、彼女に直接恨まれる理由はないし、当然…


【拓磨】

「ちょっ!たるちゃん!何してるんだ!?」


彼らにとっては尚の事、彼女が暴挙を犯しているようにしか見えないだろう。聡い彼女が、そこまで頭が回らないはずないのだが…。


【藤堂】

「すみません、少し外します。チルノ!」


【チルノ】

「な~に、パパ?」


家の奥から、娘の元気な返事が聞こえてきた。


【藤堂】

「お客さんにお茶を出して差し上げなさい!出来るな?」


【チルノ】

「は~い♪」


…これでよし。


【ミネルバ】

「お、おい!藤堂センセー?」


【藤堂】

「いや、大丈夫。話せば分かります。ちょっと昔、色々ありましてね…彼女とは。」


グッと、より強く拳が突き付けらた。

とりあえず、場所を変えるべきだろう…私は妖怪の山に座標を取り、彼女と共に空間転移した。


【ほたる】

「…ここは?」


【藤堂】

「妖怪の山…と呼ばれています。一般人はまず来ない場所です。まぁ、あまり騒ぐと、もっと怖い連中に文句を言われますがね。」


【ほたる】

「そう…ランス。」


ドスッ




ミネルバside


家主不在の藤堂センセー宅にお邪魔した俺たちは、センセーの娘に…って言っても義理らしいが…アイスティーを出して貰い、ようやっと一息つくことが出来た。


【チルノ】

「アタイってばサイキョーね!」


…まぁ、何か変なガキだが…あまり言うと藤堂センセーに悪いな。


【魔理沙】

「にしても、今回はヤバかったぜ…何だったんだ、あいつ?」


【霊夢】

「……」


霊夢は、さっきから浮かない顔だ。月下の雫のおかげで、もうケガは完治しているはずなんだが…岩盤が落ちてきた時とかに、何処か痛めたんだろうか?

……つーか、何で俺はそんな事まで気にしてんだ?とりあえず、全員命は助かったんだし、それでいいじゃねぇか。


【魔理沙】

「おい、ミネルバ!あんまジロジロ見んなよ!」


【ミネルバ】

「あ?」


霊夢の様子を窺っていた俺に、何故か魔理沙がそんな事を言ってきやがった。その目はまるで…あぁ、そういう事か。

二人の服は、かなりボロボロだった。肩とか、太ももが露出するくらいには…。


【魔理沙】

「…スケベ…」


【ミネルバ】

「アホか…今さらそんなカッコぐらいでたたねぇよ。」


【魔理沙】

「っ!マスタースパーク!」


【ミネルバ】

「おまっ、何処にそんな魔力…ぎゃあああっ!」


ドォンッ ピチューン


しまった…こいつ、中身はめっちゃ純情だった…。


【魔理沙】

「訂正するぜ!スケベじゃない!ドスケベだ!ドスケベ変態紳士だぜ!」


【拓磨】

「ぷっ!久遠の魔獣戦士改め、ドスケベ変態紳士か!ウケる…くくく…」


【ミネルバ】

「てめぇ…」


さっきからずっと窓の外を眺めていた拓磨だったが、黒焦げになって倒れている俺を見下ろし、愉快そうに笑い出しやがった。こいつ、ぜってぇコロす!


【ミネルバ】

「だぁーっ!フザケやがって!何がドスケベ変態紳士だ!誰がてめぇの貧相なセクシーショットなんかで欲情すっかよ!拓磨も、いつまでも笑ってんじゃねぇよ!ツボってんなよ!」


【拓磨】

「だってよ…あははは!」


【魔理沙】

「だ、だ、誰が貧乳だって!お前、一番言ってはイケない事を…」


【ミネルバ】

「はん!何度でも言ってやるよ、このペチャパイ魔女!悔しかったら魔法でも使って、セクシーダイナマイトボインにでもなってみろよ!そしたら、俺もちゃんと女として扱ってやるぜ。」


【魔理沙】

「っ!表出ろ、ミネルバ!手加減なしの弾幕勝負で、ボッコボコにしてやんよ!」


【ミネルバ】

「やってみろ!コツは掴んだからな。今度はそうはいかねぇ…身ぐるみ剥いで、見ったくない貧相ボディーを晒してやるよ!」


【アリス】

「させないわ!」


ドカッ


【ミネルバ】

「っぁ!」


んなっ!?

……俺はたまらずうずくまった…だ、誰だよ?背後から、人の股間をけり上げてきたのは…


【アリス】

「魔理沙のセクシーショットは、私のものよ!」


こいつかぁっ!


【魔理沙】

「おぅ、アリス!良かった、目を覚ましたんだな。」


【アリス】

「えぇ…何やら、魔理沙のピンチを感じて…そう、魔理沙の裸体は、私のも…」


【魔理沙】

「やっぱ寝てろ!マスタースパーク!」


ドォンッ ピチューン


おい、やり過ぎだろ…家の壁に穴が二つも開いたら、耐震性が…いや、その前に…藤堂センセーが帰って来たら、何て言えばいいんだ?




normal side


【藤堂】

「がはっ!」


背中から突き抜ける光の槍…痛覚を幻術でマヒさせたが、ダメージそのものは消えるわけじゃない。


ドスッ ドスッ ドスッ


【藤堂】

「ぐはぁっ!」


幾度もランスで胴体に穴を開けられ、血が傷ついた胃から逆流してくる…肺をやられて呼吸もままならない、これらの状況は何一つ解決していないのだ。

意識が飛びかける…が、彼女は倒れ込む私の髪を掴んで無理やり引き起こし、右手を私の喉にぴったり押し当てた。


【ほたる】

「セイバー!」


ズバッ ブシュゥッ


【藤堂】

「§◆☆Ж∧っ!」


喉笛を掻き切られ、私は悲鳴も上げられずにのたうち回った。

…こうなると分かっていた…神術師が、幻術師に会った時には無条件でこうする事を、知らなかったわけじゃない。むしろ、何度もこういう目には遭ってきた…。


【ほたる】

「苦しい?苦しみ抜いて、死になさい。それが、幻術師に成り下がった、罪の重さなのだから。」


【藤堂】

「……そうだな…私は、生きている事が罪なのかもしれない…だが!君にだけは言われたくない!」


【ほたる】

「何ですって?」


開けられた穴も、斬られた喉も、すぐに塞がっていく…本当に、死体同然でありながら、再生力だけは強い体だ。


【藤堂】

「君とて、彼と従属契約を交わして、彼に神通力を供給してもらい命を繋いでいるんだろう?」


【ほたる】

「どうして、それを…まさか!っ、見ていたのね!私の…私たちの過去も!姿を消し、気配を隠し、ずっと覗いていたのね!汚らわしいっ!」


ドスッ


【藤堂】

「がっ!」


ランスで、再び体を貫かれる…


【ほたる】

「そうやって!人の日常を、歴史を、土足で踏み荒らして!マスターたちの…神聖な、愛の営みまで、覗き見していたんでしょうっ!汚らわしいっ!汚らわしい、幻術師がっ!」


【藤堂】

「ぐはっ!…命惜しさに、彼の奴隷になる事を選んだ浅ましい君に、言われたくないな。従属契約は魂を繋ぐ事で、神通力を共有、供給する契約…君だって、その際には否応なく…」


【ほたる】

「やめてっ!」


私の言葉に、彼女は攻撃を止めて耳を塞いだ。

魂を繋ぐという事は、彼の感情の高ぶりや意識も感じ取ってしまうという事なのだ。


【藤堂】

「…従属契約は、契約相手に身も心も魂までも捧げる絶対服従の契約とも言われている。異性の人間とのみ結べるこの契約は、本来は愛する者同士で結ぶべきもの…それを、既に恋人のいる彼と結んで、命を繋ぐばかりか略奪愛まで目論んでいたんだろ?」


【ほたる】

「違うっ!私は…」


【藤堂】

「例え結ばれなくても…?健気な事だ、涙が出るよ。だが、その為に苦しみ、孤独の内に死ぬ事になった男がいたんじゃないのか?六百年、ずっと君を思い続けていた男が…」


【ほたる】

「……何を、言ってるの?」


そうか…彼女は知らないんだった。いや、知るよしも無い事だったが。


【藤堂】

「…あの男は、死んだよ。」


【ほたる】

「……嘘よ…信じない…信じるものか!幻術師の言葉など!」


彼女は拳を突き出し、腰を落とした。あれは、貫徹の構え…仕方ない、これ以上は言葉で攻撃しても意味は無さそうだし…打ち合うか。

私も彼女に向け拳を突き出し、ゆっくり拳を引きながら腰を落としていった。


【ほたる】

「…彼と最後に会ったのは、ついこの間よ…あの子を助けに行こうとして、でも出来なかった…八つ当たり気味に別れて帰って来たけど、あの時の彼にはまだまだ余力が残っていた。彼ならまだ何十年も生きられるだけの神通力が…彼が死んだなんて、信じない!」


【藤堂】

「…そこまで思っていたのなら、ただ大人しく待っていれば良かったものを…そうすれば、あの男も君も…あの子も、不幸な思いをせずに済んだかも知れないのに…」


【ほたる】

「っ!黙れっ!」


【藤堂】

「罪を自覚しながらも、己が命だけは惜しみ続ける…卑怯なのは、お互い様だと言っているんだ。」


互いに、力を最大まで溜めた所で…同時に、仕掛けた。


【ほたる&藤堂】

「「貫徹!」」


…ズガァンッ




レミリアside


【フラン】

「るー♪」


【レミリア】

「ほら、動かないの。」


今夜は仲秋の名月というやつらしいので、この紅魔館で月見パーティーを開く事にしていた私は、咲夜に用意させていたドレスを妹に着せるため、悪戦苦闘していた。何しろ、妹はじっとしていられない性格で、中々これが手間なのだ。しかしながら、この時間を楽しんでいる私もいる。一昔前なら、考えられなかった事だからだ。


【レミリア】

「はい、いいわよ。」


【フラン】

「る~♪」


やっと着せ終えると、フランは満足そうに羽をパタつかせ、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。

その様子に、思わず目尻がだらしなく垂れ下がりそうになったが…ふと、窓の外から見える妖怪の山の方に目を向けた。


【レミリア】

「…直接の関わりは薄いのに、中々どうして因縁深い二人ね…面白い因果律だわ。」


少し興味が湧いたので、私は二人の運命の足跡…つまり過去を、覗いてみる事にした。あまりいい趣味じゃないとは自覚しているのだけれど、未来も見えてしまう私には、霊夢との弾幕勝負以外にこれくらいしか刺激的な暇潰しがないのだ。

二人の過去を見る中で、私は一人の子供の姿を見た。面白い事に、その少年は私と同じ能力…いえ、私より確かで、絶対的な能力を持っていた。ただ…


【フラン】

「る?」


その力の使い方はあまりに稚拙で、あまりにお人好しで、あまりに優しすぎた…己が身を滅ぼすほどに。

でも、だからこそ…こんな気持ちになるんでしょうね。愛しい妹を抱き締めながら、心が今までになく愛に満たされるのを、私は感じていた。そんな私の気持ちを察したのか、フランもきゅっと私を抱きしめ返してくれた。


【フラン】

「る、る~♪」




normal side


辺りを見回すと、木々がかなり薙ぎ倒されていた。正面から打ち合った為、貫徹の衝撃が行き場を失い辺りに拡散したのだ…。


【藤堂】

「…今度、射命丸を通して、山の妖怪や神様たちに謝罪しなければな。」


もっとも、謝罪ぐらいで許して貰えるか不安ではあるが…。

それよりも…彼女がこれで引き下がってくれるかの方が、私にとっては死活問題かもしれない。


【ほたる】

「……」


何しろ、彼女は何食わぬ顔で…いや、相変わらず憎悪に満ちた目で、まるでゴミか虫けらでも見るような目で、私を睨んでいるのだから。

私はと言うと…右腕の肉がグチャグチャになって飛び散って、剥き出しの骨も見て分かるほどひび割れていた。小指の骨なんて、砕けて破片が何処に行ったことやら…。逃げずに打ち合った事を、激しく後悔している今日この頃だよ…。


【ほたる】

「…痛み分けね…」


【藤堂】

「?」


立ち込めていた土煙が晴れると、やっと彼女の全身の状態が見てとれた。

彼女の右腕は、破損していた。


バチッ バチバチッ


肩から下が、無くなっていた。いや、彼女の後方五メートルの位置に転がっていた。彼女の肩口からは、幾本ものコードや金属板が覗き、高圧電流が放電して火花が散っている。

…急に、彼女の瞳から一切の感情が消えた。


【ほたる】

「自動修復モード…」


突然、彼女の肩からコードが飛び出してきて、転がっていた右腕を捕まえ引き寄せてきた。そして右腕の傷口から中に侵入し、内部で接合しくっついていく…。五分ほどして内部修復が終わると、今度は外膜である人口皮膚が接合し始め、あっという間に傷口はきれいに消えてしまった。


【ほたる】

「動作テスト…」


呟くと同時に、今度は機械的な動きで右肩を一回りさせ、逆にも一回転…肘、手首、最後に手を握ったり開いたりを繰り返すと、やっと私への憎悪を再燃させた目で睨みつけてきた。


【ほたる】

「……それだけの力を持ちながら…何故、彼を見殺しにしたの?」


【藤堂】

「…助ける義理なんか無い…君たちが私を忌み嫌うように、私もあの男が個人的に嫌いだったというだけだ。」


一瞬、彼女の殺意が増幅したように見えたが…すぐに彼女は握りしめていた拳を解き、溜め息を吐いた。


【ほたる】

「…貴方の言う通りかもしれませんね…私は、卑怯者です。今さら…こんな喪失感を覚える資格、私にはもう無いのに……」


【藤堂】

「…旧い友を亡くしたんだ。哀惜の念くらい抱くだろう?」


【ほたる】

「……はぁ…お茶を飲み損ねました。」


…そういえば、娘はちゃんとお茶を淹れられたんだろうか?今さらながら…不安になってきた。

腕はまだ再生に時間がかかるので、とりあえず幻術で誤魔化すか。とにかく、早く帰らなければ心配だ。


【ほたる】

「…親バカ…」


【藤堂】

「普通だ!」


何で皆してそれを言うかね?何度も言っているが、私は親バカではない!

…なんて思って帰って来たわけだが…そんな事はどうでも良かった。


【チルノ】

「あ、パパー♪おかえり~♪」


【藤堂】

「あ、あぁ、ただいま。何があった?」


娘が元気に出迎えてくれたが、別に表にまで出てきたわけではない。家の中から出迎えたのだ。何しろ、家にデカい大穴が空いているんだ。家の中から元気に手を振っている娘の姿が、否応なくばっちり見えるわけだ。


【藤堂】

「…何だ、この地獄絵図は?」


家の中は、めちゃくちゃになっていた…ミネルバは何やら股間を押さえて倒れているし、霊夢は何か空気重いし、魔理沙は八卦炉を片手に息を切らしているし、アリスは何故か外傷が増えているし、拓磨は腹を捩らせているし、霖之助は…まだ意識は無いのか。


【藤堂】

「チルノ?お茶に何か変なものでも入れたか?」


【チルノ】

「ううん。パパも飲む?」


私は娘の差し出したアイスティーを一口飲んでみた。ふむ、味が少し薄いだけで、何もおかしな物は入っていないようだ。むしろ娘にしては頑張った方だろう。


【藤堂】

「うん、上手に淹れられたな。偉いぞ。」


【チルノ】

「わ~い♪」


【ほたる】

「やっぱり親バ…」


【藤堂】

「う、うるさいっ!」


しかし、となると…本当に何があってこうなった?


【チルノ】

「ねぇ、パパ?」


【藤堂】

「どうした、チルノ?」


【チルノ】

「んと…ペチャパイって何?」


……。

はて?ペチャパイ…アップルパイなら作り方ぐらい知ってるが…そんなパイは聞いた事もないな。いやいや、そのパイじゃないだろ。俗に、胸の小さな女性を蔑視する言葉だったと記憶しているが、娘の前でそんな言葉を使った覚えはないし、耳にさせないよう気をつけているつもりだ。

なら、何でこんな言葉を?


【藤堂】

「…チルノ、そんな言葉は覚えなくていいんだが、誰が言っていたんだ?」


【チルノ】

「んと、アイツ。パパの、同ヨウ?」


同僚と言いたいのかな?なるほど、つまり…


【ミネルバ】

「…い、て、て……あの変態アマ…思いきり蹴りやがって…」


【藤堂】

「ミ~ネ~ル~バ~せ~ん~せぇ~!」


【ミネルバ】

「げっ!藤堂センs…いや、違う!壁の穴は俺じゃねぇ!魔理沙だ!」


【藤堂】

「そうですか。貴重な証言をどうも。それはそうと…ミネルバ先生?ペチャパイ、とはどういう意味で?」


【ミネルバ】

「は?」


【藤堂】

「いえ、娘にさっき聞かれまして…いやはや、どう説明したものかと思いまして…」


【ミネルバ】

「どうって、そんなn……あ~、いや、その~……」


私が言わんとしている事が分かったのだろう、ミネルバの表情が青ざめ、凍りついていく。


【ミネルバ】

「い、いや!悪かった!思慮が足りなかった!反省してる!マジで!」


【藤堂】

「…五分ほど、溺れて来るといい。」


【ミネルバ】

「待てって!うわっ!うわああああああああっ!」


やれやれ、今日はとんだ一日になってしまったな。

壁に空いた穴と、ボロボロになった右腕を見て、溜め息を吐きながらしみじみ思った。


【ミネルバ】

「一番散々なのは俺だぁっ!ぎゃあーっ!汗臭い!暑苦しい!やめろぉーっ!」




~おまけ1・キャラ設定~


拓磨・F・ケニー~異世界の英雄~

身長:177㎝

能力:人の本音と本質を捉える程度の能力


遠い異世界、ピサンテーラという世界に住む青年。神によって与えられた光神戦士の力で、幾度もピサンテーラの危機を救った英雄。生まれた時から完全無欠の主人公体質で、家族、恋人、仲間たちに恵まれたリア充。ちなみに、ミドルネームのFはフォードという。



ほたる・Y・スピカ~命司る神術師~

身長:150㎝

能力:命の水(月下の雫)を作れる程度の能力


ピサンテーラ在住のアンドロイド神術師。生まれ故郷は別だが、帰るつもりは毛頭ないだろう。強力な神術師に与えられる神宝の一つ、神杯・愛月を所有する。愛月は月下の雫を作るのに必要なアイテムの為、彼女は月下の雫を作れる唯一の神術師だ。それ故に、神術師たちの間で彼女は、特に有名な存在である。



レミリア・スカーレット~永遠の紅い月~

身長:130㎝

能力:運命を操る程度の能力


紅魔館の主にして、赤い悪魔と呼ばれる吸血鬼の少女。最近、やっと成長期に入ったらしく、昨年から見ると20㎝ほど伸びたとか。カリスマも絶賛上昇中との事で、非常に機嫌が良いという。



フランドール・スカーレット~悪魔の妹~

身長:20㎝

能力:物を壊す程度の能力


レミリアの妹。何でも破壊できる能力を有していたが、その強力な力を持て余し、情緒不安定だった。そこで、霊夢とレミリアによって能力を抑え込む事にした。力も封印され、体も上海並に小さくなったフランは、今や紅魔館のマスコットである。他人の頭によく乗りたがるが、美鈴にのみ胸の上に乗る…母親が恋しいのだろうか。




~おまけ2・忙しい人の為の異聞録~


【拓磨】

「よぅ、ミネルバ。遊びに来たぜ。」


【ミネルバ】

「いや、ピサンテーラから気軽に来れる場所じゃねぇはずだけど…」


【拓磨】

「せっかくだから観光して行こうと思って、一週間くらい滞在してるだけだよ。」


【ミネルバ】

「そうかよ…でも観光するような場所はないぞ?」


【拓磨】

「そうなのか?」


【ミネルバ】

「…そうだ!せっかくだから、山の神社でも行ってみるか?俺もまだ行った事ないし。」


【拓磨】

「おぅ、いいじゃん。皆にお土産がてら、お守りでも買ってこっと。」


【ミネルバ】

「飛んでった方が早いと思うが…」


てくてく…


【拓磨】

「いやいや…っぱ参道を…るいて行か……」


てくてくてく…


【霊夢】

「……ウチだって神社だよ!(悔泣)」


完:守矢神社の出番はまだまだ先。

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