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第十二話 狂いし人形の宴(後編)

無駄に長くなってしまった。反省している。

チルノside


【チルノ】

「~~♪」


【藤堂】

「嬉しそうだな、チルノ。」


【チルノ】

「うん♪」


アタイは鼻歌を歌いながら、パパと一緒にアリスの家に向かっている。というのも、パパがアリスに頼んでくれていた、アタイ用のドレスを受け取りに行く為だ。

え?何のドレスかって?勿論、今夜のパーティーに着て行くドレスだよ。

今夜は満月…って事で、ウチの向かいの紅魔館で開くパーティーに呼ばれたのだ。アタイってばサイキョーね。

で、パーティーに招待されたからには、それなりの格好で行かないと相手に失礼だってパパが…。


【チルノ】

「どんなドレスかな~?やっぱりお姫様系?」


【藤堂】

「……」


【チルノ】

「どうしたの、パパ?」


ふと振り向くと、パパが怖い顔で森の奥を見てた。パパのこの表情は、嫌いだ…不安になるから…山での一件の時も、空飛ぶお城の時も、私が復活した日の帰り道でも…こういう表情をする時のパパは、決まって、一緒にいさせてくれないから…。

危ないのに…アタイも、パパのこと助けたいのに…どうしていつも…。


【藤堂】

「…チルノ、私から離れるな。」


【チルノ】

「……え?うんっ!」


アタイは言われた通り、パパにぴったりくっついて腕にしがみついた。




normal side


…歩きにくい…。

森の奥、正確にはその先の亜空間で、異変の元凶である名も無い人形と戦う霊夢と魔理沙…だがその状況はつい先程から見れなくなってしまった。彼女たちの激しい戦闘の最中、ダミー1カメ君(2カメ?)が流れ弾に当たり消滅したからだ。新しいダミーを送り込んでも、結果は同じだろう。

恐らく大丈夫であろうが、あまりタラタラしている場合じゃないな。訪ねたところで、アリスがいない事は承知しているのだし、さっさと用を済ませて早く家に帰った方がいい。娘の安全の為にも…。


【藤堂】

「急ぐぞ、チルノ。雲行きが怪しくなってきた。」


【チルノ】

「うん。」


腕を掴まれかなり歩きにくいものの、娘と共に出来るだけ魔法の森を急いだ。




魔理沙side


こいつは、ちょっと…いや、かなりヤバいぜ。


【魔理沙】

「マジックミサイル!」


魔力を固めて作ったミサイルを連射してみたが、やはりダメだった。


【名無し】

「フフフ…無駄よ。そんな攻撃じゃ、金剛水晶は砕けない。」


【魔理沙】

「チッ!」


悔しいが、ヤツの言うとおりだぜ。マジックミサイルは着弾と同時に、水晶の壁に吸い込まれるようにして消えちまう。金剛水晶ってのが何なのかよく分からないけど、そういう性質って事なんだろう。

じゃあ、どうする?どうすれば…


【霊夢】

「陰陽玉!」


今度は霊夢が陰陽玉をヤツの周りに撒いた。固い陰陽玉が、ヤツを囲む水晶の壁に激突する。よし、これなら…そう思ったけど、霊夢の陰陽玉も、激突と同時に壁に吸い込まれちまった。


【霊夢】

「そんな…私たちの攻撃が、全く効かない?」


【名無し】

「言ったでしょう。貴方たちじゃ、金剛水晶は砕けないって。さぁ…死になさい!」


ヤバい、また来る!

私と霊夢はすぐさま飛んで高度を上げ、出来るだけヤツから距離をとろうとした…が、それを待たずにヤツを囲んでいた水晶の壁が割れて、細かい破片がもの凄い速さで飛んできた。まるで避ける隙間のない…暴力的な弾幕…それを、私と霊夢は距離をとる事で何とか抜け道を見つけ出し、やり過ごす。天井近くまで逃げても、弾幕同士の隙間は一メートルとない。おかげでどう避けても、膝や肩、頬や脇腹を幾つもの破片が掠めていく…私も霊夢も、すでに服はボロボロだし血が滲んでいる。とても人に見せられた姿じゃない…そういう意味じゃ、霊夢にとってはミネルバがいなくて幸いだったろうぜ。


【霊夢】

「アンタねぇ、少しはスペルカードルールにのっとって戦いなさいよ!弾幕バトルは、殺し合いじゃないのよ!」


【名無し】

「弾幕バトル?何の事かしら?」


霊夢の言葉に、ヤツは首を傾げた。その表情は、惚けているようには見えない。


【名無し】

「殺し合いじゃないのなら、何故戦うの?戦いは殺し合いでしょう?そうなんでしょう、人間って。」


【霊夢】

「何を言って…」


【名無し】

「…私は、小さな村の人々が、魔除けとか厄除けの為に作った人形だった。村の人々は温かく、慎ましく暮らしていた。だけど…この水晶が取れると分かったら、大勢の人間がやって来て…村は滅ぼされ、占領された。皆…殺されたわ。」


ヤツはそんな恐ろしい話を、ゾッとするほどの無表情で口にした。


【名無し】

「人間は好きなんでしょう?殺し合い。だから戦ってるんでしょう?」


【霊夢】

「…違う…違う……」


【魔理沙】

「…霊夢?」


霊夢の様子がおかしい…。顔色が悪いし、瞳から一気に闘志が失せていく…終いには、何かに怯えるように頭を振って、よろよろと後退する有様だ。明らかに普段の霊夢じゃない…どうしたんだぜ?


【名無し】

「違わないわ。人間は殺し合い、奪い合う事でしか生きられない。ずっと…ずっと、そうだったわ!」


瞬間、また無数の水晶の破片を飛ばしてきた。今度は予備動作というか、壁を作らず直接、周りに水晶を生み出して飛ばしてきやがった!おかげで、反応が少し遅れちまったぜ。


【魔理沙】

「ぐ、ぐぅっ!」


クソ!急所を外すのが精一杯だ…腕とか足とか掠めたところが痛いの何のって…。


【霊夢】

「きゃああああっ!」


【魔理沙】

「れ、霊夢!?」


何てこった!霊夢のヤツ、今のほとんどモロに喰らっちまったのか?血まみれになった霊夢は、そのまま真っ逆さまに落下していく。いや、待て待て!シャレになってないぜ!


【魔理沙】

「霊夢ーっ!」


全速力で急降下し、寸でのところで霊夢の足を捕捉する事に成功したぜ。しかし霊夢は逆さまのままで、意識が無いようだ。お~い、霊夢。パンツ丸見えなんだけど~。


【魔理沙】

「って、ぜああああっ!」


油断してたら、また撃ってきやがった。マズい、マズい、マズいっ!霊夢を掴んだまま、あれを躱すなんて…あぁ、ヤバい……


ドドドドドドドドッ


【魔理沙】

「がはぁっ!ぁ、が……」


……。


ドサッ ドシャッ


……。


【魔理沙】

「かはっ…」


ヤバい…動けない……かなり出血してる……霊夢は?大丈夫…まだ呼吸はしてる…紅白の巫女服がほとんど赤一色だけど、まだ息はある。奇跡的に…だけど…。

おいおい…嘘だろ…私らが、負けた?今まで、魔界神も、吸血鬼も亡霊も、鬼に、閻魔様、神様と…ずっと負けなしで来た私らが……死ぬの?ここで…?


【名無し】

「まだ息があるのね?本当は、貴方たちもコレクションに加えるつもりだったけど…もうボロボロだし、要らないわ。そのかわり、今ラクにしてあげる。」


水晶が空を切り、飛来する音が聞こえる。あぁ、もう…ダメだ……


【ミネルバ】

「ギス・ウォール!」


ガキキキィンキキキキキキィンッ




normal side


少し休んだ事で回復したミネルバは、時折よろめきながらも先へと進んでいた。もうとっくに体は限界のはずだが、それでも彼は歩き続けた。かつての彼なら、生き延びる為の選択を取っていただろう。仲間や部下を見捨てて、自分は逃げる…大将という立場上、それは卑怯でも何でもなく、正しい選択だった。

しかし今、明らかに彼の中で何かが変わり始めていた。


【ミネルバ】

「くそ…霊夢も、魔理沙も…甘ちゃんだからな…心配でおちおち、永遠亭に行けやしねぇ…」


文句を言いながらも、二人の身を心底案じているようだ。かつての彼には、その対象はただ一人しかいなかった。それ以外なんて、どうでも良かったはずなのに…。


【ミネルバ】

「……どうやら…霊夢たちの甘さが、移っちまったみたいだな……ったく、らしくねぇ…」


口ではそう言いつつ、露わになった表情は、それほど悪く思ってないようだった。くすぐったそう、と言えばいいのか?そんな表情である。


ドドドドドドドドッ


【魔理沙】

「がはぁっ!ぁ、が……」


【ミネルバ】

「な、何だ?今のは、魔理s…」


ドサッ ドシャッ


【魔理沙】

「かはっ…」


確かに聞こえてきた魔理沙の呻き声、それに物が落ちたような音が二つ…ミネルバは、全身を襲う痛苦を忘れ、思わず走り出していた。


【ミネルバ】

『魔理沙…霊夢っ!』


たどり着いた先、そこにはボロボロになって倒れ伏す二人の姿があった。しかも、そんな彼女たちを狙って…


【名無し】

「…今、ラクにしてあげる。」


敵は容赦なく、攻撃を仕掛けてきた。

ミネルバはすぐさま二人の前に飛び出し、両手を突き出した。


【ミネルバ】

「ギス・ウォール!」


防壁神技のギス・ウォールで氷の壁を張り、二人を間一髪のところで救う事ができた。しかし、敵の攻撃は止む事がない。強力な金剛水晶の飛礫が、絶え間無く氷の壁を叩く…気を緩めれば一瞬で壁は砕かれ、三人揃っていわゆる蜂の巣になるだろう。だが、魔理沙も霊夢も、自力ではとても動けない状態だ。


【魔理沙】

「サンキュー、ミネルバ…」


そんなジリ貧状態とは知らずに、魔理沙は駆け付けてくれたミネルバに礼を言った。


【ミネルバ】

「礼なんかいいから…早く逃げろ……」


苦しげにそう言ったミネルバだが、彼にもそれが不可能な事は分かっていた。二人が重傷なのは、医者じゃなくても分かる。


【ミネルバ】

「…チィッ!」


氷の壁が、パキパキと音を立ててひび割れ始める。


【名無し】

「終わりです。」


敵はそう言い、もはや飛礫ではなく、槍のような長さと大きさの金剛水晶を幾つも出現させ、壁の向こうのミネルバに向けて放った…。

……。


【ミネルバ】

『…ったく、本当に…らしくねぇ……この俺が…』


バリンッ ドスッ ドスドスドスッ…


……。


【ミネルバ】

『……魅尾以外の誰かを……守りたいなんて、思うなんてよ……』


……。

幾本もの水晶の槍が、ミネルバを刺し貫いていた。中には、胸部に刺さっているものもある。明らかに、致命傷だ。

その光景に、魔理沙は呆然としていた。彼女にしてみれば、この期に及んでも現実味が湧かないのだろう…敗北による死、という事実が。


【霊夢】

「…ぅ…ん……え?」


その隣で、ようやっと目を覚ました霊夢…しかし、目の前の惨状を見て再び意識が凍り付いた。彼女からは、串刺しにされた彼の後ろ姿しか見えないし、それしか見ていないわけだが…彼女にしてみれば、彼の後ろ姿を見間違えるはずもない。聡い彼女には、痛いほどこの状況が理解できた…いや、できてしまった、と言うべきか。


【霊夢】

「ミネルバぁっ!」


彼女が叫ぶと、彼は静かに仰向けに倒れてきた…その背中が地面につくと、貫通していた水晶が胸から抜けた。


ブシャアーッ


…鮮血が飛び散った。いや、それほどでもなかったが、それは紛れもなく彼の絶命を意味していた。


【ミネルバ】

「い、いやああああっ!ミネルバ!ミネルバぁっ!」


絶叫し、ボロボロの体でミネルバの方へ這い寄る霊夢…だが、彼女も全身傷だらけで、腕を伸ばすだけで、身を捩るだけで激痛が走るような状態だ。僅か一メートルとない距離が、途方もなく長く思える程…。


【名無し】

「悲しむ必要なんてないでしょ?今に、貴方たちも、同じところに行くんだから。」


そんな霊夢を嘲笑うかのように、敵は再び金剛水晶の槍を生み出し、彼女たちに狙いを定める。金剛水晶の前には、霊夢の結界も、魔理沙の魔法障壁も、まるで障子みたいに突き破られてしまう。かと言って避けられるかと言えば、二人とも全く動けない状態だ。


【名無し】

「死ねっ!」


……。


【??】

「…魂鋼結界。」


……っ!

…こ、金剛水晶の槍は二人に届かず、全て弾け飛んであらぬ方へ飛んで行った。固く目を瞑っていた二人が目を開けると、そこにはうっすら緑色がかった、ガラスのような壁があった。まるで二人を守るようにして張られたこの結界は、魂鋼結界…神術師のみが使用できる、神の結界だ。


【名無し】

「……」


この状況に、敵も相当戸惑っているようだった。何しろ、自分の水晶に貫けないものはないと豪語していたくらいだ。さぞやショックなのだろう。しかし無理もない。この結界は霊夢や紫のそれとは次元が違う。全世界で、これ以上の結界は存在しないのだから。

とそこへ、背後の通路からゆっくりした足取りの靴音が響いてきた。おそらく、この結界を張った神術師だろう。それも先の声から察するに、どうやら彼女のようだ。しかし、何故ここに?


【魔理沙】

「え?さとり?」


現れた彼女の姿を見て、思わず魔理沙がそう口走った。それも仕方ないかもしれない。地底の湯処、地霊殿の女将(笑)である古明寺 さとりと、よく似ているのだ。

髪色はほぼ一緒、背格好は彼女の方が少しあるだろうか?まぁ、あまり差はない。第三の目はないし、服装も彼女が通う学校の制服…デザイン的にはセーラー服が近い…なので、魔理沙は一瞬、さとりがコスプレでもして現れたのかと思っただろう。

だが違う…彼女は、


【??】

「……少し遅かったですか…」


ほたる・Y・スピカ…ミネルバがここに来る前にいた世界、ピサンテーラに住む神術師だ。それもかなり、名の通った神術師である。

ほたるは、ミネルバを見てすぐに、彼が事切れている事を把握した。しかし呟かれたその言葉に、あまり感情は篭っていなかった。


【霊夢】

「ミネルバ…ミネルバ……ぁ…ぁぁ……」


既に分かっていた事とは言え、改めて客観的にそれを告げられた霊夢は、ミネルバの胸にすがり泣き崩れた。


【名無し】

「くっ!何者です!何なんですか、その結界は!」


【ほたる】

「……」


ほたるは、彼女らしい感情の無い目で敵を見た。睨んではいない…その目は怒っても、嘆いてもいなかった。まるっきり、興味が無い…そう言いたげな目だ。人形の妖怪だという彼女よりか、よほど人形じみている。


【名無し】

「くっ、何なんですか、その目は?…っ!」


突然、彼女は慌てて飛び退った。と、ちょうどそこへ…


ガァンッ


剣を思いきり振り下ろしてきた男…現れたというより、天井から降って来たような現れ方だった。

赤い髪の彼が手にしている剣は、刀身がオレンジ色の細身のロングソードで、名を陽華聖剣という。彼が使っているのはレプリカだが、これは神術師が信仰する神々の持つ神聖なる武器…神具だ。そんな代物を持っている人間など、世界広しと言えど一人しかいない。


【名無し】

「不意打ちとは、随分なご挨拶ですね。何者です?見たところ、人間のようですが?」


彼は…


【??】

「俺は…いや、俺たちは、街のホッとなひと時を守る、コンビニ戦隊、ルーソンレンジャー!」


……え?


【名無し】

「……」


【魔理沙】

「……」


【霊夢】

「ミネルバぁ~……」


……えーと……


【ほたる】

「恥ずかしいので辞めて下さい、マスター。」


…良かった、人違いかと思った。

彼は拓磨・F・ケニー、ピサンテーラの英雄である。


【拓磨】

「ゴメン、たるちゃん…でも一度言ってみたくて…」


【ほたる】

「まったく…兄妹揃って…とりあえずマスター、彼は何とかするので、そちらをしばらくお願いします。」


【拓磨】

「あぁ。では改めて…俺は拓磨・F・ケニー。そこにいるミネルバを助けに来た。」


拓磨はそう言うと、不敵な笑みを浮かべながら彼女と対峙した。


【名無し】

「彼なら、もう死んでいますよ。」


ミネルバを助ける…そう話した拓磨に彼女は冷たく告げた。確かに、ミネルバは死んでいる。それは誰の目にも明らかだ。死んだ人間は、どうやっても生き返らない。これは世界の絶対の掟だ…しかし、


【ほたる】

「大丈夫です。彼の魂と肉体はまだ切れていません。」


【魔理沙】

「え?」


ほたるは、ミネルバの体にまだ刺さったままだった数本の水晶を全て抜き取り、ポケットから小さめのペットボトルを取り出した。中には水らしき無色透明な液体が入っている。その液体を、ミネルバの体に少量かけた。すると、死んでいるハズのミネルバの傷が、見る間に塞がり始めた。


【魔理沙】

「ど、どうなってんだぜ!?」


その光景に、魔理沙は目を見開き驚愕し、霊夢も泣き止み唖然としていた。


【ほたる】

「貴方たちも…」


そう言って、今度は魔理沙と霊夢の体にもその液体をかけた。


【魔理沙】

「ちょっ!何を…え?」


致命傷ではなかった二人の傷なんて、一瞬で癒えてしまった。


【ほたる】

「申し遅れました。私はほたる・Y・スピカ…神術師です。」


【拓磨】

「死者は生き返らない、確かに絶対の掟だ。でもな、それを決めたのが神様なら…神様になら、例外を作れるだろ?たるちゃんは、その例外を…月下の雫っていう、命の水を作れる唯一の神術師なのさ!」


拓磨は自慢げにそう話した。そのドヤ顔が気に障ったのか、敵は金剛水晶の飛礫を拓磨に浴びせてきた。


【拓磨】

「おっと!」


それを華麗に躱し、剣で捌いて見せる拓磨。


【名無し】

「…例外?そんなもの…」


敵は今までになく、激しい怒りの表情を浮かべ拓磨を睨みつけた。しかし、拓磨はそれでも臆することなく、未だ不敵に笑っている。


【拓磨】

「そんなもの?」

【名無し】

「っ!あああああっ!」


今度は殺傷力抜群の水晶の槍が、拓磨めがけ飛んできた。正面からだけじゃない、四方八方からだ!


【名無し】

「死ねぇっ!」


一方、霊夢たちは…


【霊夢】

「…ミネルバ…助かるの?」


傷も回復し、後はミネルバを蘇生させるだけだった。しかし、


【ほたる】

「はい。後は、これを飲ませれば…」


飲ませる…簡単に言うが、まだミネルバは生き返っていないので、意識は全くない。どうやって飲ませるというのか?


【霊夢】

「貸して。」


と、それを聞いた霊夢は、何を思ったか素早い動きでほたるからペットボトルを奪い取った。


【ほたる】

「え、あ、あの…」


ほたるが止めるのも聞かず、霊夢は月下の雫を一口含むと……


【魔理沙】

「お、おい!霊夢!」


まだ息をしていないミネルバに口づけし、口移しで強引に月下の雫を流し込んだ。


【ほたる】

「いえ、あの…ほんの少し、口に含ませるだけで良かったんですが…」


【霊夢】

「っ!えぇっ!?ちょ、先に言ってよ!」


ほたるの遅すぎる説明に、顔を真っ赤にして唇を離す霊夢…若いって、良いねぇ。

なんて枯れた感想を思ってる間に、ミネルバの血の気を失くした顔に生気が戻ってきた。


【ミネルバ】

「……ぅ…ぅぐっ!はぁ……はぁ……あ?どう、なってる?」


息を吹き返したミネルバは、自分の顔を覗き込んでいる霊夢と、魔理沙、それにほたるの顔を見回して…目を点にした。


【ミネルバ】

「お、お前は…っ!」


驚愕の形相で起き上がったミネルバだったが、すぐに胸を押さえ苦悶の表情を浮かべた。月下の雫で外傷は癒えているが、致命傷ともなると痛みは完全に取れてはいないのだ。


【ミネルバ】

「…ほたる…何でお前がここに…?」


【拓磨】

「俺が頼んだんだ。お前を助けに来る為にな。」


【ミネルバ】

「拓磨っ!」


【拓磨】

「へへっ。」


驚くミネルバを他所に、拓磨はあちこちから迫ってくる水晶の槍を、陽華聖剣で弾き落としている。


【ミネルバ】

「バカかお前らは!?俺を助ける義理なんかねぇだろうが!俺はお前らの敵だぞ!」


【拓磨】

「確かに、元は敵だったけど…よく言うだろ?昨日の敵は今日の友ってな。」


正面から飛んできた水晶を叩き斬ると、拓磨はミネルバに向き直ってニカッと笑った。その爽やかな笑顔に、ミネルバは何も言えなくなってしまった。


【ミネルバ】

「…勝手に言ってろ……ありがとよ。」


【拓磨】

「ははっ!お前に礼を言われたのは初めてだ。よしっ!ミネルバも無事に生き返ったし。とっとと終わらせるか。」


【名無し】

「……それは、観念して、私のコレクションに加わる、と捉えて差し支えないですね?」


不敵に笑い続ける拓磨とは対照的に、敵は不快そうな表情で拓磨を睨む。これだけの悪意と殺意を向けられながらも、何故か拓磨は平然としていた。そして…


【拓磨】

「いいや。光神変化!」


拓磨は叫び、陽華聖剣を薙ぎながらその場でターンした。すると、拓磨の足元から何かが飛び出してきた!それは…真っ赤な火の鳥だった。火の鳥は拓磨の頭上で羽ばたき、嘶きを上げ、今度は一直線に拓磨の下へ落下してくる。そして、火の鳥が拓磨に直撃し、激しい火柱が立ち上る。


【名無し】

「フン…自ら命を絶つとは…人間とは実に愚かですね。」


自滅…そう思ったのは敵だけだった。初見の霊夢も魔理沙も、拓磨のセリフに何故か聞き覚えがあったからだ。そうこれは…彼の、彼らの変身プロセスだ…その証拠に、火柱はすぐに収まり、中から真っ赤な鎧に身を包んだ拓磨が姿を現したのだ。


【拓磨】

「光神戦士・ルーレッド!降臨!」


さっきのフザケたセリフと違って、今度のは紛れもない彼の名乗り文句だ。今まで何十回も口にしてきただけあって、さすがに様になっている。


【名無し】

「…フン、猪口才な…」


敵は地面から、また金剛水晶を生み出した。しかも今度のは、ただ尖っているだけの水晶ではない。形を整えた、まるで二本の剣のようである。

それを手にし、拓磨に詰め寄り、斬りかかる。右手の一撃、次いで左手…対し拓磨は剣一本だ、受け止めてはすぐさま払いのけ、また次の斬撃を受け凌ぐ…デタラメに振り回される二本の剣をしっかりガードしているが、手数で劣る為か防戦一方だ。


【名無し】

「ほらほら、どうしました?お得意の剣での勝負ですよ?」


そんな拓磨を見て、自分の方が優勢だとでも思ったのだろうか?敵は上機嫌になって、一層激しく剣を振り回す。


【魔理沙】

「クソっ!いい気になりやがって!マスタースパー…」


【ほたる】

「待って下さい。」


加勢しようとする魔理沙を、ほたるが制した。

確かに、一見すると防戦一方の拓磨の方が押されているように見える…しかし、拓磨は冷静に、全ての攻撃を受け、弾き、いなし、躱している。その表情に、焦りはない。


【ほたる】

「闇雲に攻撃しても意味はありません。貴方たちの攻撃は、全て金剛水晶に吸収されてしまいます。なので…いい作戦があります。」


【魔理沙】

「さ、作戦?」


ほたるはそう言うと、魔理沙と霊夢に耳打ちした。まだ起き上がれないミネルバは…可哀相に除け者にされていたが。


【魔理沙】

「なるほど、確かにそれなら、お前らとも上手く合わせられるぜ。」


【霊夢】

「構わないわ。」


作戦を聞いた二人は、ケガも回復し、ミネルバも生き返った事で俄然元気になっていた。


【霊夢】

「ミネルバの仇討ちよ!」


【ミネルバ】

「おい、生きてるぞ!」


霊夢に至っては、こんな茶目っ気を出せるくらいにだ。…いや、これは単に先ほどの件に対する照れ隠しだろう。


【名無し】

「ほらほら!さっきまでの威勢はどうしました?」


作戦会議の間、拓磨と敵の戦況に変化は無かった。否、変化はあった…それは牛の歩みよりも遅い変化だったが、確実に。


【名無し】

「…はぁ…はぁ…チッ!何なんですか、その目は?」


まるで焦りも疲れも見せない拓磨に対し、とうとう攻め手だった彼女の方が焦り始めたのだ。


【名無し】

「何なんですか、貴方はっ!人間のくせに…所詮、人間なんて!愚かで!強欲で!利己的で!醜い!生き物のっ!くせにっ!」


焦りと共に、感情的になり始めた彼女は、徐々にその胸の内に渦巻く感情を、呪いの言葉にして吐き出し、その言葉を乗せて剣を振り回し始めた。こうなると一気に、剣の重みは増す…が、逆に動きは隙が大きくなる。


【ほたる】

「マスターは相手の本音や本質を見抜き、引き出す天才なんです。本人は全く意識していないのですが。」


【名無し】

「人間は醜い!人間は!生きている限り!他人を欺き!他人を傷つけ!奪い!嬲り!殺す!それが人間の本性!そうやって、また誰かの大切なモノを壊し続ける…それならば!いっそ誰も傷つけられないように、何も奪わずに済むようにしてあげますよ!あそこの二人みたいに、皆…私の、コレクションにしてね!」


二本同時に、振り下ろされた水晶の剣…しかし、拓磨はそれを受け止めずに、逆に斬り払った。拓磨の放った一閃は、見事にあの硬かった水晶の剣を、二本とも叩き折っていた。


【名無し】

「なっ!」


自慢の水晶を砕かれ驚いている彼女を、拓磨は素早く蹴り飛ばした。


【名無し】

「ぐっ!」


【拓磨】

「たるちゃん!」


拓磨が呼ぶと、すぐさまほたるは飛んだ。


【ほたる】

「カノン、拡散…」


ほたるは右手から大きな火の玉を出現させた。本来はすぐさま敵に向け放つのだが、この神技には裏ワザがある。それは…一つのカノンを分散させる方法だ。これにより、攻撃範囲は大きく変わる。

言ってる間に、ほたるのカノンは無数の火の玉となって、彼女の周囲を漂っていた。


【ほたる】

「…蛍火。」


無数の蛍の灯が、揺らめきながら敵を取り囲み、一気に襲い掛かった。


【名無し】

「なっ!くぅっ!」


すぐさま彼女は水晶で壁を作り、火の玉の猛攻を防いだ。だが同時に、四方を壁で塞いだせいで、自身も身動きが取れなくなってしまった。

火の玉が延々と彼女を襲っている隙に、拓磨も次の行動に移っていた。


【拓磨】

「超光神モード、発動。」


そう呟くと、拓磨の剣の切っ先から、目の眩むようなまばゆい光が放たれた。その光が、拓磨を包み込んでいく。やがて、その光が収まると、そこにはまた出で立ちの変わった拓磨が立っていた。真っ赤だった鎧は、純金と見紛うほどの金色に輝き、細身のロングソードだった陽華聖剣も、黄金色の大振りの剣に姿を変えている。パワーが漲っており、巨大な岩でも真っ二つにしてしまいそうなほどだ。


【拓磨】

「ルー・ウィング!」


拓磨は背中から炎の翼を生やし、敵の頭上へと一気に舞い上がった。そしてそこから、真下にいる彼女めがけ…剣を振り下ろした。


【拓磨】

「究極鳳炎・太陽斬り!」


…振り下ろされた剣から放たれた火球、それはあっという間に大きくなりながら、逃げ場のない彼女めがけ落下してきた。それは…まるで太陽が落ちてきたかのような…そんな迫力だった。


【名無し】

「う、うわああああっ!」


ドッゴオオオォォォン


立ち上る火柱…立ち込める炎熱…常人なら一瞬で炭になりそうな熱気である。そんな激しい炎の中から、しぶとくヤツは脱出してきた。


【名無し】

「くっ!人間の分際で、ふざけたマネを…」


【魔理沙】

「そりゃあ人間だからな。」


【名無し】

「!」


飛び上がったすぐそこに、魔理沙が待機していた。トレードマークの帽子を失くしているが、箒に跨がり飛ぶ彼女は、紛れもなく魔女そのものだった。そして、彼女ご自慢の八卦炉が、敵の眼前から容赦なく火を噴いた。


【魔理沙】

「ファイナルスパーク!」


ドォォォンッ


【名無し】

「ぐあああああっ!」


至近距離からの魔砲に、為す術も無いまま吹き飛ばされた敵に今度は…


【霊夢】

「これで終わりよ!夢想封印!」


博麗の巫女である霊夢の必殺技、夢想封印が炸裂した。極彩色の霊力弾はホーミング機能があり、全弾余すことなく彼女に直撃した。


【名無し】

「…が……ば、かな…」


ついに力尽きた彼女は、体勢を立て直すこともせずに地面に落下、激突した。


【魔理沙】

「ふぅー…作戦成功だぜ。ほたるが前もって伝えてくれた計画どおりだ。」


【霊夢】

「これで、霖之助さんもアリスも助かるわね。」


あらゆる妖怪を問答無用で封印するという夢想封印を喰らい、彼女ももうピクリとも動けなかった。これにて無事に、異変解決である…かに見えた。


【名無し】

「……ぁ、ぁぁ…ああああっ!」


【魔理沙】

「なっ!?」


【霊夢】

「嘘?」


突然、敵が起き上がってきたのだ。言葉にならない声を上げ、白目を剥いたままで…。


【魔理沙】

「おい、もう止せ!勝負はついた!これ以上は…」


【名無し】

「ニンゲン…殺す……ニンゲン…憎い……殺す…ころす…コロス!」


…どうやら、頭を強く打ち過ぎたらしい…。


【拓磨】

「…ダメだ…完全にイってる…」


正気を失い、今にも暴れ出しそうな彼女…


【名無し】

「…コロス!コロス!コロ…」


ドッ


その時、何かが彼女の胸に突き刺さった。


【ミネルバ】

「久遠氷刃舞…」


【霊夢】

「ミネルバ!」


突き刺さったのは氷の飛礫だった。大きさは手の平サイズで、綺麗なダイヤ型の八面体だ。見ると、ミネルバが彼女に向かって久遠大刀の棘を向けるようにして構えている。


【ミネルバ】

「…ったく…だから、甘いって言ってんだろうが。やるならきっちり、トドメ刺しやがれ。」


そう言うとミネルバは、今度は久遠大刀の先を向けて、鍵でも開けるようにそれを半回転させた。


【ミネルバ】

「……久遠氷華閃。」


瞬間、ほたるは慌てて魔理沙と霊夢を空間転移させた。拓磨もすぐにその場から離れる…そりゃあもう大慌てでだ。何しろ…


バキバキバキバキバキッ


氷の飛礫が弾けるのと同時に、彼女を中心にして巨大な氷の柱が立ち上ったのだから。ほたるも拓磨も、ミネルバのこの技を知っていたのだ。

久遠氷華閃…絶対零度の冷気を詰め込んだあの氷の飛礫は、弾けると同時に中の冷気を放出させる。放出された冷気は、周囲に爆発的に広がると同時に、空気中の水分を悉く凍らせていく。そして、このように見事な…氷の華を咲かせるのだ。

しかしこの技、強力過ぎる故に難点もある。


【魔理沙】

「寒っ!」


そう、周囲への影響である。仮に巻き込まれ凍結しなくても、辺りは一気に氷点下になり、草木は枯れ、薄着の者がいれば凍えて動けなくなる。今回は、拓磨の太陽斬りの炎熱が先にあったから、氷点下にまではさすがになっていないが…この広間内の温度は、現在5℃にまで低下していた。

恐るべきミネルバの必殺技、久遠氷華閃…だが、この技はこれで終わりではない。この技の最大の見所は…


【ミネルバ】

「久遠に咲く氷の華は、閃くように咲いて散る…氷華散華。」


パァンッ


原子レベルで氷結していた氷が砕け、一瞬にして華が散る…散った花びらは細かい細かい氷の粒となって、キラキラと光りながらまた一瞬で消えていく…まさにこの瞬間こそ、この技の見所である。


【霊夢】

「綺麗…」


その光景に、霊夢は息をするのも寒さも忘れ見入っていた。




~おまけ1・キャラ設定~


名無し~名も無き人形の怪~

身長:155㎝

能力:魔石(金剛水晶)を生み出す程度の能力


今回の異変の犯人。ある異世界の鉱山の麓にある村で、鉱石の発掘作業の安全祈願などのために作られた土人形だった。しかし、村を滅ぼされた事から、人間への憎しみが芽生え、妖怪となった。

どうやら本体である土人形が、流れ流れて無縁塚にたどり着き、魔理沙が拾ってきたらしい。



※拓磨とほたるのキャラ設定は次回!

※ミネルバの二つ名、「久遠の氷華」が解放されました!(笑)




~おまけ2・忙しい人の為の異聞録~


【紫】

「前回までのあらすじ。霊夢は魔理沙の魔法薬で、本当に猫になってしまった。」


【魔理沙】

「ぜあああっ!ゆ、紫!こ、これは違うんだぜ!」


【霊夢】

「みゃあっ!(何が違うのよ!)」


【ミネルバ】

「…まぁ、いいんじゃないか。可愛いし。」


【霊夢】

「みゃっ!?(ぅえっ!?)」


【紫】

「そうね。可愛いし、しばらくこのままでいいじゃない。」


【霊夢】

「にゃああっ!(ちょっと!)」


【ミネルバ】

「ほら、霊夢。猫じゃらしだぞ。」


【霊夢】

『……ま、まぁいいかも…』


【魔理沙】

「……んと、結果オーライ?」


完:ハッピーエンド…なのか?

オリキャラが多すぎる気がしてきた…敵キャラのみに自粛するよう心掛けよう……たぶん、三日で忘れるけど。(笑)

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