初めての
初出 : 2015/8/8 pixiv
狭い室内には多すぎる10以上の影が入り乱れる。
敵は何を考えたのかこんなところに長物を送り込んできている。
僕らの間合いに持ち込んでしまえば楽に仕留められるとは言え、装備の隙間を縫って刺さってくる穂先は鬱陶しい。
しかも厄介なことにこいつらの装備は硬くて一撃で仕留めることができない時もある。
一人で、ならばという限定が付くが。
僕めがけて迫る穂先に刀の腹を当てて逸らす。
その勢いのまま止まらない槍の柄を上へと跳ね上げ、その下を走り抜ける。
体勢を崩す相手を横目に声を張り上げる。
「今だよ!かねさ「オラァ!」…え?」
振り返った先には翻る羽織。それは予想通りだけれども予想と違って一回り小さい。
「ん?どうしたの、堀川?」
刀身の血を振って払う安定君がにこやかに尋ねてくる。
「あ、いや…兼さんは…?」
「和泉守?
ああ、あそこでけつまずいて転んでた。」
「え?ちょっと兼さんー!
なんでそんなところで転んでるのっ。
せっかく一緒に来たのにっ。
連携攻撃の初めての相手、兼さんが良かったのに、安定君にとられちゃったよ…。」
「…わりぃ」