鬼は今やる気になる
扉は剣を元の青のカードへと戻していく。
それをただ見ている俺は、しっかりと少女を抱き抱えていた。
剣がカードへと戻る。
そこでやっと言うことができる。
「なぁ、そのカードってなんなんだ?」
「カードの形にした剣だ」
「えっでも、このカードはこの部屋に来るための物ってきいたけど?」
「それは嘘だな」
扉は簡単に言った。その瞬間、俺は意味が分からず変な顔をしてしまう。
「なんで、嘘なんかついたんだ?」
「たぶん覆面が姿を消してお前らの所に居るのを紅春は気づいたんだろ、それであえてこの剣のことをバレないようにしたんだろ」
「そうなのか……」
「たぶんな」
と扉は適当に答えた。
じつのところ扉のは確信が高い憶測であって真実ではない。
だから少し曖昧なのは仕方ないと俺は思う。
これは扉の言葉に補足だが、もしも剣のことがばれてしまえばあの場で奪うまたは壊されていたかもしれない。だから、覆面の目当ての少女の所に行くための物だと信じさせれば安全にカードを扉の元へ渡すことができると紅春は思ったのだろう。
さあて、まだ治療が完璧ではないこ少女をどうすればよいかと思う。
辺りを見るが治療するための機械は壊れてしまっている。
俺は一応確認のために扉に聞いた。
「なぁ、他に治療するための機械とかはないのか?」
「悪いがないな」
扉は素直に言う。
俺は『やっぱりか』と内心思ったがそれを口に出しても何も変わらないことは知っていたから言うのをやめた。
となると少女を治療できる場所へ移動しなければならない。
それは扉も思っていたのか、カードをしまい言った。
「この場所じゃあそいつを治すことは無理だ、だから紅春を合流してこの地獄から出よう」
「簡単に言うが地獄から出れるのか?」
「ああ、難しいが出れないわけじゃない」
と神妙な表情で言う。
まず、難しい理由というのは、閻魔の部下達だろう。
さっきの覆面のような輩が沢山いるのでは地獄から出るのは難しい。
それに扉と紅春よりも強い者がいるかもしれないという可能性もなきにしてあらずだ。
俺は、とりあえずその問題を後回しにて紅春を探すことを優先にする。
扉もそのようだった。
「じゃあまずは上に行くか」
「そうだな」
俺は扉の提案に乗ったのだが一つ重要なことに気づくここまで降りてきたエレベーターが壊れて動かないのだ。
俺は無駄なのに軽く叩いたり蹴ったりしていたら後ろから扉に止められてしまう。
「おい、やめろ。余計壊れるだろ」
「いや、壊れるもなにも上に行けないんじゃどうしようもないだろ」
「何も上に行くための方法がこれだけじゃない」
というと、とある場所を指差すと『※※**※※**※※』と俺には聞き取ることのできない言葉を発すると隠し階段が現れる。
俺は正直驚いた。
まさか何もない所から階段が現れるなんて絶句するしかない。
でも、よく見ると階段の終わりが見えなかった。
それで、俺は恐る恐る扉に聞くことにする。
「えっと、これってどのくらいで上にいけんの?」
「そうだな、俺も登ったときはないからよくは知らんが12時間くらいでつくだろ」
と扉は適当に答えた。
ちなみに12時間というのは俺のスピードに合わせてだと思う。そうでなければ、俺は困ってしまう、到底扉のスピードに合わせるなんて無理だ。
階段を走って登っていくが|(もちろん俺のスピードで)、一向に先が見えない。
しかも俺は少女を抱いているから余計に負担がかかる。
扉に少女を預ける選択肢もあったのだが、俺のプライドがそれを許さなかった。
そんなことで階段を半分くらい登り終えたところである提案をする。
階段を登る足を一旦止め、息をあげながら辛そうに言った。
「扉さん、一度休憩しませんか?」
「はぁ!?何お前、もうへばってんのか」
「こっちは少女一人担ぐので精一杯なんだよ」
「ふーん、頑張れ」
と簡単に言われ休むこともなく扉は進む。
まぁ、死者の俺が疲れるなんて変な話なのだが。
扉の走るスピードは一向にはやないのだが、俺は段々と遅くなっていく。
扉は覆面との戦いでかなりのダメージを受けたはずなのにそんな素振りを見せることなくただ黙々と階段を登っていく背中を見ながら俺は何気に感心している。
扉は強い。それはただ力とか身体能力のことを言っているのではない、心、気持ちの部分でもう俺とは違うのだ。
俺はひたすら走った。
ゴールまで程遠い階段を登る。
少女の体重がズシンと俺の体に付加を与えてくるがそれでも足を止めることはなかった。
***
何時間走っただろうか?
俺自身もそれが分からなかった。
でもゴールはもうすぐな気がする。
俺は一度扉にあとどのくらいで登り終えるか聞いたところ、『知らねぇーよ』と言われてしまった。
走っていると階段の出口が見えてきた。
出口はドアがあるのだがどこまでも白くて頑丈そうな物に見える。
階段を登り終え俺は当然のようにドアを開けようとすると、ドアのノブのところに触れると自分の手が溶けているのが分かった。
俺はそれを見ると一瞬怖くなりノブのところから手を離すと扉が眉を寄せ言う。
「勝手に触れるなよ、それは魂を食らうような呪いのようなものがついてんだよ。はっきり言って俺も触れればすぐに魂を食われてしまう」
「何、その設定!?今度から触れる前にいってくれるかなぁ」
「お前が勝手な行動をするからだ」
俺は、扉が人の話を全く聞かない奴だと認識する。
(俺、扉苦手かも……)
そんな事を思っていると扉は青のカードを取り出し、ドアの前でかざした。
すると、ブオオオオンと変な音をたてて簡単にドアが開くのを見せつけられてしまう。
なんだか、少し悔しい。
ドアを出るとそこは1階のところだった。
そこは最初見たようなところではなくなっている。
沢山の切り傷や粉々になった、床や壁、そして天井。
見るからに無残だった。
扉は一瞬目を大きく開く。
俺はごくりと唾を飲み扉に聞いてみた。
「なぁ、これって奴らのしわざか?」
「ああ」
扉は肯定する。
聞くまでも無いことだが聞かずにいられなかった。
とりあえず紅春を探せねば。
扉は俺にどこの部屋にいると尋ねるが俺は自分の部屋の辺りで別れてしまったからわからないと素直に答えた。
しかも、俺はここの建物構造をよくは理解していない。
そのためどこにいるか予想すらも出来なかった。
ここでしらみつぶしに探す気には慣れなかった。
というのもここは広く、しらみつぶしに探せばどのくらい時間がかかるのか考えるだけで恐ろしい。
何よりも早く少女の治療をしたかった。
扉は呟いた。
それは俺にじゃなく扉自身にだと思う。
「どうしたものか……」
と扉のつぶやきと同時に天井が碎けてその中から一人の女が現れた。
俺はあまりの出来事に口を大きく開け、呆けてしまう。
煙とともに一人の女が現れ、扉の近くに来るといきなり謝罪を始めた。
「若、すみません。傷の治りが遅く今まで倒れていました」
「いや大丈夫だ」
「それに若、お体がぼろぼろではありませんか!」
「それも大丈夫だ、それよりも紅春」
「はい何でしょうか?」
「地獄から出るが準備はいいか?」
あまりにも唐突に扉は用件を言った。
その扉の質問に紅春は一瞬の躊躇いもなく返事をする。
「はい、もちろんです」




