日常と。
黒雪復活です。・・・言い訳はあとがきにて、どうぞ・・・
「・・・で。結局今回も龍の勝ちかよー」
龍と閃の数時間に及ぶ一騎打ちが終わり、演習を終えた四人は工房の角で小休止を入れていた。
「お疲れ様、お兄ちゃん」
「ん、ああ」
鈴音が程よく冷えたタオルを龍達に渡す。
「今回はやたらと長かったな。ほんと閃は龍と戦う時だけ熱くなるのなー」
隼人と大輔はもう体力が戻っているようだが、龍と閃は息こそ上がっていないが、額に汗を浮かべていた。龍と閃は受け取ったタオルで汗を拭う。
「・・・技術「だけ」の勝負ですら、俺はまだお前に及ばないらしいな」
閃は少し口惜しそうに、だが表情は変えずに龍に言った。
「お前に負ける時もあるがな」
龍が言うと、閃は目を細める。
「百回やって一回勝てるかどうか、だが。・・・なに、己の弱さを認めれない程俺は愚かではない」
閃は呼吸を一度大きく息を吐くと、視点を落とした。
「・・・そうか。ああ、そういえば・・・アーマーはフィーが調整してくれたんだったな。感応速度もかなり速かったと思う。ありがとう」
龍がフィーに賞賛を送ると、フィリアは少し照れくさそうに笑った。
「ふふ・・・私は龍達みたいに強くないから、ね・・・このくらいしか出来ないけど」
「強くない、ねぇ・・・」
隼人は大輔や閃の方を見るようにして、呟いた。その顔は少し笑っていた。つられるように大輔と閃も少し口元を緩めていたのを、どうやらフィリアは見ていなかったらしい。
と、話していたところに狭間と咲月が工房に入ってきた。
「おーお前らお疲れお疲れ。その様子だともう演習は終わったか」
狭間が顔を見せると、工房にいた研究員達は形式ばったものではないが狭間に頭を下げる。
「ああ狭間か。・・・全く、あんたも暇じゃないだろうに」
「ま、今日の所は元々暇作ってたからな。近状視察兼ねて・・・ちょいと言っときたい事があってな」
「・・・?まあそれはいいけど。ああ、その前にアーマーを修理に回しておかないとね。と言っても、目立った破損があるのは隼人くらいだけど」
「・・・」
それを聞いた隼人は、何気ない風で目を逸らした。
「ま、あんだけやられたらな」
大輔は苦笑しながら、慰めかどうか分からない言葉を投げかけた。
「・・・それはそうとして、一回お嬢の所に行かねぇか?俺ら顔見せてねぇし」
大輔のフォローに微妙な反応をしつつ、隼人は提案を挙げる。
「そういえばそうだな・・・今の所龍しか行っていないわけか」
「ああ・・・」
受け答えをした龍は雅と狭間が話している様子を見る。
「ん、狭間さんはなんか用があるみてーだし、行くならさっさと行こうぜ」
「その後はどうする?」
「ま、それは場合によってでいいだろう・・・」
そうして瑠菜に挨拶しに行った六人は結局工房に戻り居座った後、陽の暮れる前に島を後にした。
「ふふ・・・お兄ちゃんなんだかいつもより嬉しそうだね」
電車から降りて、自宅までの道を鈴音と二人で歩いていると、おもむろに鈴音は言った。
「ん・・・そうか?」
「うん。・・・お兄ちゃん、お姉ちゃんと居るといつもより柔らかい気がするよ?」
「・・・ふむ」
龍は視線を進行方向に戻す。だが、鈴音の言葉に気を害した・・・という風では無く、むしろ何処か納得しているような様子を見せた。
数分して家に着く。
時刻は丁度夕飯が合いそうな時間帯だった。
鈴音は家に入って荷物を片付けると、すぐにキッチンへ向かった。
「・・・ん?」
ふと携帯端末を見ると、メッセージが届いていた。
『ゲームしようぜっ!』
『断る』
『ゲームしようぜっ!』
「・・・」
『ゲームしようぜっ!』
『ゲームしようぜっ!』
『ゲームしようぜ!』
『ゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲーム』
『中毒者か』
『・・・(チラッ』
しばしの空白。
『飯を済ませてからな』
『うぇーい』
結局龍が折れる形で、誘いを承諾した。
それから龍は夕飯を終えると、テレビの近くに置かれたゲーム機の電源を入れる。
元は暇な時間はほとんど書籍を読む事しかしないが、おおよそ隼人の押し売りでゲーム機を置いている。
ゲームを始めるとすぐに隼人がチャットルームに入ってきた。
『よー龍。ちゃんと来てくれたか』
「全く・・・珍しくは無いが、どうした?唐突に」
白けた語調で、龍は問う。対照的に隼人はマイク越しにでも分かる程嬉々としていた。
『ふっふっふ。ま、簡単に言えば新情報・・・というより、ほとんど対象の情報は洗えたぞ』
それを聞いた途端、龍の声色は緊張したものに変わった。
「・・・ここでそれを話して大丈夫か?」
『心配すんな。通常の携帯端末なんかでの通話ならまだしも、わざわざ高校生のゲームのチャットルームの会話まで掘り返す暇人なんざいねぇよ』
「・・・ふむ」
龍は未だ疑惑を拭いきれない、と言った様子だが、隼人はそれを解消するように言う。
『まー警戒すんのも分かるが、不用意な危惧は逆に視野を狭めるぜ?・・・と、龍に言うまでもねぇか』
ケラケラと笑うのが聞こえる。
「まあ、とりあえず続けてくれ」
『おう。・・・て龍お前何気に進行度高くね?俺と同じくらいになってんじゃんか』
ちなみに龍や隼人がやっているのは(主に隼人の趣向で)アクションRPGだったり、FPSの類だ。
「ん?ああ・・・お前程やってはいないがな」
『気が進まないとか言ってたのにツンデレか。ツンデレなのか!』
「切るぞ」
『あ、すいません許してください』
そのあと隼人はわざとらしく咳ばらいを一つすると、話を戻した。
『えーと・・・まあそれでだな。暗号化されてた通話履歴とか内容とかを展開してたら一日かかったわけだが。どうやら取引・・・みたいなもんだった』
「・・・取引」
『ああ。内容としては金と引き換えに、押収された兵器の所在、その構造、破棄される日時とかの情報なんかが流されてる』
あり得ない事ではない。むしろ都市では金や栄誉に貪欲な研究者が、「普通では」ばれないように裏の組織と取引する事はざらにある。
「その内容から察するに・・・」
『ま、兵器を奪取することだろーな』
しかし龍は、確かながらもその「仮説」に対する違和感に首を傾げた。
「それにしても・・・押収された兵器の留置場所には曲がりなりにも相当の警備がしかれているはずだ。構造が分かった所で、十数人程度では先ずハチの巣にされる。それ以上となれば相応の騒ぎになるだろう」
龍の考察に隼人は否定しなかった。
『ああ。その通り・・・だがな。まーおそらく狙ってるのは留置所から運び出される方だと思うぜ』
「・・・まあ、留置所であって保管庫ではないしな。処理施設に運ばれるものと、保管庫に運ばれるものがあるだろうが」
『で。問題が一つ』
「・・・ふむ?」
『留置所はまあ港湾部にあるんだが・・・そこから保管所があるのは第一区。ルートはまあなるべく市街地を避けてはいるが、やっぱ通るわけで』
「そのタイミングを狙ってくると」
隼人が苦笑いをこぼす。それで察したように龍は返した。
『まだ転移魔術も確立されてないからねぇ。まあ騒動が起きて警備隊連中が動き難いのはそこだろう。それに・・・』
「それに?」
『・・・人間兵器が使用される可能性がある』
「何・・・?」
『ま、これはあくまで推測ではあーるが、な』
龍の声色は先程よりも明らかに重い。隼人も軽い口調に聞こえて、何処か憂いを帯びていた。
人間兵器、それは龍達にとって嫌悪する対象・・・もしくは何か含みがある物なのだろうが、どちらにせよ、いいイメージを持っていないことは明らかな反応だった。
『その位かな。「俺達にとって」必要な情報は』
「・・・把握した」
その時、その空気を割るように声が二つ増えた。
『ちーっす。なんか楽しそうなことやってんじゃねぇか』
『・・・誰だ招待を何回も送ってくる阿呆は』
大輔と閃だ。
『一人しかいないんだよなぁ』
「隼人・・・話しながら何をしているのかと思えば・・・」
『しかしちょっとおせーぞ二人共。また言うのはめんどいから今度な』
『・・・?何の話だ?』
そうして、暗い雰囲気はいずこと言った様子で、四人は和気藹々とした時間を過ごした。
『おい閃の防具と武器の性能が釣り合ってねぇぞ!?』
『火力が出ないのは面倒だからな。防御は技術で補える』
『ただのゲーマじゃねぇか・・・』
三週間・・・早いものですねぇ・・・。とまあこんだけすっぽかした理由としては二つ。
一つはまともなんですよ。ええ・・・GWに体調・・・体調?を崩しまして。まあそれで一週間が真っ白に。
二つ目がですね。あの設定画描くとか自分言ってましたよね。で、スマホ使って描いてたんですが・・・ええ技術も無いのに二人同時に一枚に収めようとした所為でグッダグダになりまして。まあ仕方ないので一人ずつ描いております泣
・・・また遅れるかもですが、そろそろ他の小説も上げつつ・・・まだまだ頑張っていきたいと思っていますので、どうかよろしくお願いします。